「フェアリーフォーチュン・ティーカップ!~有楽内まなかはみんなに勇気を届けたい~」

〇本文URL

https://ncode.syosetu.com/n0183gl/16/


〇読みながら感想


 こちらはあらすじ感想もした作品ですね。

 児童文学は普段書くのとまったく違うテンポ、文のトーンが必要だと思うので気になってました。

 では本文に入っていきます。


>「今日一番ラッキーな星座は───」

 朝ご飯を食べながら見る、テレビの星座占い。

 「スキ、キライ、スキ……」

 隣の席の男の子のことを想いながら花びらを摘まむ、花占い。

 「あーした、天気になぁーれ」

 おでかけ日和になるかわくわくしながら靴を投げる、お天気占い。

 占いでちょっとしたことを知るだけで、今日のことも、明日のことも、きっとうまくいく気がすると思うんだ。



 うおぁ……これまたお洒落な書き出しですね。

 非常にいい掴みだと思います。子供向け魔法少女アニメの冒頭って感じがしますね。


 物語は主人公の女の子の一人称で進んでいきます。

 おじいちゃんの喫茶店という舞台の提示があり、そこであらすじにも出ていたティーカップとの出会いがあります。


> ここは、わたしのおじいちゃんが経営している喫茶店「有楽内珈琲うらないコーヒー」。

 ぐるりと周りを見渡せば、ダークブラウンのテーブルや椅子、木の床、クリーム色の壁紙があって、天井には優しいオレンジ色で店内を照らすシーリングファンライト。

 たまにお客さんが来てカランコロンとドアベルが鳴れば、コーヒーの苦い香りが風に流れていって、知らない名前の音楽が一瞬だけ外のうるさい音にまざりこむ。

 


>きれいなコバルトブルーの色をした、なめらかで手触りがいい箱。

 金具がついているけど……なんかこれ、めちゃくちゃ高そうだよ?

 

>わぁ、かわいい!

 ティーカップの内側にいろんなマークが描いてある!

 ハートにダイヤ、クローバー、スペード。

 手紙と、目と、ベル、ヘビ。

 あ、これ知ってるよ。惑星のマークだ。

 他にもいっぱい描いてあるね?



 3つほどピックアップしましたが、ここら辺の情景描写が上手ですね。

 読者のイメージを掻き立てつつ、くどすぎない感じがいいと思います。


 これらの道具と手のひらサイズの小さな本を元に紅茶占いを試すことになります。

 そしてティーカップを持ち上げて出てきたのが、



>雲の白が眩しい夏の空色の羽に、お月さまのように優しい黄色の頭。

 持ち上げたティーカップの内側から、ソーサーの上に丸くうずくまっているトリさんが出てきた。

 どこから出てきたの、このトリさん!?



 このトリがあらすじにも出ていた妖精テオなんですね。

 まさかトリだとは思わずちょっと驚きました。もっとティンカーベル的な存在かと……。



〇気になる点


 構成的に書籍型の冒頭という印象を受けました。

 このままでも問題は無いと思いますが、もし書き出し祭りでよくある4000字でスタートダッシュをかける型にするなら、情景描写より占いが当たるところまで話を動かすのを優先する手もあります。


 後はおじいちゃんが喫茶店を経営してるなら、紅茶といってもさぞ色々な品種があると思います。その点と「紅茶一杯分」の要素に目を付け、品種によって占いやすい願いが変わるなどのギミックがあっても面白かったかもしれません。

 だいぶRPGのバフ寄りな発想ですが。


 それと、児童書向けとなると、もう少し漢字の割合は抑えめになるのかなと思ってました。ここら辺は僕が児童文学の環境に詳しくないせいもあります。



〇総評


 全体として卒なくまとまっており、大きな不備はなかったと思います。

 反面この作品でなければならない唯一性、つまり「突破力」というものは弱めに感じました。もうひとひねり欲しかったです。

 


 ありがとうございました。

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