35話 二年ぶりに揃う日
「ねぇ和人くん、また和人くんの家にお邪魔しても良い?」
お昼休みにいつものメンバーでご飯を食べていると美鈴が提案してきた。
この一週間放課後は毎日このメンバーで居る。
なぜとは言わない。
だけど…
「ごめん、今日は駄目なんだ。用事があるから」
申し訳なく思うが断るしかない。
「ん?なにかあるのか?手伝えることがあるなら手伝うぞ?」
「わ!私も!」
いつも自分から手助けしようとしてくれる優に美鈴も一緒になって聞いてくれる。
明美は何も言わないが気にかけている様に静かに俺を見ている。
もしなにかあれば嫌な顔せずに黙ってついてきてくれるのだろう。
こんなにも良い友達に恵まれて少し鼻の奥がツンとするが俺は安心させるように笑う。
「大丈夫だよ。別に作業するわけじゃないから。ただ父さんと行くところがあって」
「…あ、そういえばこれくらいの時期だったか」
優は小さく呟く。
しかし美鈴は聞こえていたようで首を傾げる。
「…なにかあるの?」
明美が怪訝そうに聞いてくる。
「あ~っとな~」
優はつい言葉に出ていたことに気付いてばつの悪そうにする。
「今日は母さんの命日なんだよ。だから墓参りにね」
俺はなるべく暗くならないように微笑みながら言う。
「あ…そっか、ごめんね」
けれどやはり美鈴はシュンとしてしまう。
「お墓は移動しないのか?」
優は話を掘り下げた。
「うん、一応家族ぐるみで付き合いのある人が居るからそのひと達が掃除とかしてくれることになってる。父さんも母さんを残していくのは躊躇っていたけど引っ越し先にずっと居るとも限らないからね」
母さんの墓は両家の墓には入っておらず、母さんだけが入っているお墓だった。
「そっか、てことは年に一度はこっちに来るのか?」
「そうだね、まぁ、父さんの仕事の都合もあるとは思うけど余程の事がないかぎり命日には来ると思うよ」
「…そか、まぁ年一くらいだとしても会えるんだな」
どこかほっとしたような優に俺も笑ってしまう。
「まぁ、夏休みとかの長期休暇でも遊びに来るかもだしもう少し会えると思うよ」
「そのときは絶対遊ぼうね!!」
美鈴が勢い良く身を乗り出して来たので俺はさらに面白くなって笑ってしまった。
美鈴は恥ずかしそうに顔を赤くするけど明美や優も吹き出して結局四人で笑ったのだった。
「ただいま」
「お帰り、和人」
家に帰ると黒を基調とした余所行きの服装で父さんが出迎えてくれた。
「どうする、そのまま向かうか?制服なら変でもないだろ」
「いや、1度シャワーを浴びるよ。制服も新しいのに着替える」
「そうか、わかった」
俺は手早く体を洗い髪を乾かして制服に着替える。
リビングに向かうと父さんがコーヒーを入れていてくれた。
「宏樹達も一緒に行くみたいだからもう少しゆっくりしていよう」
「有り難う、父さん」
コーヒーを飲む父さんが格好良く見えて飲むようになったもののブラックではまだ飲めなくてカフェオレで飲む。
こうした父さんと二人の時間は毎年のことだった。
「…久々だな五人で
「五人…」
父さんの呟きに俺は驚く。
二年程来ていなかったのに…どういう風の吹きまわしなのだろう。
「渚…」
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