4.ギルドとはなんぞ?

 お姉さんを待っている間やることが無いので、遠目でミカ兄を観察しておく……なんか片手にジョッキ持ってるぞ?酒じゃないよね!?まだ昼にもなってないんですけど!

 沢山の人とジョッキを打ち合わせたり、拳をぶつけ合ったり、肩を組んだり……とても楽しそう。みんな友達なのかな?凄く仲良さそうだ。よく見るとあそこにいる人、直接喋っていない人でも殆どがミカ兄を見ている。もの凄い人気っぷりだな。


「なぁ、俺達もいつかあんな風になれるのかな」

「どうかな?俺達は俺達だ。ミカ兄と同じになる必要はない」

「確かにその通りだけど、あれはあれで凄いわね。私達は私達なりに凄くなろうよ」


 ミカ兄を眺めていたらお姉さんが戻って来ていて、一人ずつ手渡しでカードをくれる。念願のギルドカード!ピカピカ銀色のカード!それぞれの名前がカッコよく書かれており感動のあまり暫し眺める、これで俺達も一端の冒険者だ!

 無くさないように胸のポケットにしまうと、何も言わずに温かい目で見守っていてくれたお姉さんがギルドの決まりと注意点を簡単に説明してくれた。


「ギルドっていうのはね、仕事の斡旋所なの。依頼主からの要望をギルドが預かり、それをギルドの登録者が好みや能力に合わせて分担してこなしていく。仕事の内容は荷物の配達や子供の世話など安全で簡単なものから、商隊の護衛、害獣やモンスターの討伐依頼まで、それはもう、たくさんあるわ。

 依頼人の満足のゆく仕事が出来ないとギルドの信用問題になっちゃう、だから依頼内容によって仕事のランク分けがあるのよ。ギルド内における個人の信用度、つまりギルドランクによって受けられる依頼が決まってるから覚えておいてね」


 ギルドランクはEⅢから始まり、依頼をこなし信頼と実力を示して行くことでEⅡ、EⅠ、DⅢ、DⅡ……と順番に上がって行く。一般的に冒険者と呼ばれる流れ者達は、一人でも魔物を狩れるCⅢ以上。Dランク卒業迄は地元の町で仕事をこなして経験を積み、一人前と言われるCランクの昇格試験合格と共に旅に出るのが通例になっているらしい。


 ギルドに関して言えば凄いことが一つ。

ギルドに登録すると『ギルドカード』が一人一枚発行される、さっき俺達がもらったやつだな。そのカードには名前や年齢、受けた仕事なんかの個人情報が刻まれていて、ギルドにある専用の魔導具で読み取ることができるらしい。刻まれる情報には功績や、犯罪履歴などもあり、その人がどういう人なのかも把握されてしまう。


「ギルドカードは身分証明書として信頼されるものなの。だからギルドの依頼を受けない人でも十歳の誕生日を迎えると身元を保証してもらえる人に連れられて身分証明用にカードの発行をしに来るのよ。

 ある程度大きい町に入るときには提示が義務付けられているから、絶対に無くさないでね?」


 更に言えばこのカード、ギルドの管理する魔導具を使えば所在を探知できるらしい。

 例えば俺が何も言わずにフラフラと旅に出て行ったとしても、ギルドで調べれば、今何処にいるのか判ってしまうってことだな。その機能のお陰で犯罪の抑止力にもなっているとのこと。勿論それも個人情報なので、ギルドに聞いても簡単には教えてくれないらしい。


「最後にもう一つ。モンスターの襲来やその他の非常時には避難勧告や緊急討伐依頼が発令されることがあるの。そのときにはギルドカードにメッセージが表示されるのね。簡易的な表示機能だからそんなに種類は多くないけど、緊急表示があった場合は町や国からの強制指示だからそれに従う義務がある。指示に従わなかった事が発覚すると後日、ペナルティーが課せられるから気を付けてね」




 ミカ兄の所に行こうとすると、最初に話しかけてきた銀髪が立っていた。見た目は変わりないのに チャラチャラ とした雰囲気ではなく、落ち着いた静かな視線を俺達に向けていた。


「登録は終わったようだね、ギルドの説明は受けた?あ、そうそう僕はギンジって名前だ。ミカルは僕の相棒でね、よろしくしてくれよ」


 緩めの白いズボンに羽織を着ただけ、細身なのにムキムキの肉体を惜しげなく晒すギンジさんは、腰に手を当てて子供みたいに無邪気に笑う。

 どうやら悪い人ではなさそうだ。なので、俺達も自己紹介と行こう。


「ミカ兄の弟、レイです」

「アルだ」

「リリアーヌです」


「おいこら、あっち行けっつったろ?なに人の弟達にちょっかいかけてんだ?しばくぞ、この野郎」


 いつのまにかミカ兄が戻って来ててびっくりした。なんかさっきより雰囲気が柔らかくなっている気がするが、酒のせいか?酔ってるのか、ミカ兄?


「ミカルの弟なら、僕の弟も同じだろ?挨拶くらいさせろよ」

「ん?まぁそうだな。コイツはギンジって言ってな、ベルカイム最強の男だ。どうだ驚いたかっ」


 ギンジさんの肩を バンバン 叩きながら豪快に笑うミカ兄は飲み過ぎじゃないのか?ジト目で見てやったが気付きもしないなんて……なんて大人だよっ!


「ミカルは二番目だけどなっ?」

「るっせーよっ!いつか倒してやるから覚悟しとけよっ!」


 そう言って肩を組んで笑い合う二人。やっぱり仲良し、いいライバルなのかな?

 ひとしきり笑い合ったあと、ちょっと早いけどギルドの食堂でお昼ご飯を食べた。この町最強らしいギンジさんも一緒だったからか、色んな人が「頑張れよ」って声をかけてくれたけど……いっぱい居過ぎて顔も名前も全然覚えてないのは気のせいってことにしておいてくれ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る