「憂いの実写化妨害大作戦~僕の前世は小説の主人公でしたが、今は普通に暮らしたい~」
〇本文URL
https://ncode.syosetu.com/n0348gl/11/
〇読みながら感想
あらすじの時点で、「えっ本の作者じゃなくて本の登場人物である主人公の転生なの!?」と、中々乗りこなすのが難しそうな設定が目を惹いていた本作。
さっそく読んでいきましょう。
物語は次男の銀河が、『ブライト・ライト』の実写化決定に阿鼻叫喚の絶叫を上げているところから始まります。
>「いや、馬鹿っ。俺が見たかったのはアニメーションであって、今回発表されてしまったのは実写だ!そう、実写化だ。俺はこんなのは望んでねぇーんだ!いや、そもそも、10年前に亡くなられた諏訪 千秋先生もこんなの望んでなかったはずだ! 」
ここはやっぱ共感する読者も多そうですねー。
苦い思い出のほうが多いですから……
銀河君はこれで完全に火が付いたのか、「実写化文句あるある」を次々と愚痴り出します。ちゃんとそうなるに至った背景である「好きなアニメを実写でぐちゃぐちゃにされた」も押さえてるので、やはり共感性は高いです。
>正直、もう、この件に関して付き合いたくはない。何故なら、僕は志賀 大和として生まれる前、『カイン・ブライト』という男としての人生を全うし、その記憶を持ったまま、今ココにいるだから。そう、僕は『ブライト・ライト』の主人公、『カイン・ブライト』の生まれ変わりなのだ。
それに続き、あらすじでも明示されていた「物語の主人公から転生」に関する独白が始まるのですが、ここは改行なりダッシュなり、もう少し"タメ"が欲しかったですね。それまでと明らかにトーンが異なる展開なのに、全く同じ文章のテンポで入られると少々味気なく思ってしまいます。
その後の「カイン・ブライトの記憶から来る戸惑い」、ここはさらっと流してますね。4000字の一話としてはこれでいいと思います。
いわゆる価値観の違いから苦労した系の話は後々にも挟めますし、ここは最小限に留める!と取捨選択ができてる点は素晴らしいです。
そして物語は長男・月光の登場によって一気に進みました。
>「銀河も聞いてくれ。クソ右山から『ブライト・ライト』エキストラ出演のオファーが双子に来た。大変腹立たしいが、逆にチャンスだ。大和、北斗、さりげなく妨害して来い! 」
当然大和くんは拒否しますが悲しいかな、兄弟4人中3人が賛成側ではどうにもならない。そのまま前世の自分が主人公の作品にエキストラとして出ることが決定、というところで終了です。
〇気になる点
あらすじの時点はどうなるのか期待半分、不安半分でしたが、結構上手くまとまっていますね。
特に兄弟を一気に4人登場させて動かしつつ、懸念点の複雑な転生事情もとりあえず今後の展開に置いておくことで、予想していたよりずっと読みやすい一話でした。
気になったのはそうですね、共感のインパクトが強いからか、主人公より銀河君の方が目立っていたことでしょうか。やはり4人を動かせてるとはいえ、それぞれの配分にはどうしても偏りが生じてしまいますね。
後はこの先、きっと大和君の胃が痛くなる事案がたくさん起こるのでしょうが、少し字数に余裕があればその「事案」を予感させる伏線を「あのとき、魔王を滅ぼす為~」の辺りに仕込んでおけば、なお良かったと思います。(過去の仲間、付き合った女などの人間関係を匂わせる等)
そしてあらすじラストの「怪現象」、これが最終的に浮いたワードになってしまいましたね。怪現象まで一話に入れてしまうか、もう少し柔らかい表現の方が齟齬はなかったと感じました。
〇総評
前述のややぶっ飛んだ転生事情ながらも、物語の中できっちり共感できるポイントを作り、読者をキープする力量がある方だと思いました。
タイトルのキャッチを更に活かすならば、「主人公の前世が映画舞台」という背景を最初からプッシュしても面白いかもしれません。
ありがとうございました。
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