第18話 カッコつけるな

急いでネタを考えそれをぶち込んだ感じなので正直物足りなさがあると思います。第一章が終わったら添削するつもりですのでよろしくお願いします。





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ユウキの上半身に出来たその傷から流れる鮮血は、咲いたヒガンバナを連想させた。激しくその血は飛び散り、そしてユウキはそのまま地面へと落下した。激流する血が地面へと零れ、銀色の地面を紅へと染めていく。


しかし、その姿は決して綺麗と言っていいモノではない。むしろ、残酷な惨い有様だ。地面に倒れた彼を見て、全員の顔が青ざめていくのが彼ら自身でもはっきりと分かった。


「ユウキ!」

「ユウキ君!」


凛や鈴見がそんな彼に近づいていくその傍ら、ユウキにその重傷を負わせた張本人の風真は高笑いする。


「はっはっは!どうだいこの力は!さっきも言っただろう!僕は君らより何十倍も強いんだよ!格の違いがそろそろ分かってきたんじゃないかな?」

「ゴチャゴチャうるせえんだよ!!」


風真の嘲笑う声の中から突然そんな声がし、その声の方を向くと風で作られた虎によって未だ噛みつかれたままの有馬の姿があった。直後に、腕を剣から元の状態に戻した有馬は喝を入れるかのような叫び声を上げると風虎の口を自身の腕で強引に開かせた。


するとその虎は元の風に戻るように空気中へと霧散していった。


肩で息をしながらその荒れた息をなんとか正常に戻そうと彼は試み、尚先ほどの虎につけられた傷からは血が流れだしている。


その彼を見て風真は余裕そうな表情を浮かべながら、有馬に言った。


「大丈夫かい?その傷、結構深そうだね」

「てめえこそ頭大丈夫か?俺を怒らせてる時点でてめえの死刑は決まってんだが、それに気づいてないみたいなんだが」


風真はまた一つ額に青筋を立てた。


「へー、じゃあまだ君は僕に勝つつもりなんだ」

「つもりとかじゃねえんだよ、絶対だ。ぶっ殺してやる」

「そう、じゃあやってみなよ」


風真が風の槍を一つ有馬に放ち、それを彼は右腕で軽く弾く。すると、その直後に風真が一気に地面を走り有馬の前にまで現れると、そこからまたも衝撃波を放とうと腕を構えた。しかし、それを有馬はオーラを纏ったその腕で上へと無理やり上げさせその方向に衝撃波を放たせた。


有馬はその手を掴んだまま自分のほうに風真を引っ張り、殴ろうとすると風真は思いきり頭突きを彼の顔にかました。鈍い音が鳴り彼は後ろに頭を行かせそこから見える鼻からは少しばかりの鼻血が見えている。


しかし、そんな有馬はニヤッと笑みを浮かばせ、


「おらっ!」


風真が放ったそれの倍返しの頭突きを彼に放った。

額に強い衝撃が入り彼は一時的な脳震盪を起こしそうになるが、そんなことは知らんと言わんばかりの強い蹴りを繰り出した。


有馬がそれを掴んでいない方の腕でガードすると、風真の掴んだ腕を利用して背負い投げの様に地面へと叩きつけそこから更に腕を剣へと変えて斬撃を繰り出した。


その斬撃を間一髪で避けると、横へと移動しそこから風の刃を放った。


有馬はそれを剣で弾くと同じ様に彼も飛ぶ斬撃を繰り出した。風真がそれに対して先ほどと同様に風の刃を放ち相殺させた。


それにより響いた轟音により辺りが一度静かになると有馬は歯を見せながら笑い、もう片方の腕も剣に変えると、大きく振り上げ同時に物凄い速度で飛ぶ斬撃を連続で放った。


それに対抗する様に風真もまた風の刃を連発した。連続のそのぶつかり合いがしばらく続くと唐突に有馬が動き出した。


「っ―――」


あまりにも突然のことであった上に今の彼の身体には白いオーラが纏われており、それは自身の身体能力を強化していることを意味している。そのため、今の有馬の動く速度はあまりにも早いもの、故に風真のいくらか反応が遅れた。


有馬の上から振るわれる剣を目にして、風真は震えながら大きく叫び声をあげる。


「だから舐めないんでほしんでけどなぁっ!!」


彼は両手を揃え暴風と言っても過言ではない威力の風を有馬に向けて放った。その刹那、有馬の身体は壁の方へと勢いよく飛んでいきそして激突、重い金属音が室内に轟き壁にはクレーターの様なへこみができた。


そのまま有馬は地面に落下するものの、空中で態勢を立て直しなんとか着地に成功した。


今まで与えられた攻撃に加え、今さっき壁に当たったその衝撃により激痛が伴われ同時に赤い血を口から吐き出した。しかし、その血の付いた口元を拭う彼の表情と言えば笑顔以外の何でもなかった。


その笑顔の理由は、風真を見れば一目瞭然。

風真の右肩から斜めに大きな切り傷がついていた。


ユウキ程ではないものの、見た目以上に深手で来ていた服はその傷に沿って切られておりその部分には赤い血が染みついていた。


「反応がちっとばかし遅かったな。この一撃はデカいぜ」

「………なるほど……確かに、君が僕に必ず勝つという思いなのはよくわかったよ。でもね、それは、君の寿命を縮めるはめになったよ」


抑えていたその傷から手を離すと、風真は両腕を大きく広げ堂々と立った。すると、後ろから小さな渦が巻き起こり、それは徐々に大きくなっていき仕舞いには巨大な竜巻を作り出した。


「室内にわざわざそういうの作んじゃねえよ邪魔くせえ」

「そうか、それならとっととこれは消した方がいいね」


風真はその大竜巻を有馬の方へと放ち、地面を削りながらそれが彼の方へと襲ってきた。


「はっ!こんなの見掛け倒しに決まってんだろうがよっ!!」


有馬は笑みをとどめたまま自身の腕―――基、剣を振るいその大竜巻へと歯向かった。剣を突き付けてみれば、赤い火花がチリチリとそこから飛び散っている。どうやらこの竜巻はただ強い竜巻という訳ではなく、ユウキに使ったような斬撃を与えるそれでもあるらしい。


「チッ……」


何とかそれを押し返そうと剣を押し込んでいくものの、その竜巻の旋回する勢いと押し寄せてくるその力が強くそう簡単に押し返すことができない。一度優勢状態に立ってもすぐに立場を逆転させられる。


「――――――ぅぅうおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおっ!!」


その大竜巻が遂に眼前にまで迫りくる。

徐々に体の一つ一つに浅いが切り傷がついていく。このまま押し負けてたまるかと有馬は喉が裂けるのではないかと思わせる程の叫び声を上げ、そして全力でそれに対抗した。


「っ―――」


風真の目に映ったのは足を一つ一つ踏み込ませながらその大竜巻を前へと追いやる有馬の姿であった。これには思わず声にならない叫びが出た。


だが、そんな追い上げも一瞬の間だった。


有馬は力が弱り、剣を弾かれた。


「……くそっ」


終わりか、と彼は全てを受け入れようとした。


だが、そこで彼の道が終わることはなかった。


「おらぁっ!」


彼の背の向けた方向からそんな声が聞こえ、それと同時に青いスパークの迸るが飛び蹴りを炸裂させた。その大竜巻とのせめぎ合いの末、ユウキは体に纏う電気の強さをさらに上げそしてその竜巻を風真の方へと押し返した。


風真が腕を横に振るとその竜巻は綺麗に消え去った。


空中から地面へと着地したユウキは有馬の方へと振り向きながら言った。


「ふぅー、危なかったな。ありm―――ってあぶねっ!!てめえ、助けてやったのに何しやがんだよ!」

「余計なことすんじゃねえよ!」

「余計じゃねえだろ!てめえ俺が来なかったら死んでただろうが!」


有馬はそんな言葉を訊くこともなく、ただ一方的に自分の訊きたいことを訊き出した。


「つーか、てめえあの野郎に斬られてただろうが。なんで生きてんだよ」

「ああ。まあどうやら思いのほか傷が浅くてな、一応止血だけしてもらったからだ。本当はそれは後回しで早くぶっ潰したかったんだけどな」






        ※       ※       ※






時は少し遡る。

ユウキは風真に体を斬られ、そのまま血を流しながら地面に落下した直後クラスメイトの者たちが続々と彼の元へとやってくる。


「ユウキ君!ユウキ君!」

「おい、しっかりしろユウキ!」


誰しもが彼の心配をする中で、その彼はふと目を開けて起き上がる。


「ユウキ君!傷は……」

「………思いのほか浅かったみたいだ。心配いらない」


ユウキはそう呟くように言うとゆっくりと起き上がり、そのまま歩いて風真の方へと向かって行く。


「待ってよユウキ君!」


その彼の手を掴んだのは鈴見であった。言うまでもなくその表情から彼を心配していることがよくわかる。


「……早くいかせろ」

「だめ。浅いとは言ってもせめて止血だけでもしていかないと」

「いらねえ。俺は俺一人の力であいつに立ち向かう、傷を治す必要も……」


ユウキが話している傍から、一人の男が歩み寄り彼の額にデコピンをかました。「いたっ!」と声を上げながら赤く腫れた額を抑えながらユウキは訴えた。


「何すんだよ、翔!」


その男とは、凛であった。


「……いいから止血していけ。お前が今やろうとしてるのはカッコつけじゃなくてただの無謀だ。カッコつけたいならせめてそれくらいはしてからにしろ」

「………別に、カッコつけようとか思ってなかったし……」


ユウキがずっとポリシーの様にした居たこと、


“勝つからにはカッコよく勝つ”


まるで子供の様なことであり、それでも誰しもが思う事だろう。そんな座右の銘を持つ彼だが、傷だらけで、それでも誰の力も借りずに自分の力だけで勝つ。それが彼の中ではカッコいいということだった。


図星を付かれたユウキは唇を尖らせながら静かに止血を受けた。今いるこの七人の中に傷を癒すという異能を持つものはいない。だが、鈴見の持つ異能、見えない壁の“膜”を作りだすという異能を応用し、彼の傷口に会うように膜を張って止血することができる。


それによって、ユウキの傷口が止血された。


「浅いとはいっても出血量は多い。やるならさっさと決めて来いよ」

「おう、言われなくてもそのつもりだよ」


凛のその言葉に笑いながら有馬の方へと向かって行った。









「というわけだ」

「真面目に戦えよてめえ…」

「いたってまじめだ俺は……唐突だが、お前に一つ頼みがある」

「は?頼み?」

「ああ、風真先輩を倒すための作戦に必要なことだ」


ユウキは有馬にその作戦の全てを話し、そしてその頼みも同時に彼に言った。すると有馬は、


「はぁ?なんで俺がそんなことしなきゃいけねえんだよ」

「俺がどんだけあの先輩と戦ってきたと思ってんだ。その実践経験から学んだことは使うに越したことはない。それに俺にはとっておきがあるんだ。それを使えば確実に相手をやれる」

「…………」


少しばかり有馬は悩み頭の中で考える。きっと彼の中でもいろいろな思いがあり、それが不規則に絡み合っているのだろう。それからしばらくすると、彼はその答えをだした。


「………一つ借りだ。それでいいな」

「ああ。助かるぜ」


作戦会議を終えた二人は、改めて風真の方へと身体を向ける。


「やっと終わったのかい?もう待ちくたびれたよ」


最終ラウンドが幕を開ける。









――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回、決着。

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