第8話王様と対面って本当ですか?!
「最後に皆さんに、私の父、国王に会っていただきたいと思います」
「国王?!」
「総理みたいなもんだろ。 そんな緊張する?」
「俺たちは蓮みたいに日本代表とかにならないから、総理にあったことなんてないんだよ!」
「え、めっちゃ優しいよ」
「知らないよ!」
「ロインもあるよ」
「何ちゃかっり交換してるの?!」
「あの……」
「は、はい。 どうしました?」
「そろそろ移動しても?」
「は、はい! すみません!」
「おいおい、しっかりしろよ。 勇者サマ?」
「す、少し静かにしてようか? 遊戯神?」
「はいはい、金ぴか勇者サマ?」
俺たちは移動中もそんな会話をしていた。それの効果かどうかは知らないが、だいぶ空気が和らいだ気がした。何人か必死に笑いをこらえてるやつもいる。
「俺たちのおかげで空気が和んだな。 勇」
「蓮……まさか狙って?」
「さぁね、どうだか」
「……ふぅ、くえないやつだな。 ほんとに」
「うるさいな、金ぴか悪趣味勇者」
「な、何か言ったかな?バグ遊戯神?」
「だれ?」
「おまえだよ!」
「静かにしなよ。 金ぴか塗装悪趣味勇者サマ?」
「なんか色々つけるな!」
「皆さん、着きました……私の父、国王のいる間です」
その言葉を聞いて、和んでいた空気は一変、ピリピリとした空気が、俺たちを、緊張の沼へと、わずかに、されど確かに引き込み始めた。
「失礼します! 異世界からの召喚の儀式の報告と、召喚された者たちのご紹介のために参りました! 謁見を求めます!」
「…………入れ」
「失礼します」
俺たちもセレスさんの後に続いて、国王の前まで続く、長い廊下を歩きだした。そしてすぐに国王と目が合った気がした。酷く淀んだ、醜い目をしていた。
「勇、気をつけろ。 あの国王、何か嫌な感じがする」
「……そうか、分かった」
「俺は人ごみにまぎれて、秀介に伝えに行く」
「なら気を引いておこう」
「助かる」
幼馴染ならではの連携で、簡潔にお互い目を合わせることなく、用件を伝えると、俺は後ろに、勇は前に進みだした。
「秀介」
「どうした蓮」
「勇にも伝えたが、どうもあの国王の目は濁っている。 なにか嫌な感じがして、たまらない」
「そうか。 分かった」
「具体的にどの辺がそう感じたの?」
そう声をかけてきたのは、秀介の隣にいた聖さんだ。幼馴染の俺たちとは違い、これだけでは伝わりきらなかったようだ。
「あの目は……過去にあった大量虐殺をした犯人とよく似た目をしている。 欲望と醜い思考をしている目だ」
「待って。 なぜあなたは大量虐殺の犯人を知っているの?」
「……あったんだ」
「え?」
「まだ小学生なりたての頃、知らない男と目が合ったんだ。 その時、感じたことのないほどの恐怖と、吐き気を覚えた……だから、見間違えるはずはない」
「そう、分かったわ」
「蓮、そろそろ止まる。 戻った方がいい」
「あぁ、そうだな。 じゃあ気を付けてくれ」
そういいながら、勇のところまで戻った直後、セレスさんが跪きだした。そして小声で俺たちに対して助言をしてくれた。
「あなたたちも早く、跪いた方が身のためです」
セレスさんの声を聴いて、俺たちはみな、跪きだした。俺もいやいやながら、従った。ところで、あの時のセレスさんの声はどこか、寂しそうで、苦しそうな気がした。
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