第12話 2人目??
今日は水曜日だ。
放課後は劇の練習があるから、いつもの打ち合わせは、その後になった。
「なんか久しぶりな感じがする。」
「そうか?打ち合わせはきっちり1週間毎だぞ?しかも話したのは一昨日くらいだ。」
「そうね。なんか教室であえて喋らないようにしてるから、久しぶりに感じたけどそんなことなかった。」
なんとも不毛な日常会話から、打ち合わせはスタートした。
「衣装なんだが、色合いは3パターン考えてきた。まぁ白雪姫だし、基調は大体一緒だが、配色としてどれが好みが教えてくれるか。」
「うーん... これもいいけどぉ、これかな!青強めで!」
「おっけぃ。分かった。ありがとう」
最近の白仲は少し元気に見える。周囲の反応の変化を実感してきたからか、それとも劇の本番が近づいてきて、モチベーションが上がってるのか、それとも───
「そーいや、最近、八島といい感じだな。」
「え、なにいきなり。」
「王子様役と白雪姫役として距離も縮まってる。周りの人間も顔近づけるだけで、謎の盛り上がりだ。」
「いやー、べつに... 正直困ってるよ... なんかそんなつもりないのに盛り上がられても...なんか、いつも顔も近いし。」
「まぁ八島と仲良くなって、カップルみたいに扱われるのは面倒くさいかもしれないが、使えるもんは使っとけ。白仲は今、八島と共にクラスの中心になってる。」
クラスでいきなり高嶺の花になるのは、元の普通の女の子時代を見られてることからして中々難しい。
だが、人気を学校単位に持っていけば、より白仲の存在は美化されやすい。
高嶺に咲いてるなら、花に多少綻びがあっても、下にいる人間からは見えないのだ。
「あんたはそれでいいの?」
「え、計画としていい流れだとは思うけど。」
柚香は不満げな表情で、涼に問いかけた。
涼は淡々と答える。
いや、なんか、言葉悪くなってね?下田君呼びいつからやめたんだこの子。あとなんか急にキレてるんだが... 分からん。
あ。
「あー、あれだ。衣装の件を含めて、クラスメイトに対して嘘ばっかりつかせたのはごめん。いらん罪悪感を背負わせることになった。」
「あーはいはい。それは、別にいい。」
全く分からん。女心というのは本当によく分からん。デリカシーに欠ける発言があったのかもしれないな。
「まぁいいよ!とりあえず、衣装よろしくお願いしますっー!!」
柚香は拗ねた子供のようなセリフを吐き捨てて、階段を後にした。
仕方ない... 帰るか... さっきのは何だったんだ。
相手がいなければ打ち合わせもクソもない。俺は白仲が怒り気味だった原因追求を脳内会議で行いながら下校する。
とぼとぼと校舎を出て、いつもの通学路を歩いていると、
「あなた、私の専属プランナーになりなさい!今すぐに!」
突然目の前に、勝気な態度の金髪ショートボブの女生徒が仁王立ち。
うぉぉ、全校生徒900人近くもいれば、やっぱり頭のおかしい人もいるもんだな。
後ろにいる人に話しかけているのだろう。
俺は巻き込まれないよう、避けるように歩いて
下校を再開する。
「下田涼!!!あんたよ!あんた!あんたに用があんのよ!」
... 俺は巻き込まれないよう、避けるように歩いて
下校を再開する。
「ちょっ、あんた!普通、名指しした後に同じ反応なことある!?待ちなさいって!」
腕を掴まれた。ええい、鬱陶しい!
「離せ。よく分からんが多分人違いだ。」
実際、何かの間違いではないかと思っている。俺が日頃、プランナーに勤しんでいることを知ってるのは校内で白仲とみゆきだけだ。
「いや、間違いなくあんた。あんたが白仲柚香と裏でこそこそアドバイスしてるのを見かけたわ。しかも、それが始まってから、白仲柚香のビジュアルのレベルは確実に上がり、周囲の評価も急上昇してる。面白いくらいにね!」
「あまり大きい声で喋るな。」
「な、なによ...」
近くを通りかかっている生徒に聞かれたらまずい。俺は目の前のハイテンション金髪ショートボブ女に軽く圧をかける。
「と、とにかく!あんたは私の専属プランナーになりなさい!あんな女より私の方が輝くわよ!?」
素材としてはかなり良い。多分、既に容姿で人気を集めているのではなかろうか。綺麗な緑色の入った瞳に、強気な態度とは丸っこい大きな目。
ただ、プランナー的観点から言わせれば、現状として、もったいない。この一言に尽きる。がしかし、今は白仲に集中したいし、そもそもメリットがない。
「帰れ。そんなに自信があるなら自分でやればいいだろう。」
「うっ,..」
俺は、強気な態度を保ちつつも涙目になっている金髪ショートボブ女の横をガン無視きめて通り過ぎる。
「白仲柚香との関係、バ、バ、バラすちゃうわよ!」
いや、盛大に噛んでるし。顔真っ赤だし。
まぁ慣れてないことするとこうなるよな。彼女なりに勇気を振り絞っての脅しなのだろう。
「はぁ... 条件付きでもいいか?」
「へ?やってくれるの?」
「バラされるのは困るからな。条件付きなら。あんた名前は?」
「私は結城世莉、将来、一流モデルになって日本中を虜にする女よ!!」
...アホの子かな。
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