第五幕 エリアボス討伐 ― MIA ―
<「レイ」さんがギルド<ともしび亭>に入団しました。>
「あれ?マスターが言ってた人かな?」
そう思う矢先、ギルチャに当のレイさんからの挨拶があった。
「はじめまして!レイと言います!体験という形ですが、よろしくお願いします!!」
元気のいい方のようだ。LVは45。種族は猫。性別は男性。
今INしているギルドの面々から、「よろしく~」と言った挨拶でチャットが埋まる。私も挨拶しなきゃ。
「よろしくお願いします。」
「・・・で早速、レイさん連れて狩りに行こうと思うんだけど、近いレベルで行けそうな人います?」
マスターの呼びかけに、唯さんが答える。
「ごめーん、ダンジョン始めたばっかり。しばらくは合流できない。」
「クレ唯テルはそうだと思った。頑張って~~」
「了解!」
何故かテルさんが答える。ぁ、たぶん今、唯さんに突っ込まれてるな。
「ミアさんはどうですか?」
「あ、すみません。少しだけクエスト進めたら、今日は落ちようと思ってたので・・・」
「そうですか・・・残念。あ!ところで、今いるところのエリアボス倒してます?」
「いえ、まだですけど?」
当たり前じゃん、と思ってしまった。
「エリアボス」というのは、文字通りそのエリアのボスで、倒せればそのレベル帯にしてではあるが、多くの経験値となかなかのお金が手に入る。
なおかつ、稀に「そのボスからしか手に入らない」アイテムが得られることもあるので、コレクション的に集める人も多い。
・・・だがその分、当然のごとく強い。そのエリアの普通のプレイヤーのレベ、いわゆる適正レベルより10ほど高く、ソロで狩ろうと思えばさらにそれ以上のレベルが必要だ。
もし適正レベルだけで倒そうと思うなら、PT最高人数の5人集め無いと容易でないのは、今までの経験だけでもわかる。
・・・が、今会話している人はそうではなかった。
「OK.。では良かったら、今から一緒に狩りに行きませんか?10分ほどで終わると思うんで。」
「え?」
私はポカーンとなった。
10分?この人何言ってるの?
適性5人がかりならまだわかる。それでも早い方だろう。
でも今回は、わたしの理解が正しければ3人。LVも50,48,45と適性範囲。10分どころか倒せなくてもおかしくない。
あ、まさか?
「・・えっと、マスターと私とレイさんの3人ですよね?」
「ですよ?」
あれ?Hiroさんでいく訳じゃないんだ。Hiroさんならソロで10分・・5分もかからないだろう。まぁ、それだと経験値は入んないけど、お金とあわよくばアイテムも手に入るし。
って、違うの?本気??
「えっと、・・じゃあ、行きます」
「了解!迎えに行きますね~。」
半信半疑だが、いつの間にか承諾していた。
・・・正直、好奇心もあるからね。
「改めまして、レイと言います!よろしくお願いします!」
「ミアです。こちらこそよろしくお願いします。」
「んじゃ、早速、ミアさんPT誘いますねー。」
マスターからPTの誘いが来たので、もちろん返す。
<「ミア」さんが「魚の人」さんのPTに加わりました。>
「あ、なお、ここから先は3人だけが見れる「PTチャット」での会話になります。(仮)の方でPTチャやギルチャ表記するような記載がありましたが、今後は原則行わないのでよろしくお願いします。」
「・・・・・ この人は何を言っているの?」
「・・・たまにあるんです。気にしないでやってください。」
慣れたもんだなぁ、私も。
「さって、気を取り直して、・・ここのエリアボスは、デデン!あちらです!!」
「うん、さかなん鱒。その言い回し、うざいわーw」
「うっさい!・・って、鱒・・魚のマスかい!!」
「マス変換してたら出てきたわw魚にかかるし、いい感じっしょ?」
「確かにかかってるわ!あー、盲点。まぁ別にいいけどww」
「私は鯛だと思ってました。」
マスターとレイさんのやりとりについ加わってしまった。私は何を
「さかなん鯛!それはそれで九州っぽくていいっすねw」
「多分ミアさんは見た目のこと言ってるんだと思うけど、・・これはこれでいいなぁ・・・」
「いいんかい!?w」
軽快なやり取りに私は聞いてみる。
「えっと、レイさんとマスターは前からの知り合いで?」
「いえ、さっき会ったばかりでっす!!」
「意気投合!ィェーーー!!」
「ィェ――――!!!」
今にもハイタッチしそうな勢い。うん、ここは、
「あ、はい。マスター、ボス攻略方法そろそろお願いします。」
「・・あ、はい。やらせて頂きます。」
「クールだ!w」
誰かが進めなきゃ、でしょ。
・・・私が、こんな役やる日が来るとは思わなかったけど・・・
思わす苦笑するミアであった。
「えっと、ここのエリアボスは「ビッグトレント」。LVは55。まんまでっかい樹の化け物っすね。このレベルのエリアボスにしては攻撃力、HPともに高くは無い方です。ただし、麻痺や眠りの状態異常が曲者な敵です。」
マスターの説明を真面目に聞く。
「セオリーの攻略としては、基本通りタンクが全攻撃を受けつつ、ヒーラーがHPと状態異常を回復。盾役のヘイトが維持できる程度に、残りが攻撃を仕掛けて倒す。と言った感じですかね。」
ふむふむ。
「・・・が、これだとこのメンバーで10分攻略は難しいので、3人とも攻撃集中で倒します。」
は?思わず聞いてしまう。
「・・それは、PTプレイ無視で戦うという事ですか?」
「ある意味そうですね。一応前線向きのHPの高いフォームがメインで通常攻撃を受けもちますが、モーションありのスキル攻撃は、個人個人避けながら倒すスタイルです。」
「それは、PTを組んでやることですか?」
レイさんからの鋭い指摘。確かに。
「・・組んでなくてもできなくはないです。実際、ソロ同士で結果的に協力する形になることもありますから。ただ、見知った同士だとやりやすいのは確かです。」
「・・・わかりました。」
レイさんが渋々と言った感じで答える。うーん、
「じゃあ、フォームはどうします?」
「レイはどのくらいフォーム取ってる?」
事前に聞いてないんかい。
「近接中心かなぁ。ナイト、モンク、後バードっすね。」
「となるとモンクかなぁ。装備は揃ってます?」
「防具は悪くないと思うんですが、武器が良いのが出てないですね。」
「OK。ミアさんはスナイパーいけます?」
「私も装備はまだで・・」
「OKOK。ちょいとフォーム合わせて待ってて~」
そういうとマスターは唐突に消えた。移動した場所を見るとギルドタウン。自分の部屋に行ったのかな?
同じギルドまたは同じPTのメンバーは、基本的に所在エリアが表示される。一応設定で見えなくすることもできるらしいけど、私はやったことない。
言われた通りスナイパーにフォームチェンジしてると、レイさんから内緒チャットが来た。
「ミアさん、いけると思います?」
正直な人だなぁ。
「わかりませんが、とりあえずマスターが言うようにやってみましょう。・・失敗したらマスターをいじるだけです。」
「・・・強いw」
それが私の正直な気持ちだ。
「戻ったよー。ほいっと」
<「魚の人」さんからアイテムトレード申請がありました。どうしますか?>
おっとと思ったが、とりあえずYES。すると、スナイパー向けの装備や回復ポーションが送られてきた。って、いやいや、
「なんですか、この量!?受け取れませんよ!」
「ぁー、装備は今回貸すだけだし、ポーションは今回いる分ってことで」
この人は・・・
「そういう事なら、ありがたく使わせてもらいます。」
「なになに?どしたの?」
「レイっちにも。」
「トレード?」
少し間が空いて
「え?ちょ、この量???」
ああ、レイさんも同じような洗礼を受けたか―。
多分同様のことを言われたのだろう。レイさんも渋々アイテムをもらい、装備してみた模様。武器を見ると<闘魂ナックル+8>。
「この武器って?」
「43レアドロ。」
あ、多分レイさん絶句してる。
それもそうだろう。レアドロは何だかんだなかなか手に入らない。適性LVのそれをしかも+8までカスタムしているのを、さらっと渡された経験など無いだろう。
「・・・えっと、こう言っちゃなんですけど、自分さっき会ったばかりっすよ?借りパクするかも知れないっすよ?」
それに対し、マスターは答えた。
「・・・別に、今は使ってないからいいけどね。正直、自分は道徳的にどうかわかるほど、洞察力とかが優れているとは思ってない。」
「でも、MMO、ゲームやってきた身としては、借りパクとかしてもロクなことないし、第一、面白くないのはわかるでしょ?」
・・・マスターの回答に、図星を突かれたレイさんが苦笑しているように私には見えた。
「・・確かに。それに自分で取って鍛えてなんぼですもんね。」
「うむ。」
・・なんで偉そうなんだか。いや、ギルマスさんだけどね。
「わっかりました。このバトルの間、借りときまっす!!」
「ではいきますか、マスター?」
借りた<アサルトスナイプ+7>を抱えて私は言った。ちなみにこの武器は47のレアだが、・・・お礼は後でまとめて返そう。
「その前に、一回俺が敵の攻撃パターン見せるね。各自覚えて、頑張って避けてください。」
・・ん?この人は一体何を?
突っ込む間もなく続ける。
「ビッグトレントの攻撃パターンは4つ。まず前方横方向への薙ぎ払い。バックだと間に合わないかもだから、基本前移動で避ける。」
実践しながら説明を始めるマスター。
「すると高確率で周囲攻撃が来る。サークル見えたらすかさず範囲外まで離れる。ちなみにこの攻撃は結構時間長いから、遠距離攻撃連打有効。」
「前方縦方向の振りおろし。左右に避ける。結構遠距離までくるので、後衛も注意。」
「後一つは、残りHP3割切ったあたりから発動する前方広範囲攻撃。通称トレントレーザー。他は食らってもすぐには死なないだろうけど、これは即死級だから必死で避けて欲しい。」
ふむふむ。
「・・まぁ、発動までそこそこ時間あるから、気づければまず避けれると思う。もしスキル発動中とかでやばい時は・・・頑張って。」
「頑張ってってw」
「もうちょい役に立ちそうなコメントをw」
考えてるのか、マスターは少し間を開けると、
「そうだなぁ。「このゲームでは敵に当たってもダメージにはならない」ってことくらいかな?」
・・またこの人は良くわからないことを。
「基本だけど大事なんだよね。うんじゃ、最後、食らっても慌てないよう一通り攻撃食らってみるんで、どのくらいダメージ受けるか確認しといて。」
何それ?
再び突っ込ませる間もなく、マスターが攻撃を受けては自分で回復する。
今受けれる3パターンの攻撃を食らった後、這う這うの体で戻ってきた。ボスとの戦闘が切れ、元の所に戻っていく。
・・なんだったんだろうか?
「・・結構痛いな。さって、本番始め・・・る前に使うべきスキルを一応説明しとくね。」
「はい!」
「お願いします。」
「ミアさんのスナイパーは「狙撃姿勢」が基本だけど、今回は動き回るのが主だから、完全にヘイトが外れた時にしていこう。」
「狙撃姿勢」はその場に留まり、命中精度を上げかつ強いスキルを使えるようにするスキルだ。スナイパーの基本のスキルと言える。
ただし、姿勢のONOFFにはそこそこ時間がかかるため、使う場は限られる。
「開幕「火炎瓶」「スモーク」も基本だけど、射程が短いから、無理はしない。「手榴弾」も余裕があればで。」
「火炎瓶」は火属性の継続ダメージ、「スモーク」は周囲の敵命中率ダウンとなかなか優秀だが、射程が10mと短めなので、遠距離が主のスナイパーはそうは使えない。単発火属性の手榴弾は20mだからまだいけるって感じだ。
「やるならヘイトを下げる「隠蔽」は忘れないでね。逆に移動速度が下がる「叱咤激励」は今回はなしで。」
「叱咤激励」はPT全員の防御を上げるが、移動速度がかなり落ちる。確かに使うべきじゃないよね。
「「完全集中」使いながら通常攻撃と合わせて着実にダメージ与えていこう!以上!」
「完全集中」は命中率を大幅に上げるスキルだ。
「わかりました。」
「レイはモンクか。熟練度はいくついってる?」
「500は超えてるっす」
「OK.。素早さ、CRを上げる「韋駄天」「気合ため」は常時。余裕があれば守備力上げる「硬気功」と攻撃上がるけど継続ダメくらう「練気功」で。」
・・初レクチャーだからだろう。私の時と違いスキル効果を確認するように指示している。ちなみにだけど、私がスナイパーのスキルを教わったのは、<ボルケーノ>時代のHiroさんからだ。
・・・この人、試してる?
「そして、防御力が下げれる「発勁」は積極的に入れていく。後はガンガン攻撃当てていこう!!」
「りょです!」
「マスターはなんでいくんですか?」
「ん~、久々マジシャンでいこうかな?」
そう言い終えるや、マジシャンにチェンジ。
「・・・流石に魔術系では被弾したらまずいのでは?」
レイさんが突っ込む。私も同意見だ。
「当たらなければ意味がないのだよ!諸君!!」
・・・さ~って、始めますか。
レイさんも突っ込まない。マスターの性格把握早いなぁ。
「・・えっと、じゃあ、はじめますけど、いいですよね?」
「とっとと始めてください。」
「はい!すんませんっした!」
「弱いマスターだww」
なにはともあれ、いよいよだ。
「バフ全掛け!デバフ、継続系初手!!」
ステータスアップののバフスキル。敵のステータスダウンのデバフ。そして、継続ダメージスキルを叩きこむ。
「慣れるまでは余裕をもって避ける!レイ!なるべくヘイト稼いで!!」
「言われなくても!!」
レイさんの連続スキル攻撃が決まり、トレントのタゲ(標的)がレイさんに向く。
「背面位置へは遠距離攻撃はまずこない。狙撃できるだけ!!」
「ん!!」
私は「隠蔽」をかけた後「狙撃姿勢」をとり、その状態でないと使えない強力なスキル、クリティカル率の高い長距離攻撃「精密狙撃」と長距離攻撃「狙撃」を連続して打ち込む。
「よっし、発動準備OK。いっけーーー!!」
マスターの前方一直線に巨大な氷柱が連続して出現し、トレントに命中。これまでで最高のダメージを与える。
(え?な、なに??)
私同様あっけにとられたのか、レイさんの動きが一瞬止まる。
「だーー!やっぱこっちきた!!レイ、タゲ取って!!」
「あ、うん・・」
マスターが避けまくる中、レイさんが必死に攻撃を加える。トレントがレイさんに攻撃をしだした!
「ミアさん!!」
「はい!」
スキルクールタイム、CTが解けたので、私は再び精密狙撃、狙撃を加える。
クリティカルが出たので、先程のマスターの攻撃程ではないが大きなダメージが入った!
「この調子で行こう!」
トレントとの戦いは続く。
時折、回避ミスやスキル後硬直で被弾することはあるものの、マスターからもらった回復薬でしのいでいく。ちなみにどの攻撃でHPがどのくらい減って、どん状態異常を受けるかは、戦闘前にやってくれたマスターの被弾状況を見ていたので、そんなに慌てないで済んだ。・・このためかぁ。
レイさんのHPの減りは、基本近距離で通常攻撃も受けているにも拘らず、私より少ないようだ。つまりスキル攻撃回避率が私より高いという事。プレイングスキル、PSが私より高いことに他ならない。
そして、驚くべきことにマスターは、ほとんど被弾していない。ヘイト調整が間に合わず、自身では避けようのない通常攻撃を被弾することは稀にあったが、スキル攻撃は完全に回避していた。なおかつ、
「でっかいの行く!タゲ取り直しお願い!」
再びマスターの前方に巨大な氷柱が出現し、トレントに大ダメージを与える。
大きなダメージにトレントはマスターにタゲを変えるが、ひたすら回避。
やがてレイさんにタゲが戻ると、再び徐々に攻撃を開始する。
この立ち回りの確実さに、私は素直にこう思う。
(腐っても鯛だなぁ。・・あれ?この表現違う?)
慣用句は苦手だ。
「そろそろレーザー来るぞ!各自、挙動に注意!!」
マスターが叫ぶのにハッとなり、トレントのHPを見る。おおよそ残り3割。マスターの言っていた危険なスキルを使い始める域なのだろう。
・・と、思っていた矢先、今までにないスキル着弾サークルが出現する。
それはトレント前方かなり広範囲に広がっていた。私の位置は、たまたまそこから外れられる地点に近かったので、急いで離脱する。
マスターも危なげなく逃れるものの、レイさんがトレントのほぼド真ん前におり、私の見た限り安全地帯への距離は絶望的に遠い。
「レイ!前!!」
「!!!」
「韋駄天」をかけ直し、レイさんはトレントに向かって突っ込んでいく。ちょ、それだと!
数瞬の後、敵スキルが発動。いかにも強力そうなエフェクトの白い爆発が生じる。これは確かにレーザーだ!
まばゆいスキルエフェクトがおさまっていく中、PTみんなのHPを確認する。私、HP減少無し。回避成功。マスター、成功。
そしてレイさんもHPの減りは無く、回避に成功していた!なんで!?
「硬直が長い!総攻撃!!!」
マスターに言われ、反射的に攻撃を再開する。私が「狙撃姿勢」を取る中、マスターが「ショートワープ」で敵の眼前に移動し、遠くでは当てにくい継続ダメージスキルや範囲スキルを遠慮なく発動する。レイさんも「気合ため」「練気功」を連続でかけてダメージ率を上げ、「発勁」、「旋風脚」「爆裂拳」といった近距離スキルをここぞと繰り出す。
トレントが攻撃を再開し始める時には、こちらも再び回避主体の攻撃に切り替える。今度は4パターンに気がけないと!
敵のHP残が2割、1割を切り、再びレーザーの予兆を示す前方広範囲の着弾サークルが出現。が、幸運にも3人ともすぐに避けられる位置。即座に3人とも安全域に離脱する。
と同時に、私は慣れたもので「狙撃姿勢」をとり、ひたすら遠距離スキル攻撃を当てまくる。レイさんもサークル外から当てられる中距離系のスキルでダメージを加える。
そしてマスターは、長めのスキル詠唱を始める。あれは、
「これで終わり。いっけーーー!」
トレントのレーザーエフェクトと、私の狙撃、レイさんの「遠当て」、
そしてマスターの氷柱が同時に出現。トレントのHPはゼロとなり撃破エフェクトも加わると、一種インスタ映えしそうな画面を私の前に見せてくれた。
「おーっし撃破。お疲れ――!」
「・・お疲れ様です。」
「・・・お疲れっす。」
時刻を確認すると、戦闘を始めておよそ9分ちょい。・・・本当に10分切っちゃった。
唖然とする私とおそらくレイさんを横目に、マスターは私たちを労ってくれる。
「・・いやー、我ながら、しんどいプレイ要求をしたなと思いつつ、よく頑張ってくれました!!」
「・・オイコラ」
「・・自覚はあったんすね。」
私はジト目でマスターを見やる。慌ててマスター、
「も、もちろん、二人ならできると思っての要求だよ?実際二人とも生き残ったし。特にレイの初見レーザー回避は、見事でした!!」
そのマスターの発言に、あれっ?となって、私は質問する。
「そうそう!あの時レイさん敵に向かっていったのに、どうして避けれたんですか?」
「あれは、ボスを突っ切ったというか」
「正確には樹にぶち当たって、円周を通じて真横抜けしたんよ。あれ、真横には攻撃来ないから。」
「??」
一度では理解できなかった私は、素直に詳しく聞いた。
そうしてもう一度より詳しい説明を受けると、何となくわかった。要はレーザー攻撃は近接横範囲は広めだが、あくまで「正面範囲」でしか着弾範囲は無い。
なので、「敵と接触するくらい近づけば、円柱型の樹のモンスターの本当に真正面以外は、自然と範囲外になる」ということだ。
ゲームによっては、敵の身体に触れる事自体がダメージになるものもあるが、CFOはない。だからこの手が使える。
マスターが戦闘前に言っていたのは、このことを指していたんだ。・・いやはや。
「あ、ところでマスターが出してた氷の柱の出るスキルって何ですか?やたら強かったんですけど。」
「あ、それ、私も気になりました。」
「あー、あれは魚人族の種族スキル。マジシャン700で習得するんだけど、普通に強いよね^^;」
「魚人族専用スキルなんですね・・・だから見たことないのか~。って、700!?」
「高っ!?」
「頑張りましたw」
あっけらかんと言うけど、ぁ~~、マスターだなぁ・・・
「んで、ボスレア出ました?初回で出たら讃えますw」
「あ・・」
私はアイテムインベントリを確認する。
「・・出てないですね。」
「私も出てないです・・」
その発言を聞いて、マスターは居心地悪そうに、発言する。
「ぁーー、んだよね。・・えっと、ごめ、俺に出ちゃった。3個目や^^;」
私はハッとなって、マスターを見る。
「えっと、それって、頂けたりしたり?」
「うん、2個以上持っててもほとんど意味ないし、あげれたらあげたいんだけど、・・・エリアボスレアはシステム上、他プレイヤーとやり取りできないんだよね・・・」
「え?」
「・・・初めて知りました。」
私もレイさんも知らなかったゲームシステムを告げられる。つまり、それってそれって、
「・・・えっと、こんなこと言いたくはないんですけど、」
「・・自分も、入ったばかりだし、あまり言いたくはないんですが、」
「・・・はい、甘んじて受けます。」
マスターが観念したので、遠慮なく言う。
「「マスター、最悪――――!!!」」
私とレイさんの怨みの雄叫びが、周囲にこだました。
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