第4話異世界って本当ですか?!

 俺たちは飛ばされる感覚に襲われていた。それが何秒なのか、何分なのか、もしくは何時間かはわからない。ただ、今までに感じたことのない浮遊感だけがあった。


「やりました! 成功です!」

「成功って一体……」


 そこで俺は目を開けた。そこに広がっていた光景はまさに未知だった。見慣れた木の床ではなく、磨かれた石の床。掲示物が張られた壁ではなく、純白で、シミ一つ見当たらない壁。俺たちを照らすのは、よくある棒状の蛍光灯ではなく、複雑な形をしたシャンデリア。誰がどう見てもわかる。ここは俺たちのいたところとは違うと。


「いてて……蓮。 秀介。 平気か?」

「あぁ、何とか」

「平気だけど握られてる手が少し痛いかな?」

「あ、ごめん」


 と言って勇は手を離した。ちょっと赤くなっている。まぁ、でも勇なりに俺を一人にしないようにしてくれたんだろうな。


「で、ここはどこなんだ?」

「いや、俺が知るかよ」


 勇が俺に質問してきたがそんなの知らんがな。逆に俺が聞きたいわ。

 だんだん周りのクラスメートたちも気が付いたのか、ざわつきだした。


「皆さんお気づきですか?」

「ん? 誰だ、あんた?」


 部屋の奥からドレスを着た、俺らと同じぐらいの年の女の子が下りてきて、話しかけてきた。白いドレスを着た彼女は背は165センチほどで、長い金髪を結ばずにおろしており、髪留めを一つしているだけである。


「異世界の皆様。 初めまして」

「ここはどこなんだ?」


 俺らの気持ちを代弁するように勇が彼女に問いかけた。


「ここは【ファンメル】と呼ばれる世界にある人間国家の内の一つ、【グレウカファ】です。 そして私は第一王女のセレス=ヴァン=グレウカファと申します」

「つまりは異世界ってことなのか?」

「端的に言えばそうなります」

「じゃあなんで、俺たちを呼んだんだ?」

「それは、魔王に対抗するためです」

「魔王だと?」

「はい。 この世界には魔物があふれており、その中でもひときわ強い力を持ち、同種族を従えてるものを【魔王】と呼び、彼らも自らを魔王と称しています」

「それが?」

「この国の近くには魔王が住まう【ダンジョン】と呼ばれるものがあります。それも4つも」

「4つ……」

「それぞれ、【灼熱の魔王】【豪雨の魔王】【迅風の魔王】【土砂の魔王】と名乗っており、ついに一年ほど前に魔王たちによる宣戦布告がこの国に対して行われました」

「つまり、その対応策に俺たちが選ばれたと」

「はい」

「そうか……」

「身勝手に呼び出したうえで、大変おこがましいことは重々承知ですが、どうかお助けくださいませんか?!」


 と、セレスと名乗った王女は俺たちに対して、深く頭を下げた。その後ろに控えてた従者や、俺たちを呼び出したであろう魔法使いらしき人達も一緒に頭を下げてきた。


「すこし、仲間と話させてくれ……」


 そういいながら勇は俺たちの方へ向き直った。

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