「殺人厳禁暗殺者」
〇本文URL
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〇読みながら感想
アサシンとしてのアイデンティティを封じられてしまった主人公の動向が気になる作品ですね。さっそく読んでいきましょう。
物語はまず、主人公のお仕事シーンから始まります。
>新学期。
という冒頭の書き出しだったので、まず登校シーンや始業式の朝礼に発想が向かい、暗殺の仕事中であることとすぐに結びつきませんでした。
ここ、新学期と明記する必要性があんまりないので、もう少し暗殺任務中だと分かる表現から始めてほしかったですね。
>直後、石鹸の仄かな香りがふわりと鼻腔をくすぐった。
香りのする方を見ると、強風のせいか全開の窓の奥に一人、少女がいた。
俺は突然の出来事にすぐには動けず、また少女も同様なのか、互いに呆然としていた。
石鹸の香りが示す通り、風呂上がりなのだろう。陽光を紡いだような黄金の長髪がわずかに湿り、磨いたばかりの肌に張りついていた。
華奢な肢体はすらりと伸び、自分より美しいものはないと主張するかのようだった。
一糸纏わぬ姿は開放的で、あまりにも無防備だ。
これは暗殺対象の吸血鬼女子の描写なのですが、やはり新学期からこの文脈だとラッキースケベか何かだと思います。
もしかするとあっさり始末することで驚きを与える狙いだったのかもしれませんが、中々文脈が繋がらず理解に時間がかかりました。
お仕事終了後、場面は切り替わってギルドに呼び出される主人公。
学生を兼業した裏稼業といったところでしょうか。
>「まぁいいわ。依頼はとある貴族の護衛。受けるわよね?」
「……護衛って。俺、暗殺専門なんですけど」
「断っても良いのだけれど……、報酬は宝貨で一万枚――」
「――受けます!」
こういう金に弱いところを見せるのは人間味があって良いですね。
主人公への親しみが増します。
そしてギルド長からお仕事の解説です。
護衛任務で殺しは厳禁、その護衛対象というのが、
>「こいつは今日、俺が殺したはずだ!」
なるほど、ようやく話の意図が見えてきました。
ヘリオトロープ・ブラッドストーン。
彼女は吸血鬼なのですが、蘇った理由はどうもそこではなく、この世界では失われた存在である『魔法』が関与しているとのこと。
>「この石器時代に! 魔法なんざあってたまるか!!」
俺は叫ばずにはいられなかった。
理不尽を覚えた主人公の叫びで一話終了です。
〇気になる点
最初、「どうして使い捨てで死ぬ女にここまで丁寧な外見描写をするのか」と困惑しましたが、読んで納得しました。ヒロインだったんですねー。
やはり「新学期」の一言が余計だったと思います。
そして僕が起こした読み違いを解消するなら、最初の三行で「その日の朝に殺した女が蘇って、しかも護衛する任務に付くことへの驚き・嘆き」みたいなものを提示して、読者の興味を惹きつつストレートに理解できるようにする等の対策が考えられますね。
後は「石器時代」というネーミングに少し首を捻りました。
機械人の存在など、明らかに進んだ文明だと思うので……
恐らく、現実の石器時代のイメージが先行してしまうせいだと思います。
主人公のキャラクター性と、今後予想されるお嬢様とのドタバタコンビな関係性は好きです。
〇総評
キャラクターの関係性は良いものの、構成にやや難を感じました。
俳句の五・七・五のように、前から順に情報が出されたときに一番効果的な語順は何か? を考えると、もう少し興味を惹きやすくなると思います。
ありがとうございました。
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