「妹に殺されるのは俺だけでいい」

〇本文URL

https://ncode.syosetu.com/n0181gl/10/


〇読みながら感想


 あらすじを拝読する限り、バイオレンスでバトルもあるヒューマンドラマ、といったところでしょうか。

 さっそく読んでいきましょう。


 始まりはあらすじの最後からそのまま続く形で書かれていますね。

 個人的には、


>だから冬也は、平凡に生まれたことに感謝をしながら高校二年の夏休みを満喫していた。今日も仲の良い妹と買い物の約束があるために早起きをして、朝食を食べ、妹が欲しい化粧品やら新しい夏物の服やらの話を聞き、なんとなくつけたテレビから流れるニュースを聞き流しながら準備を始め……


 ここの文章の流れが好きだったので、具体的な台詞込みで感情移入できるのが読みたかったなと思います。



 左手を切り落とされ、激痛に苦しむ主人公に対し、妹は何かを告げようとしますが、寸前で力に呑まれてしまいます。

 そこに警察官が乱入、「異能」同士のバトルへと発展します。



 このシーン、警察官3人のキャラが結構具体的に書かれていて、この後も関わっていくキャラなのかなと思ったのですが、一番キャラの立っていた女警官が早々に死んでしまうんですよね。

 かといって全滅するかというとそうではなく、



>鮮血が散る。

 しかし、美丈夫の命は依然としてそこにあった。

 美丈夫は目を見開く。

 目の前に立つ少年が、左手で包丁を受け止めていたのだ。

 「な、ぜ……」

 美丈夫は目線をずらす。

 下に落ちていたはずの左手首とSMRが、彼の腕に戻っていた。



どういう訳か腕がくっついた主人公が、代わりに妹の攻撃を受け止めます。



> ――助けて。誰も、殺したくないよ。

  


 「殺人衝動」に抗う妹のため、立ち上がった主人公にも「不死」という異能が目覚め、自分の胸を刺されながらも深く妹を抱きしめます。



>「妹に殺されるのは、俺だけでいい」



 最後はタイトルを回収して終了です。


 


〇気になる点


 きっとバトルを書きたかったのだろうな、と思いつつも、妹を守ることに主眼を置くなら読者側にも感情移入させる導入が必要だったかなと思います。

 

 本編が始まる前、主人公は異能の暴走で処分される世界にいるからこそ、「平凡であること」を噛み締めていたと思うんです。

 この「当たり前だからこそ気づけない幸せ」というのは共感を生みやすい部分だと思うので、冒頭で少しでもそのことに触れていれば、「異能」側になってしまったことによる落差が生まれたと思います。


 あと、兄弟の本筋に関係ないとはいえ、幸せに過ごしていた家庭なのに、両親の死に1ミリも触れないのは違和感がありました。

 警察側にネームドキャラを出すくらいなら、こちらの方に注力してほしかったですね。



〇総評


 ラストの展開に勢いがあったものの、もう一押し足りなかった印象を受けました。

 「異能」の設定自体は自由度が高く、この先の話が作りやすくなるので良いと思います。


 ありがとうございました。

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