第三幕 自己紹介3

「・・・さて、自己紹介続きだが、俺がいきます。」

<ボルケーノ>のギルドマスターにして、「CFO最強のプレイヤー」と名高い「ライアス」がなんか言った。

「は?」

またこいつ、何か言ってるな。



「ライアスと言います。種族はヒム。フォームは魔導士以外取得しています。現在のLVは90。近々実装されるであろう90HDに期待しています。以上です。」

「ちょっとまてーーー!」

すかさずツッコミを入れる。ほら、みんなもなんか唖然とした空気じゃん。

「あ、ギルド<ボルケーノ>のギルドマスターもやってます。よろしくお願いします。」

「それは知っとる!!」

ツッコミが追い付かない。えっと、何から言うんだっけ?


「そうそう・・なんでいきなり自己紹介したの?YOUの自己紹介、トリだろうなぁと思ってた人おそらく多数よ?ここ民主主義よ??」

「・・・何言ってるかわからないが、言いたいことはわかるわぁ・・」

ギルの相槌。でしょでしょ?

「・・・俺にはわからんな。さぁ、俺の番は終わったんで、次、次。」

「そうはいくかい!!」

ここは、多分みんなの意見を代表して、俺が止める。

「CFO、まぁ、ゲーム全般に言えると思うけど、最強プレイヤーの情報って知っておきたいものだぞ?ということで、皆さんからの質問をお受けしてください。」

「・・・それはギルマスとして?」

「ギルマスとしてもや!!」

この言葉を聞き、ライアスがにやりとした気がした。

・・・あ、まずったか?

「つまり<ともしび亭>のギルマスである魚の人さんも、皆さんからの質問をお受けするのでご期待してくださいという事だな?OK、わかった。」

まぁ、お受けはするが、誰もご期待せんやろ。

「そう言う事なら質問のある方、遠慮なくどうぞ。」

「・・・今現在の最強装備は?」

まずNaoさんが切り込む。ぁー、らしいなぁ。

「う~ん、89Dがまだ行けてないんで、86レアドロかな?」

「・・・カスタムなしでも、”あれ”より上なのか?」

「ああ、”あれ”の方が総合的には上だけど、相変わらずコストが高すぎて今は封印している。わかるやろ?」

「・・・そうだった。タウン上げて、カスタム環境整えるのが先だった。費用いくらだっけ?」

「それに関しては、お前が潰した「寄生プレイ」もやぶさかではないだけの額と言っておくw」

「ぁー、やっぱかー。・・・あと、別に潰したつもりはないぞ。」


ギルマス同士の会話に、ギルメンの反応は様々だった。

ウンウンとなるもの。苦笑するもの。感心するもの。

・・・そしてキョトンとなっているものの一人、ミアが尋ねる。

「すいません。”あれ”と「カスタム環境」というのがよくわからないので、教えて欲しいんですが。」

もう一つのワード「寄生プレイ」については、一応先のギルマス会議で出た際、大まかな説明を受けたのでここでは聞かない。・・・理解したとは言えないが。


ミアさんの質問に俺はあー、となって返答する。

「ミアさんがいた頃は無かったし、ともしび亭のみんなは知らないか。ごめんね。まず、あれって言うのは、ライアスの持つ80オーダーメイド武器<ミストルテイン>の事。ほら、張ったって。」

「持ち歩いてる訳ないだろ。・・・ったく、取ってくるから先にカスタム説明しとけよ。」

「おっけ~~」

ライアスがルームを抜ける。言われた通り、説明を続ける。

「さて、「カスタム環境」の説明の前に、カスタム自体の理解はできてるかい?」

「えっと、「お金と素材があれば、該当するタウンの職人のところで強化出来る」って言うのがカスタムですよね。」

「うん。間違ってないけど、ちょっと足りないかな。」

俺は補足説明をする。


「より厳密には、「レアまたレアドロップ武具においては、武具レベルに対応した該当する職人のところで強化できる」というのが、通称「カスタム」となります。さて、何が違うでしょう?」

俺はミアさんに質問を返す。

「・・・該当するのがレアとレアドロップのみ。と、武具レベルへの対応ですか?」

「そそ。最初から買える「ノーマル」と雑魚モンスターが落とす「ノーマルドロップ」、そして「オーダーメイド」はカスタムができない。これはまあ今回は良いんだけど、「武具レベルの対応」に関して、86Dのレアドロの武具レベルはなーんだ?」

「それは86・・・何ですか、そのキャラ?w」「きもいわww」

何人かが突っ込む。うっちゃいわ。

「それでは86のカスタムをするのに、必要なギルドタウンのランクは?」

「・・・確か、ギルドタウンはギルドランク×10のレベルの武具まで扱える・・・あ」

ミアさんが気づいたので答えを言う。

「うん。だから86、厳密には81以上の武具をカスタムするためには、現状の最高ランク9まで、最低でも2ギルド上げないといけない。」

「ランク9を2ギルドですか?」

おう、説明が難しいとこだぞ。


「えっと、タウンには6種類の「職人」がいるんだけど、一つのタウンには3種類の職人までしか契約して配置できないんだよね。」

「実際にカスタムするのは「鍛冶」職人だけど、それに必要な素材は「農家」「採掘師」、「占い師」から手に入れることになるから、全武具のカスタムを可能とするには4職人、最低2ギルドは必要って事だね。」

「なるほど」

ミアさんとテルが納得してくれた模様。テル、お前もか?

「あ、ちなみに残りの2職人は能力アップの補助具を作成できる「細工」、薬の作成と「鋳造」ができる「錬金術師」がいます。読者向けの補足説明です。」

「なんだ読者って?」

「・・・・さあ?なんか必要に駆られただけ?」

「なんだそれw」

さて、説明を続けようか。


「<ボルケーノ>のギルドタウンで契約している職人は「鍛冶、採掘、細工」ですね。・・・これなら重装備カスタムならいけるのでは?」

「お、Naoさん、流石。その通りなので、重装備90カスタムと細工環境整えるなら、うちをランク9にすればいいんよね。」

「ランク9にするにはどうすればいいんですか?」

「お金さえあればできるけど・・・いくらだっけ?」

「・・・6000万ですね。」

「ふぇ!?」「たっか!!」

ミアさんと唯さんが驚く。・・・いや、素直な反応だわ。

「8上げるのに3000万かかったけど、そっかー、倍の6000万か~・・・寄生上げ推進派に変わっていいですか?」

「・・それは洒落にならないので、辞めてください。」

「すんませんっした!」

Naoさんに速攻却下されました。


「冗談はともかく、どうやってそんなに稼ぐんですか?」

「色々あるけど、やっぱ税金かな?」

「税金、ですか?」

ミアさんが訝しむ。まぁ、知らないとそうなるよね。

「ギルドタウンは誰でも使えるんだけど、自分が所属しているギルドタウン以外の職人を利用する際は、タウン税と言うのがかかります。それが税金。」

「へ~」

「そしてタウン税は、そのギルドで自由に設定、変更できます。例えば<ボルケーノ>なら30%ですね。」

「30!高くないか!?」

テルっちが驚く。

「ギルド運営はお金がかかるから、ランク7,8クラスだとまだ良心的な方よ。一番高い所で40%かな?酷い時は50%の所もありましたw」

「それは、・・なるべく使いたくないなぁ」

「でも、自分が必要なのがそこにしかないなら、使わざるを得ないでしょ?だから設定する側も強気になれる。今、ランク9に一番乗りできれば独占状態になるので<クロスナイツ>さんや<生産組合>さんが、多少無理してでも早く上げたいのは理解できるかな。」

「でも、<ボルケーノ>も9にして税率低めに設定すれば、少なくとも牽制にはなる。それがまぁ、今回言ってる「カスタム環境」の正確な意味かな?」

「・・・魚ってさ・・・実は案外考えてるんだな・・・」

「どういう意味やねん!!?w」

「wwwww」

うん、君らのイメージ、よーーーっくわかったわw



「さって、ちょうど説明は終わったとこだな?」

ライアスが戻ってきた。終わったぞ。

「チッ、タイミングのいい奴。」

「・・・多分だが、心の声とセリフ間違えてるだろう?」

何のことだか。

「で、”あれ”は持ってきたんやろな?」

「ああ。<ミストルテイン>」

おもむろにチャット欄に張り付けた、現状最強の一角と思われる武器に、一同驚愕。

「これがミストルテイン・・・噂には聞いてたけど」

「・・・すごい」

「つええ!!!」

初めて見る面々は、感嘆を。以前見たことある面々も

「改めて見てもすげぇなぁ」

「・・ん、これ?」

そんな中、たかみさんが気づいた。あー、これは、

「・・・打ち直し2回とか、まじっすか?」

「3回やってる奴が、何驚くw」

「レベルが違いすぎるわ!!」

俺とライアスのやり取りに、たかみさんから一言。


「・・・どっちもおかしい、から・・・」

「「「ウンウン」」」

何故か納得する一同。あれあれ~~?



「・・・とまぁ、80オーダーメイドはめっちゃ強い訳だが、修理の費用も馬鹿高い。80だと一つフル修理で8000はかかるな。」

「・・・ぇっと、同じレベル帯のレアでどのくらいですっけ?」

「83のフル装備全壊修理でも2000位なので、その高さがお分かりいただけると思う。」

「・・・高いですね・・・」

全く否定しない。

「プラス、創るにも素材集めがむっちゃ大変。それでも、今見た通り超強力だからプレイヤーの一つの大きな目標になる。・・・まぁ、こいつの打ち直し2はやり過ぎだが。」

「だから3回打ち直してる奴に言われてたくないってw」

「その打ち直しはどうやったらできるんですか?」

お、ミアさん、質問積極的だなぁ。良い事良い事。

「そのオーダーメイドを創るのに必要な素材を、もう一度集める必要があります。」

「そこにさっき言った「錬金」職人の最上位、「アルケミスト」に鋳造してもらった前のオーダーメイドのインゴットを加えることで、めでたく打ち直し完了です。」

「・・・このアルケミストも、結構レアな職人。おまけに80・・・ホントよく打ち直した。」

「頑張りましたw」

頑張り過ぎやろ。

「ハー。・・・わたしにとってはまだまだ先の話ですね・・・」

「・・・でも、創ってみたいと思ったでしょ?」

「はい!私用のすっごいの、創りたいです!!」

すっごいのってw



「・・・さて、そんなミアさんに、次の自己紹介お願いしようかな。」

「おい、まだ質問」

「それは追々でいいだろ。・・・もうここにいるメンバーは、ギルドとか関係なくても友人だ。聞いてくれればいつでも答えるさ。」

「・・・ちっ、こいつ。普段はあれなのに、たまにいいこと言うから卑怯や。」

((いやそれ、あなたが言うか!?))

ゾクッ!

なんだ?・・一瞬、悪寒がしたぞ??



「でもまぁ、そういうことなら。ミアさん、お願いできるかな?」

「あ、はい、それじゃあ。」

ミアさんが一歩前に出て、自己紹介を始める。


「ミアです。種族はエルフ。LVは48。今はヒーラー主体ですが、いろいろ勉強中です。」

「それと、1年程前は<ボルケーノ>にいたんですが、まぁそんなこんなで退団。ここ1年はリアルが忙しくなかなかINできなかったんですが、最近落ち着きました。先月のサーバー統合の機会に実質復帰して、<ともしび亭>に入ることになった次第です。」

「こんな私ですが、今後ともよろしくお願いします!」


「・・・・・」

こ、これは、

「いいぞー!!応援する――!!」

「・・・ちゃんとした人。好感。」

ギルとたかみさんの称賛の声。うん、いい自己紹介だった。

「・・・以前来てもらった時はなかなか話す機会が無かったですが、こんなしっかりした人だったんですね。・・・良ければまたうち来ませんか?」

「あからさまな勧誘ヤメイ!!w」

・・・まぁ、前の件を加味した社交辞令と思われる発言に、

「・・ありがとうございます。でも、私はこの<ともしび亭>の方々と頑張りたいので、ここは丁重にお断りさせていただきます。」

真面目に回答するミアさん。おおう、

「ミアっち!そう言ってくれると嬉しいよおー!一緒に頑張ろう!!」

「ええ子!俺もよろしく!!」

「私も嬉しいです。一緒に頑張りましょう。こちらこそよろしくお願いします。」

同じ<ともしび亭>の唯さん、テル、Kless氏がミアさんと改めて挨拶する。

おおう、何か感動。

「・・・なんかいいなぁ、こういうの。」

「<ともしび亭>の方々、いい方たちじゃないですか。」

ボルケのメンバーからも好印象。うんうん、じゃあ俺も、

「それに・・・そこにいるHiro魚マスから、知識は頂けそうですからね。薄情な人ですが。腐ってますが。」

ピシリッ!


・・・その発言で、場が凍り付いた気がした。あ、あれー?

「えっと、ミアさん、・・・結構、根に持ってたりします?」

「根に持つなんてそんなこと無いですよぉ?言い出しにくかったんですよね?でもって、初対面の振りして接していたんですよね?「その辺はどうかなー?」とか思ったりなんかしてませんけどね??」

「改めて、すんませんっした!!」

土下座モーションで平謝りする俺。・・・これ、便利なモーションだよなぁ・・・なんであるのか謎だけど


この状態に驚いたりビビる面々の中、ライアスがとりなす。

「まあまあ、こいつも反省している事だし。」

「・・・ライアスさんも知っていたんだから、やっぱり同罪ですよね?」

「・・・と思ったが、もっと反省してもらった方が良いですね、うん。」

すごすごと引き下がりやがった!使えねぇ!!

「・・・冗談はその辺にして、マスターとしてミアさんにアドバイスすることがあればどうぞ。・・・魚の人さん。」

ここで話を進めてくれるNaoさん。

らしいなぁと思いつつ、こういう所はかなり助かる。

「ありがとうっす、Naoさん。」

「いえいえ・・・まだ私の自己紹介が、残ってますしね・・・」

え?え?どういうことかな?

「こ、こわ・・・・・」

怯えている面子もいるが、うん、ここはスルーしとく方が身のためだな・・・


「そうっすねぇ。真面目に、ミアさんの回復支援、PT全体をみれるようになってだいぶ上達してきてると思う。」

「あ、ありがとうございます。」

「ただ、ヘイト管理がまだかなぁ。あと、「無駄うち」も多い。ダメージコントロールやスキルのクールタイムも考慮して行動できるよう、アタッカー、できればタンクも経験してみるのがやっぱお薦めかな。」

「まぁこの辺はCFOに限らずMMO自体の経験もものを言うんで、MMO初めてってミアさんは、あせらずじっくり覚えていって欲しいって感じです。以上。」

「し、精進します。」

俺の発言になんか恐縮するミアさんと、ポカンとする面々。

「・・・なんていうかさぁ、」

「・・ちゃんとギルマスしてますね。」

「え?GANTZ氏??一応、ギルマスだから!ギルマスだから――!!」

マイルームの中心で俺は叫んだ。



「・・・・・で?私はそろそろ自己紹介していいんですかね?魚マス。」

「・・あ、はい、Naoさん、お願いします。」

なんかまた呼び方がぞんざいになった気がするけど、突っ込まないぞ。


「Naoです。種族は猫。LVは86。主にアタッカーやってます。」

「と言うのも、これまでもいくつかMMOをやってましたが、基本攻撃重視のソロでやってきたからです。・・・でも、ここではいろんな手腕が求められるようで、やりがいがあると思ってます!」

なんかこっちを睨みつけられた気がする。こわ!

「そして、ここでの目標はトップになる事です。・・・実際、前のMMOではそれに近い事はやってきた自信はあります。よろしくお願いします。」

ライアス、いわば今のトッププレイヤーを前に堂々と宣言するNaoさん。

凄い自身と度胸やなぁ。これは見習いたい。

あー、やっぱ、MMO経験者だったか。まさかトップクラスまでとは思わなかったけど。

そのライアスが尋ねる。

「・・・ちなみに、今までやってきたMMOを良ければ。」

「あ、はい。」

いくつかゲーム名を挙げるNao氏。

あ、やったことあるやつもあるし、やったことはなくとも結構メジャーなタイトルも多いなぁ。

「・・・なるほど。道理で、ここでの期間は短いと言いながら、いい動きすると思ってました。」

「・・・ありがとうございます。」

あ、若干、強者の余裕っぽく聞こえたかな?多分あいつはそんなことないんだろうが、そういうとこやぞ・・・

「それを含めて、ヒロ・・・あー、今は魚か~。コメントあったらどうぞ。」

「ここで振るか!?おい!!」

「・・・・・w」

ライアスは答えない。畜生め。

「・・・自分もLVは一緒だし、MMOの経験的にも似たようなものだから、大きなことは言えないっす。でも、CFO経験が長い点に関して言えば、各フォームとスキルの特徴、そしてPTプレイの阿吽をもっと体感したら、より良くなりそうってくらいかな。」

あ、なんか偉そうに語ってしまった・・・人の事は言えんな。

「・・・参考にします。ありがとうございます。」

「あ、いえ、どうも。」

思う所はあるけど、みんなの手前ここは飲んだって感じかな?

ホント、大人なんだよなぁ。


「さて、Naoさんの自己紹介はひとまずこの辺でいいかな?」

ひとまずってなんだ。

「じゃあ、本命のひ・・・魚マスの紹介、逝ってみようか。」

「・・・色々引っかかる言い方だが、まぁみんなやったんだし、俺もやるさ。」

ピロリン



その時、それは届いた。

「こんばんは。すみません、魚の人さん、今ちょっとお話よろしいでしょうか?」


1対1での会話に使われる、文字通り「内緒チャット」。

不意に届いた俺向けチャットの相手は、

<初心者支援>ギルドのギルドマスター、「アンナ」さんからだった・・・

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