第3話 セカイの真理
「よく、ココが判ったね」
ベッド上の少女はそう言った。
「近々退院なんだって。もう引きつけは治まったのか」
「ああ。お陰様で、まともに食事ができるようになったよ。病院での食事は健康の為に薄味になってるってあれ本当だね。慣れるのに少し苦労したよ」と苦笑いを浮かべる。
「おっと。そんな事はどうでも良かったね。ボクに聞きたいことがあったんだろう。
いくらでも聞いてくれよ。もう捨て駒なんだから」
「神楽…」
「同情はいい。ボクはジェネシス様に見放されたんだ」自身で言い募るその様がただ、ただ哀しい。どう答えて良いかわからず思案していると、
かけ布団を握りしめた神楽の手の甲がポツポツと涙を受けていることに気づいた。
「ジェネシスは…最強の戦士を育て…あげようとしていた。ボク達はアイツによって
各国から選ば…た代表選手な…だ」
嗚咽混じりの声で話す。
「この闘いにはどんな目的があるんだ!?」
「まったく何も知らないで大会に参加していたのか」驚いた顔を向ける。心なしかその一言で落ち着かせる効果もあったようだ。
「今は女性が強い世界なんだ。昔は男性が強かったらしい。運動神経・知力・武器の取り扱いなど。その者達は今ではオールド世代と呼ばれその多くはもう年嵩だ。ボク達が唯一勝てない男性と言った方が分かり良いな」
「まさか…」
「そう…そのまさかだ。代表選手達の育成は軍事産業、ひいては世界のバランスを大きく定めることとなる。ボク達は言うなれば軍事学校の一クラス内で優劣を競っているワケだ。トップ選手らはいずれ各国のステータスの強弱でバランスよく振り分けがなされる。育成にあたっては選手にはトレーナーが付く定まりとなっていて、トレーナーはオールド世代(男性)の原則がある。ボク達が唯一勝てない師でないといけないからね」
「そうか…そういう事か。ん?ちょっと待てよ。だったとしたら何故ガン・トレットのトレーナーにウチの弟がついていたんだ」
「何ッ!?そんなバカな。いや、でも性能は確かに女性に劣らず良い線を測定値で示していたが」
「それだけじゃない。オールド世代に勝てない理があるとしたら…師匠を殺したのは神楽…お前じゃないのか」
「いや、それは…実際ボクが殺したようなもんだ…よ」奥歯にモノが詰まったように言い淀む。
「何を隠してる?ハッキリ教えてくれ」
神楽の両肩をゆさぶり、先を急く。
「オールド世代はボクでも勝てない相手だからね。ジェネシスの言うとおりに、君の弟に術をかけて…その…」
声もない。小鈴が、手にかけた…
考えている事が伝わったのか
「いや…君の師匠は自害したんだ。小鈴は
善戦はしていたものの力の差はあった。
ただ、あのままだと元斉も体力の消耗が激しい上に弟子の弟への配慮、それと長期戦へともつれ込めば…麗煌。師はきっと君の事を思って」とウチから窓へと視線を反らせた。
身体から全身の力が抜けてゆく。
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