皇都第一中学校の生徒会選挙10
「いったい何があったのかしらね」
そう陽菜が会話を切り出し始めた。
「クラスのほとんどの生徒は妹に票を入れる予定だったと聞いているわ。にもかかわらず結果は御存じの通り。おかげで妹はずっと落ち込んだままよ」
「それはお気の毒に」
陽菜の言葉に対し、そう返した秀二の言葉が陽菜には癪に障ったようだ。
「率直に言わせてもらうと私は秀二君、あなたが犯人だと思っているのだけど」
陽菜は鋭い目線を秀二に向ける。
「選挙の詳しい戦況なんかは妹とずっと一緒に行動していたそこにいる千代さんから詳しく聞けるしね」
「そんな……。私は何も――!」
「信也っていう生徒がいったいどこの息子なのかは知らないけど、飯田派の誰かしらの息子なのでしょう?まさか選挙でこんな不正を行うとは思わなかったわ」
千代は何も言い返せず黙ってしまう。しばらく無言の時間が続く――ように思われたが唐突に秀二が口を開いた。
「言いたいことはそれだけですが」
日に油を注ぐような発言に千代は秀二を見た後、恐る恐る陽菜の方にふり返る。
陽菜は怒りのあまりこちらにとびかかってきそうに千代には思えた。
「まず、信也という生徒とこちら側のつながりを調べてからそういうことは言ってもらいたい。それにあなたは美咲さんと千代が一緒に選挙に向けて頑張っているのをその目で見たはずだ。ならわかりますよね?兄の件がありますからスパイを疑いたくなる気持ちもわかりますが千代は本気で美咲さんに当選してもらおうとしていましたよ」
秀二の言う通り、千代は信也を当選させるためにスパイ活動などしていない。
「そう」
それを聞いた陽菜は先ほどまでの表情が嘘のように柔らかくなった。それを見た秀二はどっと肩の力が抜けたように椅子にもたれて言葉を続ける。
「鎌をかけないでくださいよ。陽菜さん超恐いですから」
「えっ!」
思わず千代は声を漏らす。陽菜は鎌をかけていたらしい。
それにこの話し方、どうやら二人は千代が思っている以上に仲が深いようだ。
「千代さんの様子を見ていればすぐにわかるわよ。脅かしてごめんなさいね。でも可能性はゼロじゃないし、確かめてやろうと思ったのよ。まあ、千代さんが知らないだけで、家でそれとなく選挙の状況を引き出し、裏で秀二君が動いていたなんてこともあるかもだけど」
「それもないですよ。千代から詳しく選挙のことを聞いたのは終わってからですから。だな、千代」
「はい!」
千代は激しく首を縦に振る。
陽菜の魅力はただまじめなだけでなく、こういった駆け引きもできる点だ。非常に能力が高い政治家だろう。
「そう、なら良かったわ。本題に入りましょう。不正だらけの選挙について話し合いましょうか」
*この作品はフィクションです。
* * *
まだしがない学生のw-Akiです。つたない文章ですが読んでくださってありがとうございます。訂正した方が良い箇所がございましたらアドバイスをもらえると嬉しいです。
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