第2話 たった一夜の話
頭痛が痛い上に眠気で眠い状態で書いたので、面白くかけてるといいんですけど……
凛が頭を抱え困惑している中で自身の目から流れる涙を拭った彼の父である
「………凛、そこの女の子はなんだ?」
「………ああ。そのことについても含めて、今までのこと話すから。今は中に入れてくれ。裸足で寒いんだ」
困惑気味であったため、ほんの少し遅れて反応すると、対面する父は戸惑いつつも頷いた。だが、
「お、おう。というかなんで裸足なんだ?ん?ちょっと待てよ……まさかお前、この子を誘拐してきたんじゃないだろうな?」
「してないわ」
まるでつじつまが合ったぞと言わんばかりにそう訊いた父に思わずツッコミを入れる凛だったが紅蓮はそれでも揺るがなかった。
「嘘を付くな!さてはお前ロリコンだな!」
「嘘じゃねえしロリコンじゃねえ!つーか早く中に入れろ!」
「後できっちり問いただすからな!」と一言残して凛を中へと招き入れた。そのこともちゃんと話すと言っているのにと、内心で先ほどの感動の再会を返せと一人心で呟いていた。
玄関を上がり廊下を歩いてリビングへと向かう。
一歩一歩を遅くして、久しぶりに帰ってきた我が家をゆっくりと見まわし懐かしさと帰ってきた実感で物思いに耽る。アリスは逆に異世界では見たこともない家の中だからか、見たこともない表情で辺りを見ていた。
父の背中についていきながらリビングにたどり着くと、そこも相変わらずの様で広い一部屋の左側にはテレビとソファーがあり一方で左側には、キッチンと食事テーブルがあり、そのテーブルのそばに並べられた六つの席の一席に変わらない顔があった。
「かあ、さん」
「…えっ?」
凛の母である
はっきりと聞き覚えのある声に母の秋桜は下に向けていた顔を上げ、ずっと見ることのなかった息子の顔を瞳に映した。すると、途端に彼女の目からは熱い涙が溢れてくる。椅子を倒す勢いで立ち上がり凛の元にまで駆け寄って彼の身体を強く抱きしめる。
ちゃんとここにいる。そんな実感を味わいながら。
「良かった……良かったよ、凛………ううぅ……」
母の涙する姿に凛は心配かけたことの申し訳なさやら、やっと会えたことへの嬉しさやらで脳内は混沌としていた。だが、それ以前に今は母とのこの再会を分かち合いたい。
凛は涙をこらえて母を抱きしめた。
「ただいま、母さん」
「うん……うん、おかえり。おかえり……」
その様子を紅蓮は頷きながら優しい眼差しで眺めており、その光景をみて一言言った。
「……ロリコンになって帰ってきたけどな……」
「台無しだよ。親父この野郎」
せっかくの再会が台無しになってしまった(二回目)
それからしばらくして、秋桜の涙も止まり始め落ち着きを取り戻したころで凛と彼の両親はテーブルに対面するように座った。凛の隣にはちょこんとアリスも座っている。
「さて、じゃあオレから色々話をさせてもらうぞ。親父、母さん」
「ああ。一体どうやってその子を誘拐してきたのか。話してみろ」
「だからそれはもういいから」
「えっ?凛、その子誘拐したの?」
「話進まないから親父の話には耳を貸さなくていいよ、母さん」
そろそろイライラしてきたころだったのでひとまず応急処置としてそう言ってから、凛は一度息を吐いてから改めて口を開いた。
「信じて欲しいんだけど、オレは異世界に行ってたんだ」
「異世界?それってよく本とかで書いてあるやつか?」
「そう。オレは魔法陣で異世界に召喚されて、とある使命を託されたんだ」
紅蓮も秋桜も凛の話に真剣に耳を傾けていた。
自分が魔王を討伐する役目を託されたこと、たくさんの残酷な世界を見たこと。何度も死にかけたこと。たくさんの出会いがあったこと。
話せる限りを彼は、両親に話しつくした。
「それでこうして異世界から帰ってきたんだけど……それでついてきたのがその魔王討伐で一緒に戦ったこのアリス・ロドスだ」
横に座る彼女の頭を軽くぽんぽんと叩きながらそう言うと、紅蓮は彼女に対して訊いてきた。
「……凛について来たのは自分の意志で、なのか?」
彼女は間もなく頷いて口を開く。
「私はリンの一生のパートナー。ずっと一緒にいたいと思える人。そう思ったからついてきた」
恥ずかしげもなく、ストレートな言い様に無意識に羞恥で凛の頬の頬は赤く染まっていた。アリスのその真剣さが伝わったのか、紅蓮は素敵な笑みを浮かべて腕を組んでから言った。
「よし、アリスさん………だったか?これから内に住んでもらって構わないぞ」
「いいのか、親父?」
「最初からそれを俺たちにお願いするつもりだったんだろう?」
「ま、まあな」
「この子がこんな覚悟で来てくれたからには、なるべく凛と一緒にいて欲しいからな」
「私もむしろ家にいてほしいわ~。アリスちゃんかわいいし~」
「……ありがとう。親父、母さん」
凛が感謝を述べると母さんはにっこりと笑顔を浮かべ紅蓮は満更でもないような表情を浮かべた。こればかりには紅蓮いイラつくこともなくむしろ面白く思え凛は苦笑いに近い笑みを浮かべた。
さて、アリスの件はこれで問題はないが、ここで一番に訊きたかったことであり凛を困惑させる原因でもあることの、その真相を確かめるべく凛は訊いた。
「それと、もう一つあるんだけど……今の年ってやっぱり2560年なのか?」
「ええ」
「そうだぞ?」
「……この世界じゃ、四年も月日がたったみたいなんだけど、事実オレは異世界には一年しか暮らしていない」
「なんだと?時間軸がずれているのか?」
「多分そう言うこと。だから、オレは四年じゃなくて一年しか年を取ってないんだ」
中学を卒業し、高校に入学する直前で異世界に召喚されたため凛の現在の年齢は16歳、今年で17になる年頃だ。
「そうか。それで四年も経ったというのにやけに若かったのか」
「びっくりね~」
「……なんか、改めてそれを実感すると、少し寂しいな」
凛が一年の月日を得ている内に四年の歳月を得たこの世界。それはつまり自分より先に同級生のみんなが大人になり、前へと進んだことを意味しているためそのことに彼は自分だけ置いて行かれたような気分になり、それが彼を寂しいという感情に導いていた、
異世界で、自分も異能も十分に成長した。
でも、それだけなのだ。
皆がそうやって、社会に出られるように一歩前に出ているのだと思うとより一層そう思ってしまう。
顔の暗くなる凛に、両親の二人は顔を合わせ少し笑うと紅蓮は彼の方に手を置いて優しくつぶやいた。
「大丈夫だ。また学園に通ってちゃんと学べること学べばいいんだ。年の差ができても追いつけないわけじゃない。お前なら追いつくどころか、抜かせるよ」
「大丈夫よ~凛」
「……うん……」
二人の言葉が、凛の心に強く響いたのだった。
※ ※ ※
それから、凛が帰ってきたその祝福とアリスが新たに家族の一員となったことを祝ってパーティーが行われた。豪勢な料理をたくさん食べ、皆で楽しくわいわいと会話をして時計がてっぺんを回った頃に、パーティーはお開きとなった。紅蓮曰く、学園の話とか、今の世界状況とかそういう話は明日にしようとのことだった。
なんでも、明日は久しぶりの休日らしい。
片づけを終わらせお風呂に入った凛は、久しぶりの自室へと足を踏み入れた。
中に入ると、そこは何も変わることのない部屋だ。机やらベッドやら、それぞれが埃の一つもなくきれいであるのはきっと、母の秋桜がいつでも帰ってきてもいいように用意していたのだろう。
凛は部屋の隅にあるベッドに座り、しばらくボーっとしていると唐突に部屋のドアが開きそこから現れたのは、見慣れないパジャマを着たアリスだった。髪の毛は湿ってはおらず、恐らくすでにドライヤーで乾かしたのだろう。
「こっちのお風呂はどうだった?」
「技術が進歩しすぎてる。あっちとは大違い」
「はははっ。だろうな」
この世界に来て間もないアリスは、慣れないお風呂に一人で入らせるわけにはいかず秋桜と一緒にお風呂に入った。彼女に使い方を教わりつつ、お風呂での時間を過ごしていたのだが、やはり異世界との違いに驚愕している様だった。
「さてと、時間も時間だし。そろそろ寝るな」
「わかった」
「ああ。おやすみ」
凛はアリスにそう告げて、リモコンのボタンを消して横になった。上から掛け布団を二枚重ねて自身の身体に掛けそしてゆっくりと目を閉じた。
「………おい」
「なに?」
「なにじゃねえ。なんでいるんだよ。お前、部屋母さんに貰っただろ」
凛のベッドに、何故かアリスがもぐりこんできたのだった。
彼と向き合うように横になっている彼女は、凛の質問に静かに答えた。
「凛、寂しいって言ってた」
「……気、使ってくれたのか」
先ほど、凛は自分が同級生より遅れてしまったことに寂しさを感じると言った時、アリスはただ横で彼を見る事しかできなかった。彼女はそれに強い未練が残っており、少しでも彼の力になろうと彼のかけがえのないパートナーとして、そして一人の女として彼のそばに寄り添ったのだ。
「ありがとな。でも大丈夫だ。心配いらない。それに寂しいのはお前も一緒だろ?」
「―――――」
アリスにとって、それは図星だった。
「こっちに来ること、エリスさんには?」
「……ちゃんと言った」
エリス・ロドス。
彼女の唯一の家族だった。
早くに病気で父と母を失ったアリスの、唯一の家族であり共に暮らしていた実姉であるエリス。そんなただ一人の家族と離れる程に彼女の意志と覚悟は固かったのだが、それでも寂しいと思うことは必然だった。
そして、そんな感情もアリスの顔を見れば一目瞭然。アリスは考えないようにしていたことを思い出したため、表情が少しだけ寂しげなものへと変わった。
それを見た凛は、
「……今日くらいは、許してやるよ」
その言葉にアリスは驚いた様子で顔を上げる。しかし、その頃には上に凛の顔はなくそれは寝る態勢を変えて、アリスに自身の背中が向くようにしたからだった。いや、これはどちらかと言えば彼女に顔をみられたくなかったからだ。
アリスは、素直じゃない凛に少し面白くなり少し笑った後、その背中に張り付くようにして寝るのだった。
決して彼がいてくれるのなら寂しくないと、一途にそう思って。
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