33話 裏に抱えた感情


「おっはよ~渚~」

「はよ~」

美紀と杏花が登校してきて軽く挨拶してくれる。

「…おはよう。美紀、杏花」

「…どしたの~?最近元気無いじゃん」

「…」

「そんなこと無いって、ちょっと昨日夜更かししただけ」

美紀が心配して聞いてくれる。

そんなにわかりやすい程だったんだ。

「そう?だったら良いけどなにかあったら相談しなよ?」

「…それよりさ!」

美紀は笑いながら軽い空気で話を終わらした。

杏花は少し眉を潜めてたけど話題を変えて何時ものように雑談に入っていく。

またいつもの日々が始まる。

和人と居れる時間はもう少ないのに…





「今日の帰りどっか寄って帰る?」

「今月マジでもうお金無いしな~。前もパフェ食べに行ったじゃん?あれ量の割に高かったし」


私たちは教室でお昼ごはんを食べていた。

今頃和人は中庭で食べてるのかな…あの娘と…


「ちょっと渚!聞いてる!?」

「あ、ごめん。ぼーっとしてた」

私はすぐに笑顔を取り繕う。

「ねぇ、いい加減に教えてよ、何があったの?」

「…」

美紀が真剣な表情で聞いてくる。

杏花も黙って眉をひそめていた。

「なんでもないって」

「渚!」

「ごめん、さっきの理科室に忘れ物あったから行ってくるね」

私は下手な言い訳をして食べかけの弁当を置いてから出ていった。






「はぁ、最悪だな」

帰りのHRも終わって二人はすぐに教室を出ていった。

私はお昼での出来事以降二人とはギクシャクしてしまい全然話せていなかった。

美紀があんなに心配していたのに…

でも二人に話すのは躊躇われた。

あれだけ二人の前で和人を拒絶しているところを見せていたのに和人が居なくなるからショックを受けているなんてとても恥ずかしくて…

「そんなの言えるわけ…」

そう思って私は気付く。

まただ、また私は自分の体裁を気にしてる。

私はまた和人にしたことと同じことをしようとしている。

「…謝らなきゃ」

謝ろう。

そして二人に相談しよう。

じゃなきゃ私はまた大切な人を失う。

話すのは恥ずかしいけど自業自得だし、きっと優しい二人なら受け入れてくれる。

「行かなきゃ、もうあんなことは嫌だ」

そうして私はいつも三人で溜まり場にしている使われていない空き教室に向かう。


私たちの教室の上の階にある教室の前まで行くと二人の話し声がした。


謝らなきゃ…

そう思ってドアに手をかけたとき…

「ほんと渚ってバカだよね~」

「…え?」

その一言に私は動けなくなった。

「ちょっと杏花!」

「なによ、あんただって本当はそう思ってたんでしょ?」

「そんなこと!」

どこか庇ってくれているのは美紀みたいだ。

「いい加減に良い子ぶるのやめたら?あんたも文句言ってたじゃん」

「…こんな大声で、もし渚に聞かれたら…」

「どうせもう今日は来ないわよ。あんな我が儘で臆病なやつ」

嘲笑を交えた声の主は杏花だった。


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