第6話 九龍城 一層 一龍(イーロン)

  ジェネシスが指定した当日がきた。


 暗雲たちこめる空。夜の静寂。夜露を微かに残した下生えの草木が茂る、その断崖の端に屹立する塔がある。


 九龍(クーロン)城と呼ばれるその禍々しい異形建造物を前にし少女が一人立っていた。鈴麗は重々しい扉を内へと押す。ギィィィ…と建てられて年代を感じさせる音を鳴らしながら、暗闇から、暗闇へと足を踏み入れる。


 踏み入れたと、同時に石造りの壁に備え付けられている燭台に火が灯る。一気に室内が朱色に染まった。

鈴麗が立っているホールを取り囲む形で左右に階段が伸びている。手摺は木彫の鱗模様がほどこされている。

左右の階段は中央で繋がりその奥に扉が開放されている。

ココからでは確認し辛いが、その先にもまた同じ構造の階段、扉、階段、扉とニ層三層…計九層で成り立つこの塔は天空に近づくにつれ、うねりを持った軌跡を描いている。

龍の口から龍の頭が飛びて、またその龍の口から龍の頭がといった具合に。まさしく九頭龍。階層も、一龍(イーロン)ニ龍(アルロン)―と名付けられている。

不安げな様子で胸元のブローチに手をやる。

「ジェネシース!!約束通り来たぞ!!」

どこからともなく声がする。


≪フフフ…ようこそ九龍城へ。さて、

約束通り小鈴と会わせてやろう。その前に…コイツ達を倒せたらな≫


 人体を模した機械(?)が現れる。

「なんだコイツは」


≪今までの代表選手達の格闘データを取り入れた器だよ。せいぜい遊んでやってくれ≫


 「話が違うぞ」

話かけるもジェネシスからの返答はない。


ギシギシと無機質な挙動で一歩一歩間をつめてくる。

と、その時―弾丸が人形のこめかみを射抜いた。驚いたことにその人形兵器は歩みを止めない。

「ユー!!コイツの相手はミーが引き受けた。ココは任せて先へ!!」

「トレット!!すまない」


弾丸はSSA(シングルアクションアーミー)から放たれたもの。みつ編みのガンマン。

ガント・レットが鈴麗を回廊へと送り出す。



 「へッ…玩具にしちゃお高くできてそうだ♪ミーと遊ぼうか」

人形が構えをとる。

「へへへ♪そう来なくっちゃな」







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