第12話 九龍城 八層 八龍(パーロン)

 「小鈴ーッ!!!!」

生気のない顔をウチに向ける。

底のない暗黒の沼の眼。


≪さあ、おまちかね。感動のご対面だ≫


 小鈴の肩をゆさぶる。「おい、小鈴。シッカリしろ。姉さんだぞ。ウチを思い出すんだ」

手を振り払うと同時に

鎖骨めがけて拳が振り下ろされる。

「うっ…小鈴。よくも、小鈴を」

躊躇なく、2手3手と打撃を加えてくる。

今までに喰らったことのない衝撃が走る。

「目を…目を覚まし…くれ小鈴」


≪ほう。その技は前に見たな。果たして弟

相手に撃てるかな≫


 「風圧ッ拳!!!!」

小鈴が後方にとぶも、空で受け身をとり、何事もなかったかのように降りたつ。


≪フハハハ…流石に威力が弱いな。今のはとても技とは言えんぞ≫


(ちッ…それなら小鈴の意識をたつまで)


 閃光のようなぶつかり合いが続く。



「まるで…演舞だ。ミーの知ってる小鈴の

動きじゃない」

「見とれてる場合でなくってよ。鈴麗にためらいがある分、確実に圧されてますわ」


 急所を狙って一撃でしとめる。

顎がガラ空きだ。(もらったぁぁぁ)

身体がビクンと止まる。小鈴の鼻先で拳が

静止する。返しに蹴りのカウンターが放たれる。地に沈む。


 ≪コレで終いだな。殺れ小鈴≫


 「やめろおおお」ロンが、皆が叫ぶ。

その時!ブローチから音が鳴る。

およそ、この場所には不釣り合いな音。


 その音を聴いた小鈴の手が止まる。


≪なに…洗脳がまだ完全ではなかったのか≫


 見ると小鈴の顔に苦悶の表情が浮かんでいる。


(今なら!!風圧拳)

拳をやや開き気味で顎先へとブチ当てる。

クリーンヒットし、小鈴が気を失う。

精神的な効果も作用したのだろうか。


「みんな、おねがいだ。小鈴を介抱してやってくれ。ウチは最後の決着をつけに行く」


―そう 闘いはまだ終わってはいない―


最後の扉を走りぬける。






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