第2話 勇者計画の失敗作

大地が激しく光る。

 目を開けられないほどの激しい閃光を見たことがあるだろうか?

 そのまぶしさに太陽が地上に落ちてきたと勘違いしてしまう人もいるかもしれない。


 そしてその後に吹く激しい突風と熱気、激しい轟音が大地を揺らす。


 テレビや動画、アニメなどなら見たことがあるかもしれない。だがそれを目の前で見たいと思う人間はいないだろう。



 やっと得られた自由でテンションが高くなり目の前にいた何百という「敵」を一撃で蹂躙してしまった。



 自分が放った魔法を使用した疑似核爆発は放射能は出ないが辺り一帯を魔素の濃密な空間に変えてしまった。

 そして先ほどの突風とは比べ物にならない強風が吹き俺は吹き飛ばされ意識を手放した。






時は一日前まで遡る。


 オレは学校に行くため自転車で登校していた。自慢ではないが友達などいない。故に一人で登校していた。


 そんな登校中、オレは赤信号で引っかかってしまった。この信号は一度赤になると長くイライラしながら待っていると、唐突に地面に落ちるような浮遊感を感じた。


 落ちる落ちる、真っ暗な空間をただただ落ちていると突然眩い光に包まれた。



「ほほうこれが、新しい勇者だな。まだ若い!育て甲斐があるではないか!」



そんな声が聞こえた。



声のする方を見るとローブを被った金髪の女性が一人とそこそこに年がいっている男がいた。



「な、なんだ。お前ら!ここはどこだ!」



「あなたは勇者になるのです。その偉大なる実験の対象者に選ばれたので今このラヴェル帝国の研究所にいるのです。さてと説明は終わりです。まずは、あなたの保持するスキルを見せてください。そこのスキルオーブに触れてください。」



 狼狽えていると急かされたので仕方なしにスキルオーブに触れると白く光った。



「はぁ~白か外れだな期待外れだ。かなり高いコストを掛けたのにこれでは」



途端にため息をつき態度が適当になる彼ら。落ち込む男に女が励ましの言葉を掛ける。



「まぁゴミでも雑用はできますからそうしましょう」



「それもそうだな、おいお前の名前は?」


「守田勇樹ですけど」


「そうか・・・ユウキお前はゴミだ他の勇者の邪魔にならないようにしろ」


そう言って俺を引きずり始めた。


「いたい!自分で歩けるから引っ張るな!」


「なら歩け!」


そう言って先に男は歩いて行ってしまう。俺は急いで付いていく。


そして着いたのは牢屋だった。


「おい!なんだこれ!勝手に呼んどいてこれはないだろ!」


俺が必死に抵抗していると女が俺を蹴り飛ばしてきた。そのまま吹き飛び牢獄へ入る。


「あんたの仕事はここで明日まで大人しくすることそれだけゴミはこれでも食べてなさい」


そう言って投げてきたのはカビたパンだった。



「こんなの食べられるわけないだろ!」


「はぁ?与えられてそれとかまだ自分の立場が分かっていないようね!」



そう言って思いっきり鞭で殴られる


「あがぁい、いてぇ」


「おらおらおら!」


何度も何度も鞭で叩かれる。



何度もたたかれ意識が無くなり掛けたころ


「やめろ!そんなにやる必要ないだろ!」



誰かが来たようだ。助かった。その誰かは俺を抱え起こしてくれた。



「大丈夫か?回復魔法はもう掛けだが痛みはないか?」



「あなたは?」



先程までの恐怖で同い年くらいなのに敬語が出てしまう。



「俺は翔太っていうんだお前と同じ日本人だ。」



「そこの失敗作とは違ってあなたは勇者様ですがね」



女が嫌味っぽくそう言った。



「さあ行こう勇者としての訓練の時間さ」



そう言って連れられたのは、大きな部屋だった。



「おお!そいつが新しい奴か!よろしくな!俺は哲也だ!」


がっちりとした体格の彼に捕まれビビる。


「へー同い年くらいじゃん!いいね!よろしく!私は友恵」


「私は咲.....よろしく」


計四人のようだ。俺は居場所はなかったので大人しく見ていることにした。


「なぁユウキのスキルってなんだ?ゴミ扱いされてたけど」


「いや分かりません。なんなんでしょうね?」


「いやステータスオープンって言えば見れるぞ?聞いてないのか?」


若干呆れた顔をしながら翔太はそう言った。

なるほど


『ステータスオープン』


そう言うといくらかのステータスの下に賢者の英知というスキルがあった。

俺は声を潜めてそれを伝えた。


「何か賢者の英知というスキルがあります。」


「で?内容は?」


興味を持ったようにみんなが集まる。


「えっと概念や理屈、技術などを魔術を使い強化して習得すると書いてあります。」


そう言うと一同がやばくね?という顔をして顔を見合わせた。


「やっぱり.....あなたが・・・今夜あなたの部屋に行く、あなたこのままだと明日殺される」


「時間です。勇者様はこちらに、ゴミはついてこい」


聞きたいことを我慢して女についていく。反対の廊下から俺を召喚したときの男が来る。



「おいサリーその失敗作の殺処分の日付が決まったぞ。明日だ。」


「ばか!ガッシュ!聞いてるでしょ!」


「別にいいだろ、そんな雑魚聞かれたって何にもならないぜ。早く牢屋に戻れ」



そう言われて殴りたい気持ちを抑え牢に戻った。


そして夜、勇者一同が来た。


「今からあなたを転移させるわ!ここで死ぬよりましでしょ!」


そう言って友恵が転移魔法を発動した訳だ。


そしてようやく冒頭のシーンに戻る


ユウキの異世界生活はこうして始まった。

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