第11話 遭遇

まずは遅くなってすいません。

また9話のユウキをしっかりとユウキらしくしましたので、それも見てみてください。







有賀山を下山してしばらく、凛とアリスの二人は家の前にまでたどり着いた。因みに凛はしっかりと靴を履いており、実は事前に予備の靴は持ってきていたのだ。改めて凛が腕に着けていた腕時計の針を見ると、時刻はすでに深夜の一時を過ぎた頃。流石にもう寝なければならない時間帯、すぐに家の中に入ろうと足を踏み出したその時だった。


――――――……今のは?


「……リン?」

「………悪い、アリス。先に帰っててくれ」


凛はアリスにそういって家の鍵を渡すと、道路のアスファルトを蹴って走っていった。急ぐわけでもなく、だが先ほどのを見失わないようにしながら凛は住宅街の道を通り抜けそして人通りの少ない道へと出た。


左右を確認しながら行方を捜し、右方向にその人物が消えていくのを一度確認すると時間を置いてその方へと後を追っていく。


そして、たどり着いた場所そこは使われなくなった旧工場だった。外見からすでに年季の入った所であり、壁をつたる様にツタの様なモノが煙突にまでそれが伸びている。


恐らくここに先ほどの者たちは入っていったと考えた凛は、工場の前の門を飛び越えて、中へと足を踏み入れた。


門を超えてなるべく気づかれることのない様に静かに歩きながら工場の中を外から除くと、


「よく来たな。早速だが、渡すもん渡してもらおうか」


そう言う男は少し若い顔つきで服装は黒を基調としたもので、それぞれ防止、スーツ、コートを着ている。そしてその男の目線の先にいるのは、やはり“2-A”のクラスメイトの者たちだった。人数は男女合わせてざっと七人といったところで、そこにはユウキや鈴見の姿もある。


凛は先ほど家に帰る前、ふと道の方へと目を向けると、何人かの人影が入ってきた。よく見てみると、それが凛には2-Aの者たちと確信し、こんな時間に一体何をしに行くのか、その興味を持ちつつも不信感をより強く持って彼らの後を追った。


一体、何をしているのか。それがまだイマイチつかめない凛はひとまず様子を見続けることにした。


「リン、何しているの?」

「何って、オレのクラスメイトがいるから……ってアリスかよ!お前なんでここいるんだよ!」


そこに神出鬼没の名を欲しいがままに現れたのは家に帰ったはずのアリスであった。凛が静かな声で叫んで訊くと、アリスは静かに答えた。


「リンの行方が気になって」

「相変わらず大胆ですこと……」


やはり性格とは裏腹に大胆さを兼ね持つアリスであった。


「というか、どうやって入ってきたんだよ。門がああったはずだぞ。しかも鍵がついてて。まさかよじ登ってきたりでもしたのか?」

「違う。斬った」

「斬ったって………お前まさか――――!?」


アリスがやったこと、それに凛は思わず頭を抱えた。


「たかがそんなことに大技使うなよ……それにそれだと門直せないだろ……」

「リン。がんばっ」

「他人事だなこの野郎……」


凛は仕方がなく門を直すことを決めつつも工場内へと目を戻し、アリスは凛の隣からその中を眺める様にして見ていた。そして、中での会話が二人の耳に入ってくる。先ほどの男の言葉に対してユウキは手に持っていたアタッシュケースを見せつけつつ彼に訊く。


「勿論、それは渡す。だが、その前に一つだけちゃんと聞いておきてぇ」

「なんだ?」

「ちゃんと、姫奈ひなは返してもらえるんだろうな?」


ユウキのその顔は凛の前でいるときの顔とはまた別の、彼が見たこともない程に真剣そのものを表情をしていた。その顔をみて凛はこの事の重大さを理解し、それ以前として話していることの問題の大きさがまたその重大さを物語っている。


―――返してもらう?姫奈って……人の名前だよな……


凛が思考すると同時に彼の質問にその男は帽子を深くかぶると口を開いた。


「なあ、ガキ。てめえに一つ教えといてやる。人生ってのは、そう甘いもんじゃないんだぜ?」

「……それは、俺の質問に対しての否定として、捉えていいんだな」

「ま、そういうこった」

「そうか……それなら――――力づくであいつを返してもらう。意地でもアイツのいる場所を吐いてもらうぞ」


ユウキは手からアタッシュケースを離して地面に落とすと、拳を握り指を指を鳴らしながら言い、そして次の瞬間に足を踏み出して男の方へと距離を縮めそして拳を放とうとした。


すると、男がコートの胸ポケットから取り出したのは一つのリボルバー式のピストルだった。


初めてみる拳銃に彼は一瞬だけ竦みつつも思いの強さか、立ち止まることもなく突き進んでいく。そして、男が拳銃を打とうと引き金を引く寸前に彼は横へと立ち退き、同時に男の引き金が引かれピストルが先ほどまで彼がいた方向に放たれた。


「どこ打ってんだよ!俺はこっちだ!」


ユウキは横から更に壁に足を添えそこからキックをして男の方へと迷いなく向かって行きそして右腕を引いて拳を放とうと試みる。男はその方向を見ることもなくそのピストルの銃口に息を吹きかけており、未だ若いその見た目とは裏腹に貫禄のある姿で言った。


「あんまり大人をなめない方がいいぞ、ガキ」


ユウキの拳が放たれようとした、その瞬間に彼の肩に先ほど外れたはずの銃弾が貫通した。


「なっ……くぅっ………!」


ユウキは肩に奔る激痛に拳を放つこともできず、ユウキはそのまま地面に受け身も取らずに落下する。


何が起きたのか、彼にはさっぱりわからなかった。一体なぜ先ほど場違いなところに打たれたその弾丸が自分の元に当たったのか、何かに反射したような音もなければ何かを操作した動きもなかった。ユウキの中での疑問は大きいが今はそれを考えている暇はない。


彼は腕の痛みに耐えつつも何とか立ち上がり、男の方へ駆け出していくと貫かれていない方の左腕を引いて改めて攻撃を放とうとする。男はその方向に顔を向けてピストルの銃口を向けると、そこから更に一弾の銃弾を放つ。


ユウキはその銃弾を体を傾けて避け、耳で数化に銃弾の空気を掠るその音を聞きつつも、そこから走る速度を加速させて男にスキの与えないように、迅速に男に目掛けて拳を放とうとした。


男はよけようとすることもなく、ただそこで立ち尽くしているだけである。


彼の拳は間もなくして男の顔面に直撃する。だが、そこでついさっきのことを思い出す。


――――さっきも同じような状況で油断した。だから、もしかしたら……


と、考えて全体にも感覚を研ぎ澄ませると、次の瞬間にユウキは何かを察知してすぐさま上に跳躍した。すると、その地面に何かが激突する。彼が上からそれを見下ろすと、地面をえぐったのは銃弾だった。


それは言わずもがな、男が放った銃弾である。


ユウキは少し距離の置いたところに着地をする。


「おお、今のはよく避けたな」

「敵に褒められたところで嬉しくもなんともねえな」

「それはそうだろうな。ああ、言っておくけど、一回避けた程度でと思わない方がいいぞ」


と、言われたその矢先に地面の銃弾が自然と向きを変えてユウキへと放たれた。あまりにも急であるため回避が一足遅れ、なんとか身体を傾けつつも、彼の左の頬を掠らせてそこから赤い鮮血を流させた。


ユウキは、徐々にだが男の能力のおおよそは把握ができつつあった。


「お前の能力、徐々にわかってきた。今度こそ、お前のその顔に拳かましてやる」

「……たかがその程度で調子に乗るなよ、ガキ。能力が分かった所で――――形勢が変わることは無い」


男がそう言うと、胸ポケットから更にもう一つのピストルを取り出して両手にそれらを構えた。


――――やべっ、流石に挑発が過ぎちまったか?なるべく他の皆には攻撃がいかない様になるべく俺に意識が傾くようにと思ったんだが……


ユウキは後ろで下がっている同行してきたクラスメイトに被害が来ない様に、あえてこうして率先して戦いを行っている。それは現にできているのだが、今度はユウキの命が危うい状況へと落ちていく。


それを見ていた凛は、


「流石に、これは助けないとやばいな……」

「リン……助けるの?」

「当たり前だろ。クラスメイトだ」

「それとこれは話が違う。学園で生活を始めてまだ数日しかたってない。そんなわずかな期間で会った人を……」

「……お前、それわざと聞いてんだろ。それに忘れたのか?オレはお前と会って僅か数時間で命を懸けた男だぞ。お人よしには自負してるんだよ」


アリスは、分かっていた、という表情を見せた。その表情に気づかず、凛は皆を助けるためにまず偶然見つかったという状態を作るべく、あえて近くにあった小石を蹴って鉄パイプにそれをぶつけた。


「アリス。お前は今オレに一つ借りがある。それを今払ってもらうぞ」

「……めんどくさい」

「気持ちはわかるが、今回は問答無用だ」

「……しょうがない」


甲高い金属音が鳴り響き、それが凛たちの存在を知らせるベルとなる。


「!?誰かいんのか!?」


男が音の聞こえた方に顔を向けると、微かに凛の頭がそこに見えており人の存在を確認した。


「おい、そこの奴。出てこい」


凛の存在に気づいた男はそう呼びかけ彼はその通りに門の方へと向かって行く。両手をホールドアップしながら凛だけが出てきた。


「かっ、翔!?」

「翔君!?どうしてこんなところにいるの!?」


ユウキ、そして鈴見が驚きを示し同様に他の人物たちも凛の登場に驚きを隠せないようだ。


その反応を見て、ピストルを構えたままの男は


―――同じ年齢らしき顔にあの反応、こいつらのクラスメイトと考えるのが無難か。


一つ仮定を立てて、凛に訊いた。


「お前、何しにここに来た」

「用事の帰りにオレのクラスメイトがいるもんで。こんな、真夜中に行動する者かと不信に思ってついてきてみたら……って感じだなぁ」

「なるほど――――なら、お前に選択肢をやるよ。こいつらを見捨てて逃げるか、それとも――――」

「助けるに決まってんだろ」


凛は、その名にふさわしい堂々とした顔でそう宣言した。それに男は無表情で、


「なら、お前も俺の敵というわけか」

「そういうことだ」


そう言い捨てた刹那、凛は足を大きく踏み込んで男の方へ突進するかのように向かって行く。突如突撃をしてきたことにいくらか驚きつつも、二丁のピストルで凛を狙って銃弾を数弾放つ。


その瞬間にパーカーを脱いで異能を行使すると、すぐさま前に向かってそれを広げる様に投げ、凛は自身の姿を隠すようにする。同時にその強化されたパーカーに弾丸が激突するが、強化されたことによってそれを食い止めることに成功する。


そしてその直後に、扉の向こうからアリスが姿を現し彼女の手は中指と親指の腹を付けた状態で構えている。


凛がパーカーを脱ぎ捨てたのには、自身の姿を隠すことや盾として使うことなど様々な用途があるが、今回はアリスの場所を特定されない様にするためである。


男がアリスの存在に気づかない中、凛は叫ぶように言った。


「左に17度、上に22度!」

「っ……」


凛から聞いた通り、アリスはその角度に調整してそこで指をパチンっ!と鳴らした。


すると、彼女のその手からパリィと音を立てると黄色い雷電が一直線に流れる様にして放たれ、それがパーカーを貫いて男の腹を穿った。男の身体全体に電流が奔りしばらくすると、腹の部分を黒色に染めて口から黒煙を吐きそのまま地面に倒れこんだ。


「ふぅ」


凛が一つ息を付くと、消え始めたパーカーにくっついた弾丸を一つ一つしっかりと触り、これでよし。


「ふぅ……」


今度は長めに息を吐く。


そして凛はアリスの方を向くと「ナイス!」と言わんばかりにグッドサインを見せ、アリスもどや顔で同じグッドサインを見せるのだった。








再度になりますが遅れてすいませんでした。部活もあってなんとか時間を使って急いで書いたので、今回の話は高い確率で書き加えや添削をすると思いますのでよろしくお願いします。


またコメント・感想を送っていただけるとすごく嬉しいです!


今回の話、この遭遇に関して空から凛が落っこちて遭遇するか今回にするかで迷ってたって言う裏話も実はあったり……


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