第4話 異世界へゆく。4

 朝。

 外は豪雨で、恐らく熱帯低気圧の影響だろう。

 そんな中俺は、雨に負けずに、傘をさしながら学校へと向かっていた。



 傘を傘立てに置き下駄箱に着くと、新しい上履きを持っていないことを思い出した。

 おそらく、昨日下駄箱に入っていた上履きが甘宮のおかげで綺麗なままだったから忘れていたのだ。

 俺は恐る恐る下駄箱を開けると、その中には落書きのされていない上履きが入っていた。


 ──良かった。


 俺はホッと息を吐いて、速くなっていた心臓を落ち着かせた。

 そして俺はその上履きを地面に、つま先から置き、その上履きに足を入れたのだが──


「──いっ!?」


 俺は咄嗟に足を上履きから出し、地面に置いてある上履きを手に取り、上履きを足を入れる口の方へ傾けると、カッターの刃を一本一本折ったものが、5本ほど入っていた。

 もう一個の上履きにも入っていたため、合わせて10本のカッターの刃が折られたものが入っていた。

 俺は靴下を脱いで自分の足を確認したかったが、ここで脱ぐのは少し目立つため、つま先に走る痛みに耐えながら教室へと向かった。



 教室に着くと、俺の席の周りに珍しく人が溜まっていた。

 俺は不思議に思いながらも、その群れには近づかないように、SHR《朝の会》な始まるまで、トイレで待っていようと思ったが、俺の席に溜まっていた1人が俺を見ると、溜まっていた人全員が、俺の席から離れていった。

 そして、誰も居なくなった俺の机には、落書きがされていた。

 いや、机だけじゃない。椅子の背もたれにもにも、少しだけ見えるが机の中にもだった。

 俺は、今日で終わりだからまぁいっか。そう思いながらストンッと席に着くと、俺の太ももから腰にかけて激痛が走った。

 俺はその激痛には声が出ず、ただ、歯を食いしばっていた。そして。恐る恐る立ち上がると、椅子の上にコツッ、コツッとお尻に刺さったたくさんの画鋲が落ちた。


 俺はその画鋲を手で集め、落書きだらけの机の上に置き、席に着き、机の中のノートを取り出そうとすると、何かヌメヌメしたものが手に付く不快な感触がした。

 恐らく、ボンドか水のりだろう。

 俺はノートを出すのもやめ、いつも通り机の落書きを消そうと横にかけてあった雑巾を手に取ると、それもなにか分からないがヌメヌメと不快な感触がした。

 そして、仕方ないと、ポケットに入れてあったティッシュで机の上の落書きを消そうとしたが、その落書きは消えなかった。

 水性ペンなら綺麗に消えるはずなのだが……これは多分油性ペンなのだろう。

 俺は机の上の落書きを消すのは諦め、机の上のカバンを置き、落書きを隠すことにした。


 その後、どうせ今日でこの学校とはおさらばなため、全部の授業を机に突っ伏して、机の落書きを隠しながら寝て過ごし、放課後になった。

 そして俺は、放課後に退学届を出しに行くと決めていたため、足早に教室を出た。

 すると、何者かが俺の両腕を捕み、俺に目隠しをして、腕を引っ張ってどこかへ連れていこうとした。


 俺はそれに、無駄に逆らおうとせず連れていかれた。

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