「夢の続きを、僕は雨天に綴る。」
〇本文URL
https://ncode.syosetu.com/n0181gl/4/
〇読みながら感想
ポエミーなあらすじですね。
雨模様の毎日、というからには6月ごろの話でしょうか。
それでは本文に入っていきます。
物語は梅雨のじめっとした季節に転校生が入ってくるところから始まります。
浮きたつ友人とは違って、いかにも興味なしの態度を取る主人公。
そのまま場面が切り替わり、下校して帰宅するシーン。
>優柔不断な曇天は、ついに泣き出した。
擬人化ですね。「泣き出す」というのは大雨を示してるのかと最初思いましたが、
>いよいよ雨音が強くなってきた。
ああもう、煩いな。
と後の文であるので、雨の降り始めを表現していたようですね。
細かい指摘にはなりますが、ただ「泣き出す」だけだと、人によっては赤ん坊の騒音のような泣き声を想像しますし、あるいは顔を抑えてしくしく泣く声を想像する人もいるかもしれません。
もう少し、静かな雨の入りを連想させるようなワードを選んだ方が情感があるかな、と思います。
とはいえ比喩は人の好みが分かれる部分なので、参考程度に留めてください。
>これは夢か。
そうであるとしっかり理解できる。明晰夢というやつだろう。
このお話は夢と現実で視点が行き来するシーンが二度あります。
タイトルにある通り、「雨」をトリガーとして明晰夢を見ているのだと思います。
この視点の切り替わりの多さは特色でもありますが、同時にぶつ切り感も生んでいますね。
一つ目の夢は、アルバムの中でしか見たことがない制服姿の若い母と、何故か今日転入してきたばかりの女子・白河と登校する夢。
二つ目の夢は、今から約一月後、七月のある日に自分が白河に向けて手紙を書いている夢。
この手紙が、あらすじにもあった「僕は、あなたのことが──」で留まっている手紙であり、その先に何を書いたのかは読者である我々同様、主人公にも分かりません。
結局その先を綴ることができないまま、夢は終わってしまうのです。
〇気になる点
「雨」であったり、最後の胸を押さえて倒れ込むシーンなど、直接的に感情を書くのではなく、情景や動作に登場人物の心情を乗せようとする試みが際立っています。
僕も官能物書きの端くれなので、ちょっとした動きや比喩表現に感情を含ませる手法は好きです。
ただ、何度も何度も回想シーンを挟まれると、「今読んでいるのはどっちの話だっけ?」と読者を惑わす危険性はあると思います。
また、一つ目の夢のシーンは正直噛み砕くのに時間を要しました。
作者としては、いわゆる「若かりし頃の母の父との思い出」と「転校してきたばかりの少女が出てきた驚き」の二つの要素をダブらせることに、今後の展開と絡めた狙いがあるのだと思います。
しかし、結構読みにくいです。
主人公の名前が明かされてないので、ひょっとしたら「シュン」と呼ばれる文字が入ってるのかもしれませんが、そうだとしても分かりにくかったです。
>母親然とした少女同様、制服をまとって。
強いて挙げるなら、ここが誤読の原因かなと感じました。
「然とした」というのは、「そのもののような」という意味であることは当然ご存知だと思いますが、その後「少女」にかかってしまうと、一瞬どっちがどっちだか分からなくなるんですよね。ここでは二人とも少女なので。
最初、「白河が母親のような態度取ってるの?」と読み違えました。
〇総評
タイトルにある通り、「夢」と「雨」、二つのギミックを活かして情感のある作品を目指しているのだと伝わってきました。
ところどころの表現でつまづく部分があったので、もし僕以外にも同じ意見が複数出た場合は気にかけてみてください。
僕だけだった場合は単に僕がアホなのでスルーしてください(笑)
ありがとうございました。
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