「君が動けないなら、僕が君を頂上へ連れて行く」
〇本文URL
https://ncode.syosetu.com/n0183gl/17/
〇読みながら感想
さて、こちらでは第二会場の「君が動けないなら、僕が君を頂上へ連れて行く」を 読んでいきたいと思います。
あらすじだけだと、いまいち何が主体なのか読み取れませんでした……
強いて言うならパチンコの玉みたいなのが主役なのかな?と思い本文へと入っていきます。
>僕はタマだった。
球体のタマ。何の突起物もない。色は薄い緑一色。
自分で見たわけじゃない。この世界にもう一人だけ存在する自我、優が教えてくれた僕の見た目。
優は女の子。たぶん僕と同じ大きさの球体。何の突起物もない。色は薄い桜色。
優は僕のことを勇と呼ぶ。
僕は自分を男だと思っている。
……自分のことをソルジャーファーストだと思い込(ry
冗談はともかく、やはりタマが主役なのでしょうか。
読み進めていくと、自分を男と女だと思い込んでるタマが「タワーの頂上」と呼ばれてる場所を目指すため、動く練習を始めます。
>「じゃあ、質問していい?」
「どうぞ、お嬢さん」
「勇は、人間って知ってる?」
「知ってるな」
「人間って、この世界に居る?」
「居ないな」
「じゃあ、何で知ってるの?」
「昔、人間の社会に居たような? 自分が人間だったような?」
「やっぱり? 私もなの」
「転生したのか? 前世の記憶か?」
おっ、ちょっと不穏な雰囲気が出てきましたね。
ただ会話のラストにぱっと「転生」や「前世の記憶」というワードが出てきたのはちょっと違和感がありますが……
自分が人間だったかも曖昧なのに、なろう要素に傾いた知識だけポンと出てくると浮いてるように感じます。
その後も2人(というか2玉?)の禅問答のような会話が続いていきます。
なんというか……あまりにも会話だけで進行していくのと、世界観に上手く入って行けず、しばし置いてきぼりです。
>僕は黙って優に近づくと、黙って軽くとんっとぶつかってみた。
優も黙っていた。
僕はその後も四、五回、優に軽くとんっとぶつかってみた。
優は何にも言わなかった。
ここでようやく、「謎の自我をもつ玉同士が冒険しつつ惹かれ合う恋愛モノなのかな?」と、ジャンルの推定ができました。
この先の階層に何が待つのかという謎を残して終了です。
〇気になる点
正直に申し上げると、もしご依頼の作品でなければ最初の数行で飛ばしていたと思います。ごめんなさい。
読み終わってタイトルを改めて考えると、少しだけエモい文脈を読み取れますね。なるほど、動けない君を連れていくというのはそういうことだったのかと。
ただそこに至るまでの苦労の連続、それを乗り越えてのカタルシスが得られるかというと……何とも言えません。
もしかしたら、推定人類が「タマ」になってしまった経緯には壮大な物語があるのかもしれませんし、残酷な真実も含まれているのかもしれません。
しかし現時点では、「何ら共感性の見いだせない変なタマ」止まり。
これでは読者逃げちゃいますよ。
作品が高速で消費される今の時代、「これから面白くなるかもしれない作品」と「既に面白い作品」なら絶対に後者を取りますからね。
そしてもうひとつ、惜しいなと思ったのはラストで二階を見せなかったことです。
>「二階ってどうなっているのかな?」
「え?」
「私、怖いの。このまま一階に居た方が幸せなんじゃないかって気がして」
ここの会話は読者の期待を煽れるいい流れでした。
何故なら、現実でも危険な冒険をするよりか安定した場所・地位に留まっていたいと思う人は少なくないからです。ここに読者の共感があります。
そしてこの玉たちは、それでも前に進むと決めました。
で、あれば。
ここでガツンと落としてくるインパクトを用意するべきでしょう。
いわゆる「強烈な引き」です。
それがあればまだ読者をキープできたかなと思います。
〇総評
何か壮大なスぺクタルを感じさせる片鱗はあるものの、見せ方があまりよろしくなかったと感じました。
決して「タマが主人公」という独自性が悪い、というわけでなく「意思を持った無機物が主人公」だからこそ取っ掛かりは増やして欲しかったなと思います。
ありがとうございました。
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