24話 決別

「あ~、つかれた~」

明美と美鈴が帰るために駅へ向かう道、そんなに遅くない時間だが俺は駅まで送ることにした。

「…あの程度で音を上げてたら良い点数なんて取れないわよ」

「そうだけどさ~」

「でも今回は良い点数取れるんじゃない?」

「…目標に届かなきゃ意味ないもん…」

美鈴が少し顔を赤くして拗ねたように言う。

美鈴の言葉に俺も顔が熱くなってしまう。

「美鈴のデートがかかってるからって手を抜いたら許さないから」

明美の鋭い視線に少し汗をかく。

「わかってるよ。まぁ、負けるつもりは無いから」

「っ!絶対泣かす…」

テストで負けただけで泣かないけどと心の中で思いつつもそれは言わずに自然と口角が上がる。

そして駅に着いてホームへ入っていく二人を見送る。

そして帰ろうと思い後ろを振り返るとそこには渡辺が俺を睨み付けていた。

「随分楽しそうね」

「俺になにか用?」

渡辺の声を聞くだけで不快な気持ちになり、また心の底からドロドロとした黒い感情が沸き上がってくる。

あぁ、駄目だ。このままだと自分を制御できなくなりそうだ。

「私への当て付けのつもり?それとも和人以外の人とは仲良くするなってことだったの?」

一瞬渡辺が何を言っているのかわからなかったが、以前の忠告の事を言っているのだと気付く。

しかし今の俺にはどうでも良かった。

早く渡辺を視界から消したかった。

「お前が俺の忠告をどう受け取ろうが勝手だからさ、いい加減俺に関わるのやめてくれない?」

「…は?何よそれ」

渡辺は眉を寄せて言う。

「お前が言ったんだろ?幼馴染みだからって付きまとうの止めろって。もう俺お前と関わる気無いからさ、お前も関わってくんなよ」

どんどん俺の心が醜くなっていくのがわかる。

「そ、それは…」

渡辺はバツの悪い顔で目をそらす。

「だからさ、もういいだろ?」

「ま、まって!」

俺は渡辺の横を通りすぎようとするが、右手を捕まれる。

「わ、私も言いすぎたからさ、謝るから!だからもう…あの二人と関わらないでよ」

「…は?何言ってんだお前」

「だってあの人前に和人に告白した人でしょ?どうせ見た目が良いから告白しただけで和人のこと何も知らないんだよ。だからさ、情けで仲良くしてるだけなんだろうけどもうそんなの止めてさ!前みたいに私と…」

「黙れよ…」

俺の低い声に渡辺の体が震えたのがわかる。

「お前に俺の何がわかる?美鈴の何がわかる!?ふざけんのもいい加減にしろよ!!」

周りに人がいるにも関わらず俺は怒鳴り声を上げる。

渡辺に怒鳴ったのは初めてだ。

いつも喧嘩するときは些細な言い合いくらいで怒鳴ったりせず、結局俺が謝りにいってお互いに謝って仲直りがいつもの流れだった。

だけど今回渡辺はそんなのでは許されないことを言った。

許せるわけがない。

「お前はもう幼馴染みでもなんでもない。ただの他人だ。」

俺は渡辺にそれだけ言うと手を振り払って帰る。


『ねぇ和人、私素直になれなくて謝れないときもあるんだけど…それでも一緒にいてくれる?』

『うん!僕と渚はいつまでも一緒だよ!』

いつだっただろう?そんな約束したのは。

もう覚えてないや。

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