第6話 メルの猫かぶり
「起きなさい!起きなさい!何時だと思っているの!」
朝から騒がしいなんだ?目を開けるとメルさんがいた。若干引きつった笑みを浮かべている。
「おはようユウキ君、今11時の鐘が鳴りましたよ?」
「?なんで僕の部屋にいるんですか?」
「はい?私聖女です。入りたいって言ったらあっさり鍵くれましたけど?」
なんだこの世界プライバシーとか無いのか?
メルさんが俺に顔を近づける。
「今日は街の案内をします。着替えたら出て着てください」
服なんて今着てるボロボロのしかないぞ?このまま出よう。聖女の後に続きすぐに部屋を出ると昨日の受付嬢否、宿のカギをあっさりと部外者に渡した裏切者がいた。
「この鍵ありがとうございました。シャリーさん」
そう言ってオレの部屋のカギを受付嬢に渡していた。
「じゃあ行きましょうユウキさんところで昨日は聞き忘れましたけど何の職業に就いて生活しているんですか?」」
職業?称号の事だろうか?それなら俺のステータスには何種類か選択肢がある。勇者、商人そして錬金術師だ。昨日は当たり障りがなさそうな錬金術師とカードには書いた。
「昨日カードは見せませんでした?あそこに書いてあったと思うんですけど?」
「え?あれ本当だったんですか?てっきり勇者と書いてあるから偽装のスキルでごまかしたものかと思っていました。」
「いやいや、あそこはごまかさない方がいいと思ってそのまま偽装しました。」
メルは感心したような顔をする。
「すごいですね錬金術師ができるなんて羨ましいです。」
あれ?当たり障りがないと思ってたんだけど違ったのかな?
「ちなみに商人はどうなんでしょうか?」
「商人もレアですよ!日本では普通でしたけどこちらでは、計算できる人が少ないので」
称号が職業に関係しているっていう認識でいいのかな?誤魔化しがきくように錬金術を練習しよう。
俺たちは街に出た。
「あのところで服ってそれだけですか?着替えてくださいって言いましたよね?」
「いや無いんですよ服が先に服や紹介してもらっていいですか?」
「わかりました。先に行きましょう。このままではユウキさん奴隷と間違われてしまいます。」
オレが泊まっていた宿屋から大通りに出て少ししたところに洋服屋があった。戸を開けると入店を伝えるベルが鳴る。
「いらっしゃいま・・・聖女様!いかがなさいました?」
適当な声の挨拶が緊張した声色の声に変わる。
「ええ、彼の服を見繕ってほしいんです。」
「かしこまりました。少々お待ちください、どのような服がいいですか?」
俺は服を選び始める。服はどうでもいいがローブがいい。薄い服はいやだ、それはあの勇者計画のむち打ちのトラウマの所為だ。
「服はちょうどいい感じに見繕ってください、あと錬金術師なので相応の格好がしたいのでローブを」
店員が俺の希望に合わせて服を選び始めた。
「私、少し店を出ていますね?」
そう言ってメルさんは店を出た。
しばらくして店員が服を持ってきた。流行の服らしいそれを3種類買って四次元空間に収納した。
「く、空間魔法!」
店員を驚かせてしまったようだ。後はローブだ。
「お客さんほどの実力者なら魔法のローブはいかがですか?こちら白金貨40枚ほどになりますが効果は保証します。魔力量で防御力が増大して壊れた場合自動で治ります。」
そう言って出された紺色のローブには刺繍がある。白金貨40枚って日本円でいくらだろう。後でメルさんに聞いてみよう。
俺の四次元空間:次元箱には白金貨は万単位で眠っているから問題ないと思う。
「はい、白金貨41枚おつりはいいや、貰ってください。」
新しく来た服とローブを着て店を出るとメルさんが男たちに囲まれていた。
「おいおい聖女様だぜ?いい体してるなちょっとくらい味見してもいいよなぁ」
「ちょっと!やめてよ!離せ!下種男たちが!きしょい!」
「ははは!聖女らしい言葉遣いじゃないなぁお仕置きが必要のようだ」
男たちは舌なめずりをしながらメルさんに近づく、もう限界だ見てられない
「おい、お前ら!メルさんは俺と一緒に街を回るって話をしていたんだ、その手を放してもらおうか」
「なんだ?てめぇお前らやれ!」
肩に強い衝撃を食らう、振り向くと斧で思いっきり殴られていた。こいつ・・・殺す気満々じゃん思いっきり斧で切られながら平然としている人間がいるという、異様な光景が生まれた。
「ひっ、ば、化け物だ!」
オレを切り掛かった男は、走り去る。だが許しては置けない、彼の元まで走り股間を蹴り上げた。何かがぐちゃりと潰れる感覚が伝わってくる。
そんな彼を放置してメルの方へ向かう。
「化け物がこっちに来るぞ!逃げろ!」
リーダー格の男が他の奴らに指示を出しバラバラに逃げていった。
「大丈夫ですか?メルさん?」
メルさんは俺に抱き着いてきた。怖かったのだろう小刻みに震えている、俺は彼女が落ち着くまで抱擁してあげることにした。
「助けてくれてありがとう感謝してあげる。」
そう目を潤ませたまま、彼女はそう言った。
「やっぱり猫かぶってたんだな。」
「な!あんただってそうでしょうが!なんか大人ぶってさ、かっこつけちゃって」
「いや、オレは初対面にはあんな感じなだけだけど?」
「私だってそうだもん」
「メルさんそれでどうする?町回るの今日はやめるか?」
「メル・・・メルって呼んで」
「わかったオレの事も呼び捨てでいい」
「うん、ユウキ町案内は続けるからもう少しだけ待って」
オレはメルが落ち着くまでゆっくり待つことにした。
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