38話 大切な人
なんでもできる和人、いつも優しくて頼もしくて…そんな和人を振り回しても大切にしてくれるのは自分だけだと勘違いして。
和人を通して知り合う友達とは上手く行かなくて、それでも和人は私を選んでくれる。
和人と別のクラスになって唯一和人を通さずにできた友達に舞い上がって…そんな友達に和人との関係をイジられるのが恥ずかしくて意地張って。
和人と付き合っていないと言えばクラスの男子たちも関わるようになってきて…たまに告白されて。
和人無しで関わる世界に居心地の良さを覚えていた。
和人を疎ましく思っていた。
いつも隣にいるのが当たり前だと思っていたから。
和人は私が好きだからって。
そんなものは勘違いと知らずに…
結局は信頼していた友達すら和人が目的だった。
「きっと和人は知ってたんだな…」
あの時の和人の忠告を今になって思い出す。
あの時は和人の言葉で頭に血が上って理解できなかったけど今ならわかる。
あの和人が何も知らない他人を悪く言う訳が無いのに。
「でももう少し言い方あったよね…?」
そう思ってしまうのは私が悪いのだろうか?
いや、悪いんだろう。
あの時のお互いの雰囲気を思い出せば何を言っても聞くわけがないと思われても。
実際聞かなかっただろう。
「長風呂しちゃったな。」
私は思考の海から浮上した。
風呂から上がり、返信は期待して無かったが確認だけする。
「そうだよね。」
今更都合の良い話なんだ、わかっていたこと。
「私ってバカだな...」
大切なものは失って気付く。
そんな気付き方したくなかったけど、もうそうなる手前まで来ている。
でもまだ和人は遠くに行っていない。
せめて仲直りだけでもしておきたい。
「自分勝手かもしれないけど...」
笑いあったあの日が懐かしい。
「もう意地はらないから。」
すぐ側にあった温もりは無くても。
「素直にあなたと話したい」
あなたが誰かと笑いあっているのを見つめるだけなのはもう嫌だ。
「たくさん傷付けた癖に嫉妬しておかしくなりそうなくらい我が儘だけど」
この気持ちは嘘じゃないから。
「やっぱり大切で、大好きな人だから。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます