第11話 守護霊獣よ、来たれ!②
翌日からその古い魔導書を読み耽った。
古語で書かれていたため、とても難解であり解読は困難を極めたが、モニカのために、との思いが俺を突き動かしてくれた。
本と格闘すること数日、ようやく召喚魔法の全貌が見え始めた。
どうやら召喚する使い魔の種類は二種類あるようだ。
魔獣と霊獣。
魔獣は魔物を呼び出し、使い魔にしたもの。一方で霊獣は精霊を呼び出し守護者としたものだ。
おそらくは、というか、間違いなく霊獣の方がいいな。
魔物を使役するのはモニカには似合わない。
精霊は神秘的で美しい存在であると、どの本にも書いてあった。
これでモニカの使い魔は霊獣に決まりだな。
しかし、いくら何でもいきなりモニカに召喚魔法を使ってもらうわけにはいかない。
万が一のことがあってはならないので、まずは自分で試すことにした。
召喚魔法に必要なのは魔方陣と、魔力。
魔力は自分の持つ魔力だけでなく、周囲の魔力も影響するらしい。しかし、魔力が濃く漂っている場所が分からなかったので、とりあえず魔力がたくさんあるであろう魔法訓練所へと向かった。
魔法訓練所では、今も多くの魔法使い達が魔法の訓練を行っている。ここなら周囲の魔力もたくさんありそうな気がする。
俺は人目を避けるため、魔法訓練所の中でも奥まった場所へと移動した。
ここなら大丈夫だろう。さて、何が出るかな?
召喚魔法は召喚してみるまで何が現れるかは分からないという代物だった。
そのこともあって、モニカに使わせる前にどうしても実践しておきたかったのだ。
「よし、魔方陣はオーケー。さて、鬼が出るか蛇が出るか」
体が僅かに震えている。どうやら柄にもなく緊張しているらしい。大きく息を吸って、吐いてを繰り返し、心を落ち着けた。
よし、行くぞ。
「我が声に応えよ。守護霊獣よ、来たれ!」
俺の声に応えるかのように、魔方陣が輝き出した。
その光は段々と大きくなり、一つの形を作り出した。
燃え上がる炎、眩い閃光。その姿は鳥のようだ。これはフェニックスだ! 有史以来、何度も本で語られている伝説の存在。実物に会える日が来るとは思わなかった。
【私を呼んだのはあなたですね。いかなる要件ですか?】
まるで頭に直接語りかけているような声な響いた。
人間ではない、大いなる存在であることを瞬時に理解した。
それと同時に、俺が特に意味もなく呼び出したことも理解した。
「えっと……」
【まさか、特に意味もなく呼び出したわけではないでしょうね?】
怖っ! 鳥の表情が分からないから更に怖い!
怒らせると怖いことになりそうだと判断した俺は、ことのあらましをフェニックスに語った。
【なんと、婚約者のために自らを実験台にするとは。ズビビッ】
話を聞き終えたフェニックスは鼻をすすった。どうやら感動しているようである。とりあえず怒られなくて済みそうなので助かった。
【分かりました。今日より私はあなたの守護霊獣となりましょう。さあ、契約の証しとして、私に名前をつけて下さい!】
鼻息も荒く、フェニックスが迫ってきた。
え? 名前をつけるの? そんなこと、本には書いてなかったと思うんだけどな。
名前、名前……そうだ!
「ピーちゃん、名前はピーちゃんにします」
【え? あ、ああ、分かりました】
なんだか釈然としないような返事が返ってきた。もっと格好いい名前にした方が良かったかな? アレキサンダーとか、ラグナログとか? まあ、いきなりだったし、仕方がないね。モニカには先に名前を考えておくように言っておこう。
これで、準備は万全だ。後はモニカに呼び出してもらうだけだ。
快調に走る愛馬に跨がり、俺は森の中を進んだ。俺の前にはモニカが座っており、その体を、馬から落ちないようにガッチリと両手で支えている。
俺の胸元から、モニカが俺にしがみついた状態で聞いてきた。
「レオ様、本当にやるのですか?」
「もちろんです。これはとても大事な儀式なのですよ。モニカは聖女になり、誰もが認める存在になりました。ですがその分、良からぬことを企む者達が集まり易くもなっているのです。私はその魔の手から、いつでもモニカを守るつもりでいますが、まだ四六時中一緒にいることができません」
俺は一旦言葉を切った。いつもモニカと一緒にいることができれば、いつでも守ってあげられるのに。
結婚するまで一緒に居られないのが残念でならない。
「それで、それまでの間は使い魔に守ってもらうということなのですわね?」
「その通りです」
今、俺達は王都から程近いところにあるキリエの森にやって来ている。
ピーちゃんに「どこかに魔力が溜まっている、もしくは滞っている場所を知らないか」と聞いたところ、このキリエの森に魔力溜まりがあるという見解を示した。
しかも悪いことに、この魔力溜まりというのは魔物の氾濫を引き起こしたりする厄介な代物らしい。
そんなわけで俺は、この魔力溜まり付近でモニカに守護霊獣の召喚を行ってもらい、強い霊獣のゲットと、魔力溜まりを解消する、という一挙両得作戦を決行することにしたのだ。
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