雪の降る暗い日に5
「知り合いか」
「さっちゃん、起きて!ねぇ、さっちゃん……ねぇ、お願いします。助けて、」
千代は秀二に対してあまり良い印象を持ってはいない。
それでも目の前で倒れている親友を助けるためか、唇をかみしめながらもそう言い、無慈悲にもその場から立ち去っていく秀二の服の袖をつかむ。
「無理だ」
「なんでよ……。あなたたちが間接的にここまで追い詰めたようなものじゃない!」
袖をつかむ千代の手に力がこもる。
「そうかもな」
「だったら――」
「その子はもう助からない。千代もわかっているだろう?」
「っ~~~~~~。うう……」
◇
ずいぶん長い間、千代は泣いていたがやがて一通りの荷物を取りに住んでいた家に入り、しばらくすると荷物をまとめて出てきた。
「それで全部か?」
秀二の言葉に千代は黙ったままだ。
「じゃあ、行くぞ」
秀二の家に帰るまでの間、千代と秀二の間に会話はなかった。
◇
その日の夜、千代は布団の中で考えていた。
ちなみに千代の寝ている部屋は秀二の兄である凛太郎の部屋だ。今はもう千代の部屋にしてもらっていいと言われている。
「……あんな奴、やっぱりいない方がいい……」
今日の秀二のことを千代はそう考えていた。
助けを求めても無慈悲に立ち去って行ったあの姿を。
間接的に追い詰めた、と言った千代の言葉を認めながらも表情を変えなかったあの顔を。
何を考えたのか、自分でもわからなかったが千代はそっと部屋を出て、足音を殺して秀二の部屋に向かった。
扉をゆっくり開けると、かすかに寝息が聞こえた。秀二は寝ているようだ。
一歩、また一歩とゆっくり秀二に近づく千代。
その時だった。
「すま……ない」
「っ⁉」
突然の秀二の言葉に思わず声が出そうになる千代。
寝言のようだ。何度も千代は確認する。
やがて千代は気づいた。少し秀二の顔が光ったように見えたことに。それは涙の跡だった。
「……」
千代は何もせず、その部屋を後にした。
◇
翌日、秀二はいつものように顔を洗い、簡単な朝食を作るためにリビングに向かう。
しかしそこにはすでにいつもより立派な朝食が用意されていた。
「これは……」
「あら、秀二。おはよう。これはね、千代ちゃんが作ってくれたのよ~」
「千代が?」
母文江の説明に驚く秀二。文江はともかく秀二は千代に嫌われている自覚があったため、本当に作るとは少し予想外だった。
「おはようございます文江さん……清水さん。朝食を用意しました」
「……ああ、ありがとう」
「ありがとう千代ちゃん、でも無理しなくていいのよ?」
三人はおいしく朝食を食べ終えた。
その後、秀二は千代に尋ねる。
「どういう心境の変化だ?」
「……いえ、別に。住まわせてもらっている以上、家事などはしようと思っただけです」
そう言って千代は食べ終えた三人分の食器を洗うために台所に運んでいった。
◇
*この作品はフィクションです。
* * *
まだしがない学生のw-Akiです。つたない文章ですが読んでくださってありがとうございます。訂正した方が良い箇所がございましたらアドバイスをもらえると嬉しいです。
皇国の清水秀二は私情により来週から土曜日の22時ごろに投稿する時間を変更します。ご了承ください。
宿題や課題で忙しく、投稿できないこともあるかと思います。ごめんなさい。
Twitterを始めました。小説のネタになりそうな話や簡単なイラストなどを投稿しようかと思っています。初めに言っておきますと絵は下手です。中学の美術の成績で5を取ったことがあります。10段階でね‼
Twitterには僕のプロフィールや近況ノートからとんでいただけると思います。
こちらの小説も書いています。興味があればどうぞ!
https://kakuyomu.jp/works/1177354054921425988
タイトル:reincarnate
ジャンル:異世界ファンタジー
キャッチコピー:世界が変わっても「――」に会えるのか、「――」は誰なのか
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