第6話 汝。私の事を天邪鬼と言いましたね?

なんじ。私の事を天邪鬼と言いましたね?」


 真っ黒なのか真っ白なのかどっちでもないのか分からない。そんなものが視界を覆う。

 しかし、この声は誰の声だろうか。

 聞いたことがない綺麗で透き通った声だ。


「綺麗で透き通った声とは、照れます」


 ん? 心が読まれてるってこと?


「そういう事です」

「あなたは誰ですか?」

「私は神様です」

「何を言ってるんだこいつは……」

「私は神なので丸聞こえです」

「すいません。…………考えてること読み取るなんて、めんどくさいな……」

「だから丸聞こえですっ! じゃあちょっと待ってくださいよっ! ここはあなたの頭の中だから行けないんですっ! 今から天界にあなたの意識と体を持って…………きました!」


 神様とやらがそう言うと、俺は、何やら真っ白で何も無い、白色が永遠と続いている空間に移動した。

 自分の体を触ると、しっかりと感触はあり、首の傷も治っているようだ。


「これならあなたの心の声も聞こえないので安心してください!」


 いやしかし、こいつは何を言っているんだか……神様? ふざけてるのか?


「ッ! わ、私は神様よ。今からなんじを異世界へと転送します」


「私は神様よ」って……絶対俺の心の声聞こえてるじゃん。


「聞こえてないわ! ……あ」


 聞こえてるようですね。


「ゴホン。……それで、転送する際に汝に特別なスキルを差し上げるのですが、あなたはどんなスキルが欲しいですか?」


 どんなスキルが欲しいか。かぁ。

 そりゃあ異世界に行くのなら強いスキルが欲しいが……


「どんなスキルがあるんですか?」


 俺は口で言った。


「色々と……『飛行』とか、『強化』とか、『複製』とかは一般的なチートスキルですね」


「一般的なチートスキル」って、パワーワードだと思うが……


「じゃあ全部とか」

「ふざけてるんですか? チートスキル全部とか、世界のバランスが崩れます。せめて3つまでです」


 おお、ひとつだと思ってたんだがな。


「あ、そうですそうです。異世界に行けるのは基本的に18年、生きれなかった人達だけだし、それも選ばれた人だけですので、次死んでしまったら、記憶も全部消され他の物に生まれ変わると思いますよ。例えば……ミドリムシとか! なのでスキルはしっかり選んだ方がいいですよ」


 それは怖い。


「あとちなみに、チートスキルを習得するには少し体に負荷がかかるため3つに設定しているのですが、痛いのが嫌なのであれば2つでも1つでもいいですよ」

「でも4つはだめなんだな?」

「はいもちろんです。4つ以上あなたが習得してしまうと、あなただけの問題ではなく、世界の問題になりますから」


 だったら無難に……


「じゃあ 『飛行』『強化』『複製』でいいよ」

「本当ですか!? そのスキルは体にかなりの負荷がかかりますが……まぁいいですね! では行きましょう!」


 神様とやらがそう言うと、俺の体が光った。


 それと同時に俺の体が心臓の方へと押し潰される感覚がした。


 足や腕、頭が無理やり胴体の方へと押し込められ、骨や肉は音を鳴らさないが、体には激痛が走り回っている。


 そして、痛みが和らいでいくとやがて、目を開くと視界に光が入ってきた。

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