わたし あんたなんか嫌いよ

白鳥かおる

 

                         



「須郷のヤツ、告るらしいぜ」


 卒業式を明日に迎えたその日、クラスの男子の声が耳に届いた。


「相手は誰だよ」


「前田美咲だと思うぜ。前からイイって言ってたから」


「へぇー。おれは白鷺かおりだと思ったけどな。なあ白鷺、お前たち仲良かったよな」


 男子の一人がわたしを振り返った。


「変なこと言わないでよ。圭太は陸上部の仲間よ」


「だよな。アイツみたいにのんびりしたヤツ、苛ちのお前じゃ合わないよな」


「当然でしょ」


 わたしがぶっきら棒に答えると、男子は軽く笑って飛ばした。


 わたしも笑って返したが、心はすっきりしなかった。


(なによ。あんなヤツ)


 卒業してしまえば、忘れてしまう筈だ。


(あんたが初恋だなんて、誰が認めてやるものか)


 わたしは頬を脹らませて、窓越しに見えるグランドのトラックを見つめた。








 最初は須郷圭太が嫌いだった。


 チビで、足が遅いくせに陸上部に入部して、ペースランニングさえまともに付いて来れないのだ。


 圭太は1500メートルの選手でありながら、6分を切る事も出来ないし、ビリになってもヘラヘラしている。


 体育の授業の1500メートル走でも、文化部の連中としのぎを削っている様は、とても見るに堪えなかった。


(一般入部だとしても、陸上部の恥さらしだわ)


 わたしの通う高校は、スポーツ推薦枠を設ける程、その方面に力を入れている県下の名門校だ。


 毎年いくつかの部が全国大会に出場していたし、陸上部もその期待を背負っていた。






「かおり、ちょっと付き合ってくれよ」


 圭太は駅伝選手のわたしに、いつも声をかけてくる。


「いい加減にしてよね。何でわたしが圭太の伴走しなきゃいけないのよ。男子に頼んでよ」


「すまん、かおり。頼むよ」


 そう言っていつも頭を下げる。


 わたしは溜息をつくも、頷かざる得なかった。


 陸上部の半分以上がスポーツ推薦でやってきた連中だ。


 並以下の圭太はそんな男子部員の誰からも相手にされなかった。


(放っては置けないけど、なんでわたし?)


 ペースランニングにすらならない圭太の伴走は、わたしには何のメリットもなかったが、何故か無視は出来なかった。






 1年の時、冬の京都大路を走る全国高校駅伝に、わが駅伝部が出場することになった。


 わたしはアンカーを任された。


 県下の名門とはいえ、全国的には力不足だったわたしたち5人の順位は、47組中28位だった。






「おれ、駅伝やりたい」


 何を血迷ったのか、年明け最初の練習で、圭太がそう言った。


 部員たちはあきれ顔で誰も相手にはしなかった。


 一つの競技でその高校からエントリーできる人数には制限があった。


 当然だが圭太は1500メートルの予選にすら出た事がないのだ。




 圭太と二人の時、わたしは言った。


「圭太ね、まさか7人の枠なら入れるなんて思ってないでしょうね」


 全国高校駅伝は女子は5人だが、男子は7人でバトンを繋ぐのだ。


「それとも男子駅伝部は、いまだ全国大会に出たことがないから、自分でもレギュラーになれるなんて思ってるわけ?」


「違うよ。なんていうのかな、次へ次へとバトンを繋いで走るかおりたちを見ていたら、なんか感動しちゃって……選手じゃなくてもサポーターでもいいからあの中に入りたいって思ったんだよ」


 熱弁する圭太を見てわたしは笑ってしまった。


「あんた、バカじゃないの。圭太は男子なのよ。女子の中に入れるわけないじゃないの」


「ああ…例えが悪かったね。もちろん男子でのことだけど、みんなと力合わせて、何かを成し遂げたいって思うんだよ」


「圭太の思いは分かったわ。でもそれ、他の人には絶対話しちゃだめだよ」


「なんで?」


「駅伝部員のほとんどはスポーツ推薦枠なの。並以下の圭太が力貸すなんてこと口にしたら、みんな激怒するわよ」


 ただでさえ、低迷している男子駅伝部はコーチ以下ピリピリしていた。


 圭太ごときのそれは、まさに火に油。竜の逆鱗だ。


「変なこと考えないで、地道に1500メートルの記録更新を目指しなさいよ。ねっ」


 わたしの言葉に圭太は小さく頷いて見せた。






 分かってくれたのかと思いきや、翌日圭太は1500メートルから駅伝への転向を願い出た。


(もう知らない!)


 人の忠告を無視して何よ、とわたしは気分が悪かった。


 けど、わたしと圭太はgive&takeの関係があった。


 一般入試でこの高校に入学した圭太は、スポーツ推薦のわたしとは違って頭がよかったので、勉学では圭太に伴走してもらっていた。


 わたしが圭太の練習の手伝いを断れない理由もそこにあった。






 2年の冬がやってきた。


 わたしは満を持して2度目の全国高校駅伝に臨んだ。


 調子が良かったわたしはアンカーで五人抜きして、17位に順位を上げてフィニッシュした。


「白鷺いいぞ!」


「かおり、頑張ったね」


「白鷺先輩!!」 


 まるで入賞したかのような声援だった。






 試合の後、西京極陸上競技場・通称たけびしスタジアム京都を出ると、数人の男子駅伝部員が待っていた。


 その中には圭太もいた。


「かおり、すごかったよ。おめでとうって言ったら変かな」


「変よ。だって17位よ」


 と言ったものの心の中では嬉しかった。






 3年になった頃、圭太が大きくなっている事に気付いた。


 1年の時は明らかにわたしの方が目線は高かったのに、今は少し見下ろされている。


 それに5000メートルのタイムも伸びて、17分を切っていた。


 女子は3000メートルを目安とするが、男子は5000メートルだった。


「まだまだ高校女子のタイムね」


 と言ったものの、駅伝に転向したばかりの頃は20分をようやく切れるくらいだったから、目覚ましい成長だ。


 体格だって、もやしのような細い手足だったのが、そこそこ逞しくなっていた。






(圭太のヤツ、もしかしたら駅伝メンバーに入れるかもしれない…)


 しかし、今のタイムのままではまだ無理だ。


 インターハイの男子の記録を見ても、16分を切ってギリギリ出場できるかどうかだ。


 無から始めた時は、誰しもトントン拍子に進むものだが、ある一定のレベルに到達すると、そこからは牛の歩みとなる。


 時には記録が下回る事だってある。


 圭太のことばかり言ってられなかった。


 わたしは3年になって記録が下回り、まさにスランプに陥っていた。






「圭太。久しぶりに3000メートル走って見ない?」


 と持ち掛けた勝負だったが、わたしは圭太のペースに翻弄された。


 結果、初めて圭太に負けた。


 自己ベスト9分32秒のわたしは9分50秒を切れなかった。




「調子悪かったんだよ」


 圭太はそう言って、地面に膝を落とすわたしに手を差し伸べた。


「いらないわよ」


 わたしはその手を弾いた。


(いやな奴だ)


 圭太に対してそう思ったが、さらに強い気持ちで自らも罵っていた。 






(嫌われたかな)


 そう思ったが、翌日も圭太はいつも通りだった。


 それが却ってわたしを意固地にさせた。


「あんたね、何でいつもヘラヘラしてられるのよ」


「そうかな? ヘラヘラしてる?」


「それが、ヘラヘラしてるの!」


 そう言ったのに、圭太はだらしなく笑って見せた。


「あんた本当に馬鹿よね。昨日わたしは、レースの後ですごく嫌な態度したでしょ? 圭太は何も感じなかったの?」


「ああ、手を弾かれたこと?」


 と圭太は自分の手を見つめた。


「だってそれ、かおり悪くないだろ?」


「はぁ?」


「おれも悪気はなかったんだよ。だけど、額の汗を拭った後の、汚れた手を差し出したのは、確かに悪かったよ」


「なっ……?!」


(そこなの?!)


 わたしは唖然とした。


(コイツ天然だ)


 もう怒る気も失せていた。


 わたしは笑う気分じゃないのに笑っていた。


「圭太には負けるわよ、ほんとに」


 すると、何を思ったかそのタイミングで圭太が手を差し出した。


「手は洗ったばっかりだよ」


「それは気にしてない。この手は何なの」


「練習しかないだろ? 今までかおりが力になってくれたから、おれはここまで頑張れたんだ。今度はおれが力になるよ」


 そういう意味だよ、と付け加えた。


「仕方ないわね」


 わたしは圭太の手を取った。


「いい? こんなことでわたしが感動するなんて思わないでね」


「ドライだな、かおりは」


「当然よ。圭太なんかになびかないわよ」


「それでいいよ。いつものかおりだ」


 わたしはヘラヘラ笑う圭太につられて、また笑ってしまった。


 不思議だった。


 その日を境にわたしはスランプから脱却していた。






 3度目の冬が来た。


 圭太は惜しくも駅伝メンバー入りは出来なかったし、男子駅伝部も全国高校駅伝の切符を手にするには至らなかった。 


 スランプを脱したわたしは自己ベストを10秒も縮めていた。


 目標は入賞。8位以内に入ることだった。


 3年続けてアンカーを走れる喜びを噛みしめて、わたしは走った。


 13番手でバトンをもらったわたしは、西大路通をスタジアムに向かって疾走していた。


 しかし、残り2キロ辺りでわたしは少し勢いを無くしていた。


 疲労を感じてしまったのだ。


(頑張ってよ、わたし!)


 みんなが繋いでくれたバトンをここで断ち切るわけにはいかなかった。


 でも思いとは裏腹にすぐ後ろの選手に並ばれてしまった。


(ダメだ)




 と、その時。


「かおり!! 行けぇぇぇ!!」


 声のする方を見ると、圭太が歩道を同じ方向に走っていた。


(圭太!)


 圭太は親指を立てて、あのだらしない笑みを浮かべて伴走してくれた。


 そう、わたしを伴走してくれていたのだ。


(おバカ!)


 でも嬉しい。


 わたしはふと笑ってしまった。


(よし、行くわよ)


 圭太になんか負けられないと思った。


 右折すれば最後の直線となる交差点の手前まで、圭太はわたしを引っ張ってくれた。


「かおりぃぃぃ!! 負けんなよぉぉぉぉ!!」


 立ち止まり両手をメガホン代わりに叫ぶ圭太をチラ見した。


(もお、恥ずかしいじゃないの!)


 だけど、心地いいとも感じた。


 目の前にいる五人のターゲットをわたしはロックオンした。


(行くよ!!)


 わたしは全てを出し切って4人抜きまで果たしたが、フィニッシュ目前で5人目は力及ばず、8位入賞を果たす事は出来なかった。






(ありがとう、圭太)


 9位のわたし達5人は入賞台に呼ばれなかったが、悔しさ以上の達成感が、わたしにはあった。


 わたし達駅伝部3年はその日を以て引退となった。


 その頃からだった。


(わたし、圭太が好き)


 自分の心に向き合えるようになった。


 だから、知らなくてもいい事にも気づいてしまったのだ。


(圭太の目が追いかけているのは、前田美咲だ)


 わたしはこの思いを封印したまま卒業しようと心に決めた。






 そして卒業式前日の放課後、校舎の玄関を出た所で、圭太と会った。


 慌てたようにわたしを見る圭太の背後に、数人の友達といる前田美咲がいた。


(きっと機会を窺っているのね)


 わたしは圭太に近づいた。


「最後くらいバシッて決めなさいよ」


 わたしは圭太の背中を押した。


「かおり。あの…」


「じゃあね」


 わたしは満面の笑みを見せた後、圭太に背中を向けた走り出した。






 卒業式の後、わたしは何も考えてなんかいなかった。


 クラスの打ち上げにも、陸上部員を集めて今更何かやろうとも、まして圭太に会ってどうしようとか、一切考えてもなかった。


(まっすぐ帰宅しよう)


 そのつもりで教室を出ると、前田美咲と鉢合わせした。


 三年間同じクラスにならなかったし、もちろん話した事もない。


 だから素通りしても何ら不思議でない間柄なのだ。


 だけど、その時わたしを見る彼女の目に、特別な気配を感じた。


(えっ? わたし睨まれてる?)


 明らかに攻撃的な眼差しを向けられていた。


 わたしが何か言おうとすると、ごく僅かだが、わたしの肩と接触し無言で通り過ぎて行った。


(何よ……一体)


 怒りとかじゃなく、唖然とした思いの方が強かった。






 訳が分からず佇んだまま、わたしは前田美咲の後姿を見送っていた。


「かおり」


 声を掛けられ前を向くと、圭太がバツが悪そうな顔で立っていた。 


 わたしは溜息をついた。


「どうやら、あんた絡みのようね」


 圭太のそんな顔は、間違いなく何かやらかした時の顔だ。


「わたし恨まれる覚えはないんだけど、説明してくれるかな?」


「ゴメン、おれが悪いんだよ」


 どうせ圭太の事だ。告る相手に何かやらかしたに違いない。


「どうせ告白に失敗したんでしょ? で、あんたのしたことで何でわたしが恨まれるのか、教えて欲しいんだけど」


 圭太の前で仁王立ちするわたしの手を、圭太が掴んだ。


「なによ」


 圭太はわたしの問いに答えず走り出した。


「ちょっと、圭太」


 圭太は無言のままわたしの手を握ってひたすら走った。


「圭太、何か言いなさいよ。ちょっと」


 抗いながらも、わたしは圭太に付いて走るしかなかった。


 人気のない中庭の梅の木の前で圭太は立ち止まった。


「もお、何なのよ。バカ」


 掴まれた手が少し痛かったので、わたしはイラっとした。


「前田に告られたんだ」


 と圭太が言った。


「告られた? 圭太が告白したんでしょ?」


「ち、違うよ。告白されたんだ」


「なら良かったじゃないの。じゃあなんでわたしが…」


「白鷺かおりが好きだって言ったんだよ」


 わたしは圭太を見つめた。


(何言ってんだろコイツ)


「前々から、映画とか遊園地とかに誘われて、断っていたんだ。そしたら、おれを好きだから付き合って欲しいっていうから、おれも正直に好きな人がいるって言ったんだ」


「信じられない。圭太のくせにモテるなんて……しかもあんなかわいい娘を振るなんて……。あんたもしかしてBL系?」


「違うわい!! おれはノーマルだ! それになんだよ、その圭太のくせにって…」


「だってそうでしょ? あんたの嘘のせいで、わたしが恨まれたってことじやない。前田さんが好きじゃないのはともかく、わたしを出汁に使うのは止めてよね。第一わたしは……圭太なんか……? ……圭太?」


 圭太が今まで見せた事のない真顔になっていた。


「出汁になんかしてない」


「なによ、マジな顔して……」


「おれはかおりが好きなんだ。本気なんだ」


「な、なに言ってるのよ。バッカじやないの」


 足がガクガクしていた。


(なに? わたし震えているの?)


 動揺している自分を圭太に悟られるのが恥ずかしかった。


 心を見られたくないわたしは、思ってもみない暴言を吐いていた。


「あんたのことなんか好きな訳ないじやないの。あんたの適当な嘘のせいで前田さんには恨まれるし、それに何? 上靴のままグランドに連れ出すなんて何考えているのよ! 泥だらけでこのままじゃ教室にも戻れないじゃないの。バカじゃないの」


(何言ってるのよ、わたし! 怒ってもいないのに、何でそんな言い方するのよ)


 だけと止まらなくなっていた。


「圭太のバカ! 大嫌いよ!」


(言っちゃった……)


 圭太はこれまで見せた事のない負の表情をわたしに向けていた。


「分かった。もういい」


 圭太はわたしから目線を外した。


「嫌われているのは分かった。でも、最後に一言いいたいんだ」


 そう言ってもう一度わたしを見た。


「おれ、本当におまえのことが好きだった。好きだから陸上部に入って、駅伝選手になりたかったんだ。かおりと同じ土俵に立ちたかったんだよ。かおり、ありがとうな。三年間、本当に世話になったな。……以上だ」


 圭太はわたしに背中を向けて走り去った。


(待って、圭太)


 本当はわたしも好きなの、と言いたかったのにわたしは口にする事が出来なかった。


 自分の気持ちに正直になるのが、こんなに難しいものだと初めて知った。


 圭太が走り去った校舎の裏口を見つめながら、わたしはあふれ出る涙を止める事が出来なかった。








 それから一ヶ月後。


 わたしはスポーツ推薦で名門大学に通うことになった。


 スポーツ推薦のわたしは入学式二週間前には大学の陸上部に在籍してトレーニングに加わっていた。


 そして新学期が始まったその日、大学のイベントの一つでもある、新入部員の勧誘合戦が始まった。


 陸上部も一般部員の勧誘を始めるべく、所定の位置についていた。


 陸上部の勧誘の成果は芳しくなかった。


 男子は野球部やサッカー部だし、女子はテニス部やバレー部。


 プロのない陸上競技に足を止める人はそんなにいなかった。


 夕方になり、肌寒さを感じて片付けに入った頃、


「入部受付、いいですか?」


 の声に反応して喜んで顔を上げたわたしだが……。


「えっ………!?」


 だらしない笑顔の男子がわたしを見下ろしていた。


「け、圭太……?」


「やあ、頑張ってるね」


「あ!? あ、あんた、何でここにいるの?」


「あれ? 言ってなかったっけ? おれ一般入試でこの大学受けたんだよ」


 わたしは次の言葉が見つからなかった。


「一般入部希望者なんだけど、受け付けてくける?」


「えっ、ええ、いいわよ」


 ふと、卒業式の後のあの一幕が、わたしの脳裏を過った。


「あの時は、ゴメン。言い過ぎた」


「えっ?」


 圭太は不思議そうにわたしを見下ろした。


「何のこと?」


(はぁ?!)


 わたしは圭太を睨みつけた。


「卒業式の後、わたし嫌なこと言ったでしょ? あの時、わたし普通じゃなかったから…」


「そうだったかな? いつものかおりだった気がするけど」


「あんた、ケンカ売ってるの!?」


「えっ? なに怒ってるんだよ」


「はぁ……。もういいよ」


(そうなんだ。圭太は鳥頭だったんだ)


 わたしはいつもながら溜息をつかざる得なかった。


 勉強は出来るのに、嫌な事はコケコッコーと言ったらすぐ忘れる、都合のいい脳みその持ち主だった事を思い出した。


(わたしがバカ見ただけじゃないの)


 あの後どんだけ泣いたのか思い出したら、何だか腹が立ってきた。


 百回くらい悪態をつかないとわたしの心は収まらないと思った。


 だが、圭太はわたしの怒りをはぐらかす天才でもあった。


「かおり、大学でも四年間、伴走ばんそうよろしくな」


 だらしない笑みを浮かべた。


「もう、勝手にしなさいよ」


 わたしは圭太に背中を向けた。


 顔を見られたくなかったのだ。


 わたしはきっと、圭太と同じだらしない笑みを浮かべていたに違いなかった。










 FIN

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