第13話 動き出す


「将来一流モデルになるようダイヤの原石が、高校生である俺をプランナーにご指名とは光栄だな。」


「な、なによ、その顔は... 」


「いや、白仲との会話をたまたま聞いてただけで、ここまで確信を持って俺に依頼してくるのは少し不自然と思ってな。」


「な、な、なななななにょ...」


行動の真意を探ろうとする俺に、明らかに動揺を隠せない結城。

ポンコツロボットかこいつは。


「まぁ何でも良い。条件付きと言ったが、さっそく条件を一つ伝えていいか?」


「い、いいわよ。」


「おまえのプランナーとして、俺が動くのは学祭が終わってから。それが一つ目だ。」


「まぁ別にいいわよ。何か下準備があるからかしら? そこまで真摯にやってくれるのはありがたいことね!」


「まぁそんなとこだ。じゃあ、また学祭の後で。」


「え、あ、ちょっと!」


序盤の自己紹介あたりから、白仲に対して変な対抗意識を持っていることが窺えたので、白仲の協力に釘を刺さされる前に、俺はその場を立ち去った。


それにしても、とんでもない奴が現れたな。結城世莉か。彼女のプランを本格的に考えるのは学祭後にする。

そもそも、ビジュアルをアップデートしたいだけなのか、白仲のようにそれともそれによって自らの立ち位置や評価を変えたいのか。

話はそこを把握してからだ。


涼は今後の立ち回りについて考えながら帰路についた。




「ただいまーっ」


俺は家に帰り着くと、手洗いうがいを済ませて、冷蔵庫に緑茶を飲む。

ジュースは飲まない。基本的に飲み物は緑茶だ。緑茶が一番うまい。


「ぁぁりょくちゃザイゴー!」


「キモッ」


おっと、後ろにいたか...

緑茶で疲労回復した俺に対して、鋭く短い言葉のナイフでザクッと刺してきたのは、俺の3つ下の妹、下田菜月。


菜月は正直、身内でも認めざるを得ないほど美人だ。中学でも毎月誰かしらに告白されているらしい。菜月の友達が家に来た時、話しているのを耳にした。


毎度毎度、うちの妹は辛辣だ。基本的に妹は俺に対しては

「キモッ」「ウザッ」

などの罵倒をとばしてくることが多い。


「今日、2人とも、夜遅いってさ。」


「いつものことじゃん。報告いらないし。」


「へいへいっ」


昔は本当に仲良かったんだけどなぁ。


いつからか、菜月は冷たい態度をとるようになった。プランナーという仕事を始めた頃だろうか。まぁ年頃の妹というものはどこの家でもこんな感じだろう。

アニメに出てくるようなお兄ちゃん大好きな妹など幻想である。これが現実だ。


「なんか懐かしい匂いするんだけど」


「え?」


「いや、なんでもない。」


菜月が珍しく俺の罵倒以外で話しかけてきた...

菜月は昔から人の匂いに関して敏感だったから、仲良い頃は、

「なんかいつもと違う女の匂いがするー!」

とか、浮気に敏感な彼女のような発言をしてくる時もあった。


久しぶりに会話が続くかも!と少しだけ期待した涼だったが、その後、リビングで兄妹の会話もないまま時が過ぎたので、

涼は自室にこもって、白仲と八島の衣装作成に没頭した。








とある日のサッカー部の部活帰り、ムードメーカーの相田は先輩達と下校していた。


「なぁ、相田ー、おまえのクラスに可愛い子いねぇのかよ。紹介してくれよ。最近年下がきてんだよなぁー。」


「あーそうっすね、最近男子の中で熱いのは、白仲ってやつっす。あんまり気にしたことなかったんだけど、最近よく話してると可愛いし、正直たまんねぇすわ。」


「おま、そんなんクラスいるなら、もうちょい早く言えよっ」


「なぁ今度、遊び誘って連れてこいよー」


「え、いやまぁ、くるかわかんないっすけど...」


「は、絶対連れてこいよー、分かったな?」


「うっす...今度ちょい誘ってみるっす。」


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