中間役

竹島 登

短編 完結作

僕は中間役。

いつもそうだ。面倒くさい揉め事も、小さな相談も全て受けている。

でも、相談を受けていて正直言うといい事の方が多いから中間役という役目を担っている。

中間役は、2人以上の揉め事等をどちらの意見も否定せずに、どちらも間違っていない。という相手の意志を尊重し、解決策を模索する事だ。

僕は中間役を担う事で友人やクラスメイト、身の回りの人からの信頼を経て来た。それだけじゃない、人から嫌われる事も少なく会話の中で人の感情を読み取ったりする能力も培われてきた。

だが、僕には周りの皆に秘密にしている事がある。

中間役の人は皆経験があると思うが、相談事に多く乗り解決させる事で相手から信頼が得られ周りの人が知らないような情報が沢山僕の耳に入ってくることだ。

僕が中間役になる理由はその情報を知る事にある。だが、その理由を知る人はいない。

僕が言わないから。とかそういう事ではないのだ。そもそもそんな理由だと思われないのだ。

中には、僕が中間役になってる事を疑問に思ってる人もいて、そういう理由だったりする?って聞いてきた人も実際にいるのだ。

それはそうだ。情報を集める為とは言えども、会話しながらサラッと聞き出したりしていれば疑われても無理はない。

もしもバレると誰も情報を流してくれない事以上に僕の学校での立場が大変なことになるのは目に見えていた。

だから僕は、高校に入ってからルールを決めた。そう、気づかれない為のルールだ。

1つ目は、おちゃらけたお馬鹿なキャラでいること。

2つ目は、情報は必ず自分の中に留めておくことだ。

それを守ることによって、高校生活は1度もクラスメイトが勘づく事もなかった。

情報と言うのは、本人からのカミングアウトよりも本人が知っている他者の情報を抜き取る方が簡単だ。僕はよく、信頼出来る相手と話をして第三者の知りたい情報をサラッと会話に入れる。相手の性格を読み取り、その情報を確信に変える。予めの予測が必要だが、予測をしていなくても相手の性格をよく知っていれば簡単な事なのだ。

そうやって、情報を抜き取ってきた。

今頃になってだが、なぜ情報を抜き取るのかを知りたいと思う。

僕は相談を受けていた。最初は友人の為に話を聞いて、力になってあげたいって強く思って中間役というものを担った。

僕は友人の事を信用していた。言っている事は全てを信じた。だが一方の友人は彼とは全く別の事を話したのだ。

僕はどっちを信じていいのか分からなくなった。どちらも仲の良い友人。どちらも信じたい。

そこで僕は第三者からの話を聞くことにした。それは驚くべき事実だった。2人共嘘をついていて、自分は悪くないと自分を美化し真実を教えてくれなかったのだ。

僕は正直、友人に呆れた。親身に相談に乗っていい事は無いと。だから友人の言葉を聞く前に事実を自分で知っておく為に情報を先に手に入れるのだ。

それからというもの、僕は友人の言葉を答え合わせするようになった。言っている事は正なのか否なのか。

僕の楽しみは友人がどのように僕に話すのか、どのように自分の事を伝えるのか。

そして、僕はいつも考える。お前は親身に話を聞いて相談に乗る友人にどれだけ本当の事を言ってくれるのか。そして、どれだけ自分の事を正当化し、僕に慰めてもらったり、意見を求めたりするのか。

僕は中間役。いつも友人である君達の味方である。


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中間役 竹島 登 @takenoboru

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