第10回書き出し祭り 本文感想依頼まとめ
テンガ・オカモト
「サクラ、歌ってくれよ」
〇本文URL
https://ncode.syosetu.com/n0181gl/11/
〇読みながら感想
さて、トップバッターは第一会場「サクラ、歌ってくれよ」です。
この作品はあらすじ感想でも触れたのですが、やはり書籍公募型のあらすじでしたね。
今回公開された話では三年前に消えたヒロインとの再会が描写されています。
それでは参りましょう。
主人公のハルは路上ミュージシャン。
好きな音楽ジャンルである「ブルース」に強いこだわりがあるものの、なかなかニーズに合致せず結果が伴いません。
なるほど、ここは「書き出し祭りの作者」が読者だと一層共感できるかもしれませんね。
というのも、作家は常々自分の「好き」を表現する生き物なのですが、ただ好きなように書いてるだけではPVやブクマが増えないことが多々あります。
共感と差異は7:3などというように、時には読者のニーズや期待値を意識し、叶えてあげなければなりません。
>「ロックかポップ以外は念仏同然だってか? ふざけろ」
と愚痴るハル君。
気持ちはわかりますね。
>「木ノ宮サクラ、ただいま戻りました」
そこに登場したヒロインのサクラちゃん。
>垂れ目で童顔、紺色の制服ブレザーの下に丈の長いクリーム色のカーディガンを着込んで萌え袖にし、ロングヘアをピンクに染めたギャルっぽい女の子が、アスファルトをペシペシ叩きながら笑っている。
意外や意外、まさかのギャルヒロイン。
こう、神隠しに遭うヒロインってどこか儚げというか、気弱な印象を受けていたので少し面喰いました。
で、このサクラちゃんですが、中々属性を詰め込まれてます。
まず語尾の「っす」ですよ、「っす」!!
もう「っす」と来たら「後輩でちょい生意気だけどわんこ気味で可愛い」という通説が(僕の中で)あるくらいメジャーですよ!
巨乳だったら言うことないっすねぇ……あ、それは聞いてない? こほん。
>「三年間顔見せなかったことだけじゃなくよ。その制服、高校のだろ。あの当時おまえは高二で、今は高五? そんなことあるわけねえよな?」
考えられるとしたら留年?
あるいは卒業後なのに制服を着ている?
「んー、なんと言うかっすねー……」
サクラは難しい顔をして腕組みし……。
「自分、神隠しに遭ってたんす」
予想だにしなかった単語に、一瞬反応出来なかった。
「あ、えと……た、体質って言うんすかね。昔からちょくちょくあったんすよ。ぱっと消えて、数時間後にまた現れたり。数日後とか、長い時には一カ月後とかってのもあって……」
あらすじでも提示されていた「神隠し体質」のバレですね。
当人曰く、急に意識が飛んだと思ったら既に時を超えてるのだとか。
で、この次で驚いたのが、なんとサクラちゃんがトリップした数年の間に家が燃えて家族が死んじゃうんですよね。
今までほんわかした文脈だったので、結構急展開に感じました。
それで独り身になってしまったサクラちゃんが、そのままハルの家へとお世話になるところで第一話終了です。
〇気になる点
終盤、居場所のなくなったヒロインが不安で泣きじゃくる姿を見て、主人公ハルは様々な不安を抱えながらも彼女を助けていくと決心します。
ただがむしゃらに夢を追うだけだった青年が、一気に押し寄せる過酷な現実を前にして責任感に目覚めるシーンですね。
>「心配すんな、サクラ」
俺は無理やり笑顔を作った。
「家賃はとらねえ、食費とかも気にすんな。自分の家だと思って、いつまでだっていていいからな」
気休めにしかならないと分かっていても、ここでそれを言えるのはポイント高いです。実に王道で共感性のある流れだと感じました。
その反面、ここまでの話を4,000字という短い尺で一気に展開させたのはやや性急にも見えます。
サクラちゃんからすれば、いきなり家族が全員死んでしまった衝撃はすさまじいものでしょうが、読者の僕からすると「それまで特に気配のなかった人たちが急に全滅した」と感じました。
>昔から変わらない、緩いやり取り──だけど俺は、そこに微かな違和感を覚えていた。
上手くは言えないが、サクラの陽気さが昔のそれとは微妙に違っている気がする。
ここのハルが違和感を感じるシーンの前に、もう少し2人のたわいない昔話を挟んで、その中でサクラちゃんの声が少し震えたり挙動がおかしかったりと、何かしらの「予兆」は欲しかったなと思います。
恐らく今の構成が文字数いっぱいなので、圧縮せざるを得なかったのだと思いますが……。
〇総評
文章は読みやすく、主人公とヒロインのキャラ造形もしっかりしていて、かつ共感性もあると高い水準でまとまっている作品です。
やはり気になったのが急転直下した家族全滅シーンなので、もう少し長い尺で徐々に不穏さを匂わせる描写を読んでみたいですね。
ありがとうございました。
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