27話 後輩襲来

「あっ…」

優達とゲーセンで遊んだ帰り、優と二人で帰りながらケータイを確認するとそこには不在着信とメッセージが届いていた。

相手は渡辺だった。

「どうした?」

優は俺の様子を見て心配そうに声をかける。

「…何でもないよ」

俺はスマホをしまって首を振るが、

「…渡辺さんだろ?」

優は少し気まずそうに聞いてくる。

「優は何でも知ってるんだね」

俺は苦笑しながら言う。

「渡辺さん関係で悩んでる時、大体あんな顔してるからな」

「どんな顔?」

「どんなと言われても…」

どうやら優にはわかる特殊な顔があるようだ。

「優には敵わないな~」

いつも心のうちを見透かされている気がする。

渡辺よりも付き合いは短いはずなのに優の方が俺を理解してくれているような気がして嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになっている自分に浮かべていた苦笑を強める。

「まだ渡辺さんのことが好きなのか?」

優の問いに俺は首を横に振る。

好きではない、好きなわけがない。

「でも気にはなってるんだろ?」

「…まぁ幼馴染みだからね」

あくまで付き合いが長いから気になるだけ、それだけだ。

「本当だったら気にもならないほど無関心になるもんだと思うけどな。俺は渡辺さんみたいな幼馴染みの女の子がいないからわからんけど。まぁ俺としては美鈴と和人がそのまま付き合ってくれりゃ万々歳だな」

「優は俺の恋愛事より自分の恋愛をにしろよ…もう平坂先生は諦めたのか?」

「まさか!あんな好い人諦められるか!!」

拳を握りしめ力説する優に俺はドン引きする。

「…優が成人する頃にはあの人30代くらいだぞ?」

「愛に年齢なんて関係無いのさ!!」

何を言っても熱く返してくる優に俺は説得を諦める。

「そうかい、まぁ応援するよ」

俺は暖かい目で優を見守る事にする。

「さしあたっては二年の最後に気持ちだけは伝えとかないとな!!」

「そこは中学卒業とかじゃないんだな」

「他の誰が狙ってるかわからないんだ!先手を打って俺を意識させて俺が成人するまで悶々とさせ気づけば30代!!結婚に焦りを見せたときに成人した俺がもう一度告白して結婚に飢えている先生をGETする流れだぜ!!」

ドヤ顔で自信満々に言ってくる優に俺は前に聞いたことを思い出す。

「そういえば前に言っていた後輩はどうしたんだ?なんか懐かれたんだろ?」

「…夏美(なつみ)の話はしないでくれ…」

優は急にげっそりとした顔で言ってきた。

「あっ!せんっぱ~い!!」

後ろから元気で明るい声が聞こえてきた。

そして優の顔が一気に青くなった。

そんな優の背中に抱きつくのは茶髪ショートカットの健康的な女子だった。

「先輩捕まえた~」

「ちょ!止めろ!抱きつくな!!汗くさいんだよ夏美!!」

「誰が汗くさいんですか!女の子はどんな時も良い匂いなんですよ!!」

「部活あとは流石に臭いだろ!!」

「そんなことありません!!制汗スプレーもちゃんとしてきたんですから!!」

突然抱きついてきた女子と顔を真っ赤にしながら言い合う優に僕は今話した後輩がこの女子なのだと理解する。

「和人先輩ですよね!初めまして!!中野夏美(なかの なつみ)です!お見知りおきを!そして先輩借りていきますね!!」

そう言って後輩、夏美は優を引っ張っていった。

「ちょっ!引っ張るな!!和人悪い!また明日な!!」

嵐のような後輩の登場に俺は少し呆気にとられつつも手を振って優を送り出した。



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