第25話 作戦会議

「入学式まで、打つ手なしか」

 

 俺はモニカを膝の上に乗せて、抱きしめながら言った。

 一言いわせていただければ、モニカの抱き心地がすごくいい。

 この両手にスッポリと収まる感じ。それに、柔らかくて、すごくいい匂いがする。何でモニカはこんなにいい香りがするのだろうか? 不思議だ。

 それに、胸が、おっぱいが大きいです。

 出会ったころから大きくなりそうな予感はしていたが、まさかここまでたわわに実るとは思わなかった。そう言えば、カタルーニャ夫人も大きかったな……。遺伝だな、これは。

 

「あの、レオ様。レオ様の秘密は他に誰が知っているのですか?」

 

 モニカが上目遣いで聞いてきた。まずい、俺の理性はいつまで持つかな。

 

「ああ、モニカ以外では、ピーちゃんとサラだけだね」

 

 モニカが目を見開いて驚いた。

 

「まあ! サラも知っていたのね。どうして教えてくれなかったのよ」

「申し訳ありません。正確にそのことを知ったのは、この間、レオンハルト殿下とお会いしたときだったのです」

「え? あのときレオ様と話をしたのは、私のスリーサイズの話だったって……」

「ほう?」

 

 俺は興味深そうにモニカを見た。気になる。モニカのスリーサイズが、気になる。

 

「れ、レオ様! どうしてそんな獣のような目をなさっているのですか!」

 

 モニカが恥ずかしそうに、両手で自分の胸を隠した。

 くそう、そんなことされると、余計に気になるぞ。

 

「冗談ですよ、モニカ。サラには残りの攻略対象の情報を提供してもらったのですよ。残念ながら、まだ手の出しようがなかったのですがね」

 

 俺が苦笑すると、モニカが話を引き継いだ。

 

「確かに、残りの二人の攻略対象はDLCで追加されたキャラクターですからね。私達が二年生にならないと、出現しないので、手の出しようがありませんわね」

 

 なるほど、二年生からの追加コンテンツだったのか。それじゃあ、二年生になるまでは放っておいてもいいのかな?

 

「いっそのこと、別の学園に通えたら良かったんですけどね」

「私もそれを考えましたわ。でも……」

「俺達のような高位貴族は、みんなまとめて王立学園に通わないといけないんだよね~。人脈作りや、安全面を考えると仕方がないのかも知れないけどね」

 

 やれやれ、とため息をついた。学園さえ変更することができれば、悩みのすべてが解決するのに。

 

「教育水準もトップですので、高位貴族が通わないといけないのも当然かも知れませんけどね。勉強について行けるか、心配ですわ」

 

 モニカがため息をついた。

 なるほど、なるほど。これはいいことを聞いたぞ。

 

「それならば、王立学園の入学式までの間、一緒に勉強しませんか? 幸いなことに、ここには学園の教師以上の先生がたくさんいますからね。変わった先生も多いですが、それはそれで面白い授業をしてくれますよ?」

「本当ですか? それならば、私もご一緒させていただきたいですわ」

 

 モニカが目を輝かせて答えた。本当に真面目で素直な娘だなぁ。やっぱりこの子に悪女は似合わない。

 

「それでは決まりですね。モニカと一緒なら、もっと頑張れそうですよ」

 

 こうして俺達の勉強会が始まった。途中からは、アル、ギル、ブルックのいつものメンバーが加わり、一層にぎやかになった。

 驚いたのは、モニカの記憶力と理解力の高さだ。これがチートなのか、元から持っている能力なのかは分からなかったが、これだけの能力があれば、未来の国母としては破格の性能だ。すでに将来が楽しみだ。

 


「ずいぶんと楽しそうね」

 

 ときは夕食時。両親と共に食卓を囲んでいると、お母様がそう切り出してきた。

 

「いいことではないか。将来の妻と、側近達との仲を深めておくことは、とても良いことだぞ?」

「それはそうですけどね。でも良かったわ。モニカさん一人だと、レオンハルトが何をしでかすか分かったものじゃないから、監視の目をキツくしておかなければならなかったのよね。他のみんながいてくれて、本当に助かったわ」

 

 チラリと国王陛下を見て、オホホと笑うお母様。国王陛下はそれを聞いて、すでに視線を明後日の方向に向けていた。

 その様子を見て、どうやら若かりしころに、お父様がお母様に何かしでかしたことがあるのではないか、という疑問が湧いてきた。

 ひょっとして、お母様の監視の目が厳しいのは、国王陛下のせいなのでは?

 

「お母様、冗談もほどほどにして下さい。私の大事なモニカに、そんなことしませんよ」

「まあ! 帰り際にいつもこっそりとキスをしているのに?」

 

 ……どこで見てるんだ、この人は。

 俺は照れ隠しの咳払いをして、国王陛下に聞いた。

 

「ところで、今年、王立学園に入学する新入生の中に、平民出身の生徒はどのくらいいるのですか?」

「ああ、それが、今年はやけに人数が多いらしいぞ? どうやらお前が学園に通うのに合わせて、万が一、に期待している者が多いらしいな」

 

 アッハッハ、と国王陛下は笑った。う~ん、やっぱりそうなのか。

 

「国王陛下のときもそうだったのですか?」

「もちろん。すでに婚約者がいるというのに、本当に節操がなかったぞ? レオンハルトも気をつけるようにな。女は怒らせると怖いぞ」

「ちょっと、あなた」

 

 その場の空気が一気に下がった。

 一瞬にしてその場を支配したお母様の力量に、思わず舌を巻いた。

 お父様はすでにお母様の尻の下。

 何だか将来の自分を垣間見たような気がした瞬間だった。

 俺も気をつけないといけないね。

 しかし、平民出身の生徒はいつもより多いのか。これは益々厄介なことになりそうだ。早いところヒロインをマークして、その動きを監視しておかなければならないな。

 後でお母様から優秀な暗部を借りることにしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る