第7話 正体がバレた

 


「そういえばなんで会った時、勇者なんて呼んだんだ?」




 そう言うとニヤリとメルが表情を歪める。




「え?今でも勇者だと思ってるけど?勇者じゃないって言い張るのはいいけど、誰も信じないわよ?」




「いやなんで、そんなに確信持って、話してるんだ?」




 メルが何言ってるの?という目で見てくる






「剣、持ってたあの剣、金色の光を放っていたでしょ、剣から金色の光を放ち勇者は魔王を倒した。伝記には、そんな感じの事が書かれているのよ」




 まぁ魔王城から持ってきた剣だし勇者由来の剣なんだろうなとは思ってたけど光ってたのがダメだったのか、でもこれ以外だと剣はもう一本しかない。力を吸い取られる感じが、したからあんまり使いたくないんだけど




「ちょっとそこでお茶しない?」




 メルが指さしたのは少し高そうな店だった。二人で入店して、飲み物を注文した。




「はぁ、ここ一週間大変よ!全く、一週間前の太陽神の怒りって言われている激しい光を放つ現象見たでしょ?あれから魔物の動きがおかしいのよ」






 おやおや?雲行きがおかしくなってきた。それオレの出した魔核爆発だよな、もしかしてメルが襲われていたのも俺の所為か・・・






「どうしたの?顔色悪いわよ?」




「いや、たまたまあの時近くにいたからそれを思い出しただけさ、」






 メルが驚いた顔をして机から身を乗り出した。




「嘘!あの時近くにいたの?よく無事だったわね、何が起きてたの?」




「え?いや、まぁ魔法かな多分」






 あ、不味いメルが怪訝そうな目でこちらを見ている。




「ねぇ勇者様?そういえば、最近北の方に魔王が生まれたって話があったんだけど、その討伐報告が昨日神託で降りてきたの.....もしかして」




「いや、なんの事だか...気のせいじゃないかな?神託とか忖度とかよく間違えやすい言葉だろ?な?」




「いや何言ってるのか分からないけど、その信託受けたの私だよ?それに忖度が降りてくるって何!馬鹿にしてるの?」




 あー言い訳できるかな?これ






「私としては、勇者様が魔王を討伐した時に発生した光なんじゃないかって思ってるんだけど、そういえば、ユウキくん偶然かな?太陽神の怒りが起きた方向から来たよね?




 距離的に1週間でここまでくるには早すぎるけど勇者なら可能じゃないかな?」




 やはーい、もうほとんど確信してから質問してるじゃん、分かってるじゃん






「前にも言っただろ?俺は失敗作だって間違いさ」






 メルが不思議そうな顔をする。




「その失敗作とかなんとかって何?」




 俺は諦めて話し始める。だが太陽神の怒りとやらを起こしたのは俺ではないことにさせてもらう。きっと街にも損害が出ているだろう・・・賠償とか怖いし






「はぁ?じゃあ最近異世界転移させられてしかも失敗だからってめんなめちゃくちゃな扱い受けたの?」




 俺はお茶を啜りながら頷く






「まぁそうなるな。別によくあることだろ」




「いや無いから!それで復讐とかするつもりなの?」




 俺は立ち上がりながら宣言する




「復讐はしない、まぁ積極的に復讐はしないだけで、もし仮に出会ったら容赦はしないつもり、それじゃあ、街の案内の続き頼むね」




 会計まで行き支払いを済ませて店を出る






「私がおごってもよかったのに」




 メルがそういうのを聞きながら街の中を歩くすると少し豪華な装飾の店を見つけた。




「なぁ?メルこの店ってどんな店なんだ?」






「奴隷商よ」






 メルは憎々しげな声で唸りながら答えた。


 奴隷商か...人身売買はどうかと思うがこの世界には、借金奴隷がいるらしい、生きるために奴隷落ちする人もいるだろう。




 一概に否定だけするのは宜しくない






「それにしても奴隷を扱ってる店って豪華なんだな」




「えぇ、まぁ店の中にはお風呂にも入れない飢えた奴隷が多くいるし外見だけでも取り繕わなきゃいい所がないんでしょ」






 そのまま、奴隷商を素通りして目の前にあったのは教会だ。奴隷商との距離近!




「ええ、ホントにたまに中から叫び声とか聞こえて来て嫌になるわ」






 俺が何も考えているか想像が着いたらしく俺の心の声に同意を示した。




「なんでこんなに近いんだ?」






「はっ、分かりきったことよ教会に子供を捨てる人がいるでしょ。そういう人を見つけると積極的に声をかけて奴隷として売ってもらうのよ、カスよカス!」






 仮にも聖女がカスとか道端で叫ぶのはいかがなものだろうか?




「あ、教会入る?信者として」




「断る!まぁ観光だけはさせてもらおうかな?」




 メルについて行くと信者と思わしき人々にメルが囲まれた。






「どうか!どうかうちの子に加護を!」






 みたいな声が多いい。大変だなと思っていると教会内から人が出てきて人垣が割れる。




「聖女様こちらです!」




 メルに手を引かれ俺も教会内に入った。






「いやぁ、酷い目にあった。メルも大丈夫か?」




「うん大丈夫」






 そんな会話をしていると俺たちを教会内に引き入れた男が不快そうな顔で俺を見る。




「ガキが聖女様に触れるなどあまつさえ名前を呼び捨てにするなど言語道断反省しろ!」






 教会の神父が殴りかかってくるが480レベルの前には無力、普通に避けて、がら空きの背中を蹴飛ばした。




 思いっきりずっこける神父は怒り心頭な顔をして走り去って行った。あれ物語だと悪役になるやつじゃん。




「あ、この世界には来たばかりなんだよね?魔法使える?回復魔法の頭なら教えるよ?」






そこから半日回復魔法の習得に励んだが、適性がなかったらしくダメだった。




「ごめんね?先に適正調べるべきだった。」




「いいさ、むしろ感謝するよありがと」




そう言って俺は協会を出る。回復魔法は習得できなかったがスキルによる回復手段の確立には成功した。


近いうちに試すとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る