第43話 激動の嵐
『やった! やりましたよセンパイ!』
ドラゴンが倒れた姿を見て、イスタが歓喜の声を上げて人間の姿に戻る。他の神器ーズも彼女に続いた。
「うむ、よくやったのじゃ! 活躍ができなかったのはちょっと惜しいが……まあ、わらわなら後でいくらでも活躍できるからの」
「これで私の口上がカッコいいって認めてくれるっスよね! よね!」
「「「「興味ないわ」」」」
「なんでえええええええええええ!? さっきと言ってることが違うじゃないっスか!!」
「いや、カッコ悪い人の口上はカッコ悪いって言ったけど、逆は言ってないし……」
「それは
イスタにガミガミと罵倒されていると、誰かの足音が聞こえてきた。
「まさか……!?」
さっと階段の方を見ると、僕の予想通り、そこには大剣を手に持ち歩く、アルベールの姿があった。
その表情は、言わずもがな怒りに満ち満ちており、今にも斬りかかってきそうだ。
「お前……よくも俺のことを閉じ込めてくれたな?」
「えっ、あの壁から脱出したの!?」
ミリアがスキルで作り出した壁は、刑務所みたいな厚さをしていて、とても常人に破れるようなものではなかった。しかも、彼は素手だったはず!
「当たり前だろ。あの程度の壁で俺を縛れると思ったら大間違いだ!!」
激しく激高し、声を荒げるアルベール。さっきから大剣のレイを握る手が怒りでプルプルと揺れていて怖い。
とにかくアルベールは馬鹿力で、今すごく怒っている! そんな彼が次にとる行動といえば……。
「神器はどこだ! 俺によこせ!」
「神器はあたしっス!」
「馬鹿にしてんのか!!」
「してないっスよ! あなたこそあたしのことを馬鹿にしてるっス!」
アルベールは剣を持つ力をグッと強めた。イスタのことを説明しても、わかってもらえないだろう。むしろ説明している間に斬られてしまうかもしれない。
「みんな! 戦闘準備!」
神器ーズを人間の姿から装備の姿に戻して、警戒しておく。その様子を見て、アルベールはぎろりと僕を睨んだ。
「さっきから人間が装備品に変わったり、自分は神器だって言うやつがいたり……なんなんだお前は?」
「これは僕のスキルの力なんだ。信じてほしい!」
「だから信じられるかって言ってるんだ! 嘘をつくな!」
アルベールの怒りは
大剣が床にぶつかった瞬間、大きな音をたてて大穴が空く。
やはり戦闘は避けられなかったか! レイは既に興奮して止まりそうにない!
『ルカさん、反撃しましょうよ! この人やばいですって!』
「わかった! でもリーシャは使わない!」
僕は間合いを一歩詰めて、拳でアルベールの顔面を殴りつける。
「グハッ!」
衝撃でアルベールは地面に転がった。僕の拳に、人間の骨と肉の感触が強く残る。
「なぜ剣を使わねえ……! 馬鹿にしてるのか!」
しっかり顔面に入ったはずなのに、アルベールはまた起き上がって走ってくる。
大剣による攻撃を防ぎながら、アルベールの顔面や腹部を殴打する。しかし、彼は何度倒れても立ち上がってくるのだ。
『この人、痛覚がないんですかね?』
『痛覚がない人間……いや、ゾンビかしら? アンデッドなら何度倒れても復活することができる……興味あるわ』
『いや、ただのアホじゃろ』
アルベールは倒れても、倒れても、何度も立ち向かってくる。顔は殴られすぎてボコボコで、内臓にもダメージがあるかもしれない。今にも倒れてしまいそうなのに、なかなか止まってくれない。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ……まだだ、まだ戦える……!」
「もうやめようよ! アルベール、もう限界だろ?」
「まだ限界じゃない! 俺はお前に勝つまで立つ!」
フラフラと千鳥足になりながらも、僕の方へ向かってくる。僕は彼の姿を見て何も言えなくなり、ただその場に立ち尽くした。
彼は僕の前までやってくると、今にもちぎれてしまいそうなほどだらっとした腕で大剣を振るい、僕に振り下ろしてきた。
しかし、僕の体はレティが守ってくれているので、ダメージは入らない。カン、と金属音がなって、弾かれてしまう。
攻撃は通じないのに、アルベールはまだあきらめない。何度も何度も剣を振り回して
攻撃してくる。
なんなんだ、この異常としか言えない神器に対する
「おい、どうした!? もう終わりか!? 俺はまだ動けるぞ!!」
「そんなこと言ったって……君ははもうボロボロじゃないか!」
「知ったことじゃねえんだよ! 俺はお前に勝つまで立ち向かうんだ!!」
そう叫び、また剣を振り回してくる。
『やっぱりやばいですよこの人! ブレーキがないです!』
『何がここまでこの男を突き動かすのかしらね。逆に興味あるわ』
おそらく、アルベールはこのまま死ぬまで動きを止めないだろう。かといって、止めるためにリーシャを使ったり、全力でボコボコにするのは抵抗がある……。
『ルカ様。失礼だと思いますが、お願いがあります』
その時、大人の女性の声がした。アルベールが持っている剣、レイが話しかけてきたのだ。
『アルベール様を、リーシャ様を使って倒してはくれませんでしょうか?』
「ええっ、そんなことしたら……」
『大丈夫です、体は頑丈ですから……それに、本気でぶつからないと、アルベール様には伝わらないかと』
そうか、手加減をしてもいいけど、そうするとアルベールにも失礼ってことか。
レイの言う通り、こうして全力でぶつかってくる彼に対して、拳で対処しても解決にならない。
「さっきから、何をブツブツと……」
「アルベール、耐えてくれ!」
僕はリーシャを掴み、横一閃。光の斬撃を彼に向かって飛ばした。
「ガハァ!?」
斬撃を正面から受けたアルベールは、声を上げて後方へ転がり、そのまま倒れて動かなくなってしまった。
「……死んで、ないよね?」
『ええ、気を失っているようですわ。アルベール様を止めてくださって、ありがとうございます』
レイの言葉を聞いて、ひとまずほっとした。
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