白い頬、眩い月

春嵐

白い頬.

 彼女の頬が、好きだった。


 すぐ、表情に出る。うれしかったり、かなしかったり、そういう機微が、頬っぺたの朱とともにあらわれる。


 彼女の頬。


 白く塗り固められて、息苦しそうにしている。


「メイク。似合ってる?」


 彼女が笑う。頬の朱さを見ていたい。そう応えるのが本音だけど。


「似合ってるよ。大人っぽく見えるし、綺麗」


「ありがと」


 彼女の表情。読み取れない。うれしそうな、かなしそうな、そんな感じ。


 頬でしか、彼女のことを分かってやれない。


 そんなだから、彼女を人に取られるんだ。


「今日もメイクをばっちり決めて、好きな人のところへ、ですか?」


「そうです。今日こそは」


 彼女。ガッツポーズ。


「応援してますよ。うまくいきますように」


 そのガッツポーズに、自分の拳を軽く合わせた。


 誰かのための、白い頬。

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