第8話 九龍城 三層 三龍(サンロン)

 続く扉をくぐる。また同じ景色が拡がる。

違いは目の前に人形兵器がいないこと。

カツカツと、自分の足音だけが奇妙に響く…


と、鈴麗はホールに写る自身の影の形が微妙に歪なことに気がつく。気配がない。

背後を獲られた。どうやら階層が上がるにつれ、敵のAIレベルも向上しているらしい。

背後から首元にナイフを突き立てられる瞬間、AKの硝煙が昇る。

人形兵器との間が離れた。

「フン…あたしの気配に気づかないようじゃ…アンタは三流だねえ。ねえ」と緑色ロングヘアーをなびかせながら、その長身痩躯の軍人娘が傍らの狼の喉をくすぐる。


「ミヒェル…」

「鈴麗、【あたしたちの】チームワークを見せれないのは残念だけどココは引き受けるわ。アンタは孤独じゃない、幸せを掴みな」

「ありがとな。必ず後で合流しよう」


ミヒェルが後ろ手を振ってよこす。

ゆっくりと起き上がる人形を前に


 「さて…おやアンタは孤独なのかい?

その目には白い雪が吹雪いていることだろう。何、なんの心配もないよ。あたし達が盲を開いてやるよ鈴麗がしてくれたみたいに」


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