第8話 異世界 2

 早朝に召喚された俺は、すごく豪華な部屋にある、これでもかってくらい長いテーブルで朝食を取った後、自分の部屋へメイドさんに案内され、スキルを使う練習をしていた。



 ◇



 どのスキルも使うのは簡単で、頭の中でそのスキルの名前をイメージすると、そのスキルを使用出来る。


 しかし難しいのは、そのスキルを使いこなすことだ。


 まず「飛行」だが、「飛行」を使うと、羽が生えたりする訳ではなく、体が宙に浮くのだが、地面に足がついていない分、体幹が無いと立ったままの状態は難しい。が、練習しているとだんだんとコツをつかみ、ずっと立ったままで居れるようになった。


 次に「強化」だが、「強化」は剣などの切れ味はもちろんの事、水や火を剣に当てながら「強化」を行うと、当てた量の水や火を剣を振る度に繰り出すことが出来る。

 しかしこれは、によって強化した剣の性能が決まるらしく、例えば、ものすごく集中した時に出来た剣の腹の部分を、集中せずに作った剣で斬ろうとすると、斬ろうとしたのにもかかわらず集中せずに作った方の剣が折れてしまう。


 そして、「複製」は、「強化」よりも集中力が必要で、その剣の構造が複雑な程集中力を必要とし、複製している最中に集中が途切れてしまうと、複製している最中の物は消えてしまう。

 しかし、成功すれば全く同じものを作ることが出来る。



 ◇



 何となくスキルを使いこなすことが出来た俺は、気晴らしに大きな窓から外を見ると、日が空のてっぺんまで登っているのに気が付いた。それと一緒に、城の前で王女様が沢山の人達の前で何やら大変そうにしている姿も見えた。

 すると突然、部屋扉がノックされたので、別にやましいことは無いが窓の外を見るのを止め、ノックされた扉へと話しかけた。


「なんですか?」


 すると、返事は直ぐに帰ってきた。声からするに、多分俺を部屋まで案内してくれたメイドさんだろう。


「昼食の時間です。食堂に来てください」


 メイドさんは、扉の向こうからそう告げると、足音が遠くなっていった。

 俺は、「複製」によって大量に作った「強化」した剣と、5セット程作った防具を部屋の端の方に固めて置き、先に行っていたと思っていたが扉の外で待っていたメイドさんと共に食堂へ向かった。



 食堂で出た食事は、朝と同じ、少し暖かいフランスパン三切れと銀色のつつみに包まれたバターが白いお皿に乗せて出された。

 そして、俺はこのパンの食べ方を知っている。今は外で何かやっているのでここには居ないが、王女様に食べ方を教わったからだ。


 俺が、つつみでバターを持ちながらパンに塗り、横に置いてあったナイフのようなものでパンを切ろうとしていると、王女様は、ナイフのようなものでバターを3分の1程度取り、それをナイフのようなものでパンに塗って食べるのだと、教えてくれた。


 いや、良いことを知ることが出来た。

 これは帰ったら家族にでも教えてあげよう。あ、帰れないか。


 俺は、ナイフのようなものでバターを塗った三切れのフランスパンを食べ、メイドさんの持ってきてくれたホットミルクを飲むと、部屋に戻り、スキルの練習の続きをした。



 ◇



 俺は「はっ」と目を覚ました。

 スキルの練習をしていたらいつの間にか寝てしまっていたようだ。

 俺は、月明かりが差し込んでくる窓際の壁に背中を預けながら寝ており、肩には薄い掛け布団がかけてあり、俺の右手あたりに紙が置いてあった。

 俺は暗い部屋の中で、そこに書いてある文字がよく見えないため、自分の顔にその紙を近づけると窓から差し込んでくる月明かりに照らされ文字がハッキリと見えた。


『シュウさんお疲れ様です。夕方の今、魔王軍が城の屋上から見える位置まで攻めてきました。なのでシュウさんを起こそうとしたのですが、何度も肩を揺さぶっても起きなかったので、目が覚めたら街の入口まで来てください。

 ベルドチェス王国王女 ローレイン』


 俺は薄い掛け布団とローレインからの手紙を床に置き、部屋の端の方に置いてあった防具を制服の上から身につけ、剣を10本程持ち、窓から外へと出した。

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