渡辺渚side 幼馴染み 前編

幼馴染みの水瀬和人は私にとって自慢の幼馴染みだ。

幼い頃から良く一緒に遊んでいて小学生とかにありがちな男の子たちからのいじめから守ってくれて。

うちの両親と和人の父親は仲が良く、母親は元々体が弱かったらしく和人が産まれて直ぐに亡くなっていた。

だから和人はよく私の家に遊びに来て夕飯等を食べていったり、私の母親と一緒に和人の家に行って遊んだりしていた。

だから最早私たちは家族同然だったんだ。

いつも一緒にいるのが当たり前で、支え合うのが当たり前で…

幼いながらもこれからもずっと和人と一緒にいるんだと信じて、幼馴染みにありがちな将来の結婚の約束もして。

これが初恋だとわかって…

でもお互い成長するにつれ私の心に変化が起き始めていた。

学校で仲の良い友達が出来て、段々クラスが女子と男子のグループに別れ始めるようになり、男子と仲良くしているとからかわれるようになって。

それが何だか恥ずかしくなり始めて。

中学生になる頃には周りの友達に和人の仲をからかわれるとムキになって。

和人に八つ当たりするようになって。

それでも会いに来てくれる和人に内心は嬉しくって。

でも素直になれなくて…

いつかは素直に謝ってまた仲良くなろうと思っていたのに…私はある場面を目撃してしまう。

放課後に和人が屋上へ向かうのが見えたのだ。

その時私は一人だったからちゃんと話し合おうと思って屋上に向かった。

しかし屋上のドアを開けようとすると和人が誰かと話ししているのが聞こえた。


「和人君!始めて見たときから好きでした!付き合ってください!」

それは幼馴染みが告白されているところだったのだ。

私は一瞬体が固まってしまった。

「…ありがとう。」

和人がそう言ったとき私は駆け出してそのまま女子トイレに駆け込んでしまった。

「嘘、嘘ウソ嘘うそうそうそうそ…」

私は頭の中が混乱してひたすら呟いていた。

そんなわけがない。

和人は私が好きなんだ、結婚の約束だってした。

和人がOKするはずがない。

私は自分にそう言い聞かせて落ち着く。

そして私は話を最後まで聞いてないからと無理やり納得させ家に帰った。

和人に見つからないように。


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