眩い月.

 月が出ていた。


 彼を見上げるときは、いつも、月が一緒に見える。


 月に照らされた彼は、凛々しく、美しい。その姿が、とても好きだった。


 昼間の彼は真面目で、おっとりした性格。そして実際、大きい身体に似合わず、ゆっくり、歩く。


 一緒にゆっくり、歩いていきたかった。これまでそうだったように。これからも。


 ずっとそうやって、二人で生きていくはずだったのに。彼は、私を見てくれなくなった。


 やっぱり。魅力が。ないんだろうか。


 ひっしに、魅力的な、女性になれるように、努力した。それでも。彼にとって私は、女ではなく、近くをうろつく小動物の類い、なのか。


「応援してますよ。うまくいきますように」


 彼。私に、優しく声をかけてくれる。その目も、どこか困惑して、直視しない感覚。彼の目のなかに、私は、もう。映らないのかな。


 彼の隣にいたい。


 そう思う、だけなのに。


 彼は私を見てくれない。


 月が、にじんだ。眩しすぎる。


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