気づいたら幽霊が家に住み着いていたけど、ホラーは苦手なので全力でラブコメしたいと思います。
98話 妹とのラッキースケベって何のご褒美でもないし、それなら幽霊とのラッキースケベの方がうれしいしむしろご褒美……いえ、なんでもないです。
98話 妹とのラッキースケベって何のご褒美でもないし、それなら幽霊とのラッキースケベの方がうれしいしむしろご褒美……いえ、なんでもないです。
「ちょちょちょちょっと!! ななななにやってるの!?」
何やってるのって、俺が知りたいんだけど。
レイはすっころんだままバタバタと足を動かしている。
もちろんレイの体は俺の腹を貫通しているままだから、俺自身の悪寒は止まらない。
というかあんまり叫ばないでくれないかな。
多分同じマンションに住んでいる人なんだろうけど、あまり騒がしくした次の日とかにそのおばちゃんに会うと、すごい白い目で見られるんだからね。
いくら夕方とはいえ、そんな大声で叫んだら俺めちゃくちゃ白目剝かれるよ?
それに何事じゃなくて、何やってるのっていったいどう答えれば正解なんだろう。
俺としては今俺の身に起きている出来事を、全力で妹から隠したい一存ですが、隠そうとしてもレイの体は透けるから隠せるわけもない。
むしろ体を折り曲げようものなら、背中とか足とか顔からレイのあらゆる何かが飛び出してしまって、それこそ放送事故レベルの人体不思議ファンタジーになってしまう。
「その子大丈夫なの!?」
何を心配しているのか妹はおろおろしながら、パタパタとかわいらしく動き続けているレイの足を見つめている。
レイは大丈夫だろ。むしろ俺の方を心配してほしいんだけど。
レイがいつまで経っても起き上がろうとしないから、最早鳥肌を通り越して蕁麻疹が出始めたんじゃないかって思うんですけど。
あ、いや、別に蕁麻疹って嫌とかそういう悪い意味じゃないからね?
寒気やら悪寒やらで鳥肌が経ちすぎて、ぶつぶつがずっと体に出てるから蕁麻疹みたい~っていう比喩だからね?
だからレイさん冷気を増幅させないでもらってもいいですか!
え、聞こえてる?
「妹よ、これは違うんだ……」
「なにこんな状況でシリアスぶって『妹よ』とか言っちゃってるのよ! かっこよくないから。それに違うって何が違うの? 何がどう違ったらそんなことが起きるの?」
だめだ、妹が混乱している!
早く何とかしなければ妹の脳みそがショートしてぱっぱらぱーになってしまう!
もともとぱっぱらぱーで救いようがないのかもしれないけど、まだなんとかなるはずだ!
「と、とにかくその子助けてあげないと!」
俺の心配をよそに妹は焦ったように前のめりになって、バタバタしているレイの足を掴もうと手を伸ばした。
まさか俺と違って妹はレイに触ることができるのかと思ったけど、当然のごとく妹の手はレイの足をすり抜け、そしてその光景を凝視した妹は再びフリーズ。
「え、ちょ……」
しかしフリーズしたタイミングが悪かった。
前のめりになってバランスを崩している状態での体勢固定。
都会で何をやってるのかは知らないけど、きっと俺と同じで運動はそれほどしていないであろうわが妹がそんな不安定な体勢を維持できるほどの、筋肉量があるはずもなかった。
「ちょっと、どいてー!!」
どいてと言われましても。
いいか? こういう時こそ冷静に考えるべきだぞ。
重力に従って倒れてくる妹、それをよけるにはどのくらいのスピードで俺はここから移動しなければいけないのか。
移動するためにはまず立ち上がらなければならない。
ほら、この時点で俺が立ち上がろうと膝を立てたらむしろ妹の顔に俺の膝が激突するかもしれない。
かもしれない行動って大事なんだよ?
だから俺がここでとるべき対処はむしろ
「ふべし!!」
考えている途中で妹は俺に覆いかぶさるように倒れて、俺はそのまま押しつぶされる形で一緒に床に倒れてしまった。
「お、重い……」
あ、やべ。そう思った時にはもう遅い。
だってよりによって思わず口に出していってしまっているんだから、超至近距離にいる妹にはばっちり聞かれてしまっている。
「重いって何? 私これでも同年代の女の子の中では相当軽い方なんですけど。平均体重以下ですけど何か?」
起き上がり俺に馬乗りになるような形でそれはもう冷たい視線で見降ろしてくる妹。
もう俺、冷たさの板挟みでどうにかなっちゃいそう……。
「って、そんなことよりその子大丈夫!? ていうかなんかお兄ちゃんと顔が重なってるけど、お兄ちゃんも大丈夫!?」
今日はよくお兄ちゃんと呼んでくれる日だなあ。
妹が小さい頃はよくお兄ちゃんお兄ちゃんと俺の背中を追いかけていたものだが、いつの間にか俺を追い越して俺が背中を眺めるようになってしまった。
呼び方もそれに応じてバカと間抜けを経由して、今はさと兄に落ち着いているわけだし。
「大丈夫。レイは幽霊だから」
「お兄ちゃん……?」
おーまいがー。
なんかよくわからん感傷に浸ってたら、勢い余って口が滑ってしまったぞ?
妹の方を見るのが怖い。
「……こんなかわいい子のことを幽霊だなんてなんてこと言うの!!」
…………ん?
てっきり変な目で見られると思っていたら、思いのほか予想外な返事がきたぞ?
レイが可愛い? いやそりゃレイは可愛いけれども。
そんなことは当たり前なんですけど。いまさら確認する必要もないけど。
でも面と向かって言われると嬉しいなあ。別に喜んでないけどね?
当たり前のことだから。
「え、なんでそこでさと兄が照れてるわけ? 照れる基準がよくわかんないんだけど。さと兄のこと褒めてるわけじゃないんだけど」
今度こそこちらを引いた目で見つめてくる妹は、すっと立ち上がりじりじりと俺から距離を取ろうとする。
待って、これは俺が悪かった。
つい、ついなんだよ。
しょうがないでしょ。好きな子のことを褒められたらついにやけちゃうのが、男ってもんでしょ。
お前こそ男のこと理解してる?
俺は女のことなんて全然わかんないけど。
「せ、説明するから」
苦し紛れに出た言葉は、事実上の敗北宣言だった。
当然でしょとでも言いたげな顔で俺から十分な距離を確保した妹は、そこで座って俺の言葉を待つ。
……さて、何と説明したものか。
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