鬼熊無双

 馬から下りたフィナンジェは誰もが見とれるようなスマイルを見せてから、ゴブリンを睨み付けた。


「それじゃあ、オレ様のカッコイイところを見せるとしようかねッ!」


 フィナンジェが身につけていたマジックアイテム――魔力が込められた宝石が輝き、それぞれが炎や風、氷などを放っていく。

 当たったら火傷や凍傷を受けてしまいそうなのでゴブリンは逃げようとするも、うまく風で身動きが取れないようだ。

 先頭にいた一匹のゴブリンがダメージを受けて倒れた。


「ま、ざっとこんなものかな! まだまだ数はいるけど、時間をかければ――」


 フィナンジェがやり遂げたような良い笑顔でランを見ると、そこには想像もしていなかった光景があった。

 真横からゴブリンたちの奇襲が迫っていたのである。

 だが、驚いたのはそれだけではない。


「鬼熊、やっちゃって」


『グマー!!』


 角の生えた巨大なクマが前に出て腕を一振りするだけで、ゴブリンたちが吹き飛んでいく。


「なっ!? オレ様の超高級マジックアイテムより強いのか……!?」


『グママママー!!』


 少し間の抜けた雄叫びと共に、鬼熊はブンブンと腕を振るっていく。

 一回、二回、三回――数秒で奇襲してきたゴブリンの集団を全滅させていた。

 それを見ていた最初のゴブリン集団は震え上がり、退却しようと背中を見せるも――


「鬼熊、一匹も逃がさないようにね」


『グマッ!!』


 鬼熊は巨体に似合わず、弾かれた弾丸のようなスピードでゴブリンとの距離を詰めた。

 ――ちなみに元々の熊の時点で腕力はライオンを一撃で倒すし、森の中を時速六十キロで走り、銃の直撃を受けても当たり所が良くないと倒れてくれないという地上最強格のモフモフだ。

 それをランのテイムでパワーアップさせたということは――


「おいおいおい、マジかよ……。親父が雇っている傭兵団より強ぇじゃねーか……」


 ゴブリンの集団など、撤退を許すはずもなく殲滅することができるのだ。

 ゴブリンはオモチャのように扱われ、そのすべてがDPになった。


(うーん、ゴブリン一匹1DPだから、30DPか。ちょっと少ないな……)


 元のゲーム的には、モンスターの強さでDPが変わるシステムだ。

 ダンジョンを拡張していくには、もう少し強いモンスターを倒さなければならない。


「……弱いわね。次はもっと強ければいいけど」


「えっ!?」


 そのランの言葉を聞いたフィナンジェは戦慄した。

 もしかして、帝国兵を鬼熊で皆殺しにして解決しようとしているのでは――と震えが止まらなかった。




 しばらく進むと小さな村が見えてきた。

 建物はボロボロ、全体的に寂れていて村人たちの活気もない。

 その代わり、鈍色の鎧兜を装備した偉そうな帝国兵が我が物顔でいるようだ。

 検問とばかりに、村の入り口をガラの悪そうな数人が陣取っている。


「なんだぁ、おまえら? 小娘に馬に……それに熊? 大道芸人か?」


 帝国兵の一人がランに近付き、その顔をジッと眺めていた。

 ユニコーンがいつビームを放たないかハラハラしてしまう。


「いや、もしかして中に誰か入ってるんじゃねーのか? トロイってやつみたいに」


 次に大人しそうな鬼熊に近付いて、本物かどうか確かめるためにポンポンと気安く触っていく。

 鬼熊の――まだゴブリンの血で濡れている爪がピクリと動いた。


「あー! ちょっといいかな!? 新入りさんかもしれないけど、オレ様はあんたたちと取り引きをさせてもらっているルベール商会の者だ!」


「おぉ、そうか。ちょっと上の者に確認をしてくる。待っててくれ」


 間一髪、フィナンジェが惨劇を止めることに成功した。




――――


あとがき



面白い!

続きが気になる……。

作者がんばれー。

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