第4話 聖女メルの救出

はぁはぁ、距離が長い、豆粒ほども小さかった町の形がわかるくらいまでは近づいた。地球で得た頃の知識はあまりにも暇でスキル化してしまった。




 だめだ.....寝てない日がかなり続いた。レベルが上がっても睡魔には耐えられない。そのままふらっと倒れるところで爆発音が聞こえ眠気が吹っ飛ぶ。




「おおー!びっくりした!なんだ!」




爆破音をする方を見ると馬車から人が降り剣と杖を持った集団が森の方で魔物の大群と戦っている。




「聖女様!お逃げください!ここはもう持ちません!街も近くにあります!走ってお逃げください!」






何か大変そうだ!全力で駆けつける。聖女と呼ばれた金髪の少女がオークに殴られそうになっている!間に合え!


オレは全力で数百メートルを駆け抜ける。




「ひゃあ!」




叩きつぶされかけた女の子の悲鳴がする、危ない!ギリギリ間に合った!オークの手を魔王城から持ってきたかっこいい剣で受け止める。そのまま胸を切り裂いた。




「ゆ、勇者様.....」




 聖女と呼ばれた子はオレの剣を見てそう言った。なんかやらかしたかな?この剣、金色の光を放っているけどそれの所為か?


 オレは彼女に手を差し伸べる。彼女は俺の手を取り立ち上がった。






「ありがとうございます。勇者様」




顔に泥が付いている聖女は微笑んだ。


やはり彼女は俺を勇者と勘違いしているようだ。確かに勇者計画で召喚されたけど失敗作ですしおすし。




そんな俺の手を固く握りしめ聖女は焦りながら味方の助けを求める。






「彼らを!私を守ってくれている彼らをお助けください勇者様!対価なら何でも支払いますからお願いします」




 誤解を解かないとめんどくさそうだな。




「僕は勇者ではありませんよ。失敗作ですから。では助けてきます。」




そう言い残し、彼女から見ると消えたように錯覚する速度で護衛の人たちの方へ飛び込む。速度が速いのでそのまま剣を傾けオークの集団を薙ぎ払った。




「大丈夫ですか?皆さん。敵は絶滅させました。回復がいる方はこちらに来てください。ポーションがあります。」




オレは魔王城からパクったポーションを四次元空間から取り出す。そんな光景を見て驚く護衛と聖女様。






「く、空間魔法!太古の昔に消え去った伝説の魔法!それにその剣!勇者様でしたか!」




という声と「やっぱり勇者様なんですね!」という聖女の声が聞こえた。




さらに状況を誤解した護衛たちが俺に対して跪く。






「ち、違います勇者じゃないです。落ち着いてください。」




俺の剣を見て戸惑った顔をする護衛たち、何?この剣って勇者の剣なの?わかんないや取り敢えず街に行こう。オレは剣を四次元空間に収納する。






「では僕は街に向かうのでここで」




立ち去ろうとするオレの背後から声がする。先ほどの聖女だ。


「待ってください!ゆ、貴方も一緒に町まで行きませんか?馬車もありますので」


オレはクルリと歩く方向を変え聖女様の前まで向かい聖女様の手を掴む。



「ぜひ!ご一緒させてください!」


これは仕方がないんだ。歩くのは疲れたんだ1~2日寝ないで歩いていたんだ少しくらい・・・それに馬車にも乗ってみたい!


しばらくして馬車はゆっくり動き出した。もちろん俺は聖女様と同じ客車に乗っている。ああ、座るって最高!柔らかい椅子に座ってご満悦な俺に聖女は興味があるようだ。


「ゆ..あ、貴方様のお名前聞かせていただいてもよろしいですか?」


オレを勇者と呼びかけそうになって言い直したな。


「ユウキです。短い間ですがよろしくお願いします。」


聖女様が難しい顔をして、何かをしばらく考え込んでいる。何かまずいことでもあったかな?



「ユウキ様もしかして日本人ではありませんか?」


図星を突かれびくりと体を震わせてしまった。だが何か確信があるようだ。彼女の堂々とした姿を前に否定などできなかった。


「そ、そうです。よくわかりましたね」


聖女様は微笑みながら俺に衝撃的なことを言った。


「わかりますよ。だって私は日本からの転生者ですから。」


彼女の発言に俺は声も出なかった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る