皇都第一中学校の生徒会選挙6
京極陽菜、聞いたことがある名前だ。千代は記憶を掘り起こす。秀二と同じく二十代の若い議員であり、また数少ない女性議員でもある。
清廉潔白なイメージで悪を許さない正義感の強い人間だ。選挙権を持っていない一般大衆からの人気が特に高い。
現在の皇国では税金を三円以上治めている者でないと選挙権が認められていない。その人数は皇国の全人口の約五パーセントほどだ。もし彼らにも選挙権が与えられていれば陽菜はさらに多くの票を獲得していただろう。
「あっ!いえ、こちらこそ!清水千代と言います」
そうあいさつした時、千代は一瞬、陽菜の表情が固くなった気がした。
「で、お姉ちゃん。何をすればいいの?」
しかし話し合いが始まったので千代は深く考えないことにした。
「まず立候補」
「も~、それはさすがに私もわかる」
「次に有権者のみんなにどんな学校にしたいか、伝えて自分たちに票を入れてもらうようにすること。口で言うのは簡単だけどこれが結構難しいのよ」
この日、選挙に向けての手ほどきを受けた二人はさっそく明日から準備をすることにした。
「それにしても津田先生か、いい先生が担任になったわね」
ふいに陽菜がそう言った。
「知っているの?お姉ちゃん」
「私の元担任よ。仕事に熱心な先生だわ。まあ、選挙頑張ってね」
「うん!」
◇
「私ね、学級代表に立候補したの。これから具体的には――」
クラスメイトに熱心に話しかける美咲。
「頑張ってね、美咲ちゃん!」
クラスでの評判もかなり良く、少なくともこうやってみんなから声をかけられるぐらいには慕われている。
もっとも千代は美咲が学級代表を決める選挙で負けることはないと思っている。
なぜなら――
「それにしても立候補しているのが私のほかにあの細川信也だけだなんてね」
そう、二人しか立候補していないのである。相手が信也なら負けることはないだろう。最近では学校での態度が悪く、担任の津田からよく注意される始末。それでも全く聞く耳を持たず、逆切れすることもしょっちゅうだ。
「うるせぇ!」
こんなことを毎日言われて千代は津田のことが少し心配になるが当の本人は
「まだ中学一年生だし、根気よく続けるつもりよ」
と全くへこたれた様子もない。陽菜の言うように立派な教師のようだ。千代は心から津田のことを尊敬する。
こんな様子の信也なのでクラス内での評判は悪く、信也に票を入れる人は周りに群がる取り巻きぐらいなものだろう。
「ねえねえ、そろそろ選挙だね。誰が勝つかな」
「そんなの美咲さんに決まっているじゃない」
「それはわかっているわよ~。うちのクラスの事じゃなくて――」
クラスメイトがこんな話をしていることも千代は知っていた。クラスのほとんどの人が美咲に入れると思っているし、実際そう言っているのを聞いている。
後から思えば千代は少し楽観視しすぎていたのかもしれない。なぜ信也がいつも余裕そうな態度なのかを千代は考えていなかった。
*この作品はフィクションです。
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