25話 小テスト
父さんは今日の引っ越し作業が無くなったから渡辺夫妻の家でゆっくりすると言っていた。
帰ってきた時に居なかったら来いと言っていたが夕方には帰ると言っていたしそろそろ帰ってくるだろう。
駅での一件もあるし行く気にはなれない。
ご飯は食べてくるって言ってたし夕飯はいらないだろう。
「疲れたな」
今は何も考えたくない気分だった。
自分の部屋に入ってベッドに倒れ込む。
思考を止めようとしても思い出すのは手を振り払った時の渡辺泣きそうな顔。
その顔が幼き日の…俺が好きだった渚の顔に被って見えたことだった。
「今更…」
何を後悔するのだろう。
何故渡辺はあんな泣きそうな顔をしてたんだろう?
渡辺の考えてることがわからない。
屋上の時の言葉は嘘には思えなかった。
渡辺は言った、私たちはもう子供じゃないと。
いつまでも変わらないものなんて無いんだと言われているようだった。
隣に俺はいらないのだと。
「俺が邪魔か…」
とても言いすぎたから許してなんて言葉で許せるほど俺は良い子ではないようだ。
そして渡辺を前にすると感情が制御できなくて話したいことも話せない自分に腹が立つ。
丁度睡魔で程よく頭に靄がかかるように眠気が押し寄せてきたからそのまま意識を手放すことにした。
-次の日-
「さて、休み前に小テストすることは伝えたな。わかっていると思うが私の授業では小テストの回数は少ないがそれなりに成績に反映が強い…勉強してこない命知らずはいなかったと思うが今回のテストに関しては満点はいないと思っている。」
平坂先生の言葉に教室の皆の顔が青ざめる。
「あぁ、別に安心しろ。今回のテストは60点満点だが、基礎、応用、特別問題の20点ずつの配分で、基礎、応用の40点が実質満点みたいなものだ。後の特別問題は特別加点問題だが、やらなくていいと言う気持ちで取り組まないことだな。まぁ、今のお前たちでは点数も取れるかわからんがな」
平坂先生は嗜虐的な笑みを浮かべて皆を見渡した。
そう言うとこですよ、婚期が遅れるのは。
まだ若いけどさ。
そんなこと考えていると何故か先生に睨まれた。
俺はそっと視線を外す。
視線を外した先では優が平坂先生の顔を見てとろけた顔をしていた。
「…では配るぞ。」
今回の小テストでは数学の時間を全部使って行う。
おそらく特別問題を解く暇がなかったとは言わせないつもりなのだろう。
先生も鬼ではない。
わからなくてもちゃんと途中式や解こうとした意欲のある書き込みなどがあれば多少は評価してくれる先生だ。
的はずれなときはかなり辛辣なコメントを残されるが…
「始め!」
先生の合図と共にテストが始まる。
さっと特別問題に目を走らせる。
そして俺は思考がフリーズする。
これ…習ってない範囲じゃね?
どうやら俺は少し小テストと侮っていたようだ…
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