第2話 異世界へゆく。2
夕方5時半頃。
そろそろ日が暮れるのも早くなってくる季節だが、俺の下校は、日の暮れる早さとは違い遅くなりそうだ。
「あ、やぁ、
校舎裏への角を曲がった場所に立っていた
俺はこの甘宮の事を良く知っている。いや俺だけじゃないか、甘宮はこの学校では有名人だ。
甘宮皇大郎は、運動神経がものすごく良く、サッカーでは1年生にして、高校生の日本代表に選ばれているらしい。その上、学校の定期テストでは毎回1位、顔は、女の子顔負けの綺麗で繊細な肌と可愛らしい顔つき、髪の毛が金髪で地毛らしい。
そんな、運動もでき、頭脳明晰、
それは──俺には全くと言っていいほど持っていない──財力だ。
甘宮の家は、ここの地域では1番の大金持ちと言われていて、家は屋敷らしく、メイドや執事さんもいるのだとか。
「俺に何か用です?」
俺は何も知らないかのようにそう言った。
すると、甘宮は眉をひそめて、申し訳なさそうな笑みを浮かべた。
「あの手紙の言葉は、少し脅すような感じを出した方がいいかなと思ったから汚い言葉を使っちゃったんだけど。ごめんね。……それで本題なんだけど、少し君に用があってね。……あ、そういえば今日、君の上履きとかノート、綺麗だったでしょ? それ、僕が今日はいじめるなってみんなに命令したからなんだよ」
甘宮は、何度も表情を変えながら、愛想良く話している。
「いじめるなって、主犯は甘宮なの?」
俺は、聞いた。
すると、その返事は直ぐに返ってきた。
「違うよ?」
甘宮は至って笑顔でそう言った。
その笑顔はどこか不気味な雰囲気を漂わせていた。
「で、本題だけど……
何を笑顔で言っているんだこいつは。
俺はそう思いながらも、甘宮の提案に質問をしてみた。
「働くって、何すればいいの?」
「えーっとね。まぁ執事さんみたいなことかな」
「じゃあ給料は……」
「給料は、月100万くらいでいい?」
「100万って、何かキツイ仕事でも?」
「いや、仕事の内容は、僕の着替えを持ってくるとか、僕のご飯を持ってくるとか、お使いとか、僕の背中流しとか」
「そんなんで100万って。どうして?」
「君をいじめから保護したいからだよ」
甘宮の顔からは笑顔が消え、真剣な表情でそう言った後、数秒俺と甘宮の間に沈黙が流れると、甘宮が「背中流しは嘘だよ」と付け加えた。
「もちろん引き受けたいですけど──」
「──決まりね! じゃあ今から俺の家まで走っていこう!」
そう言って、甘宮は俺の手を掴んで、校舎裏にある裏門から学校を出た。
そして、薄暗い空の下、風を切り裂くようなスピードで走る甘宮に、俺は引っ張られながら走り出した。
いじめの主犯にいじめられ、家に帰るのが遅くなりそうという予想は外れたようだ。
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