第37話 赤髪の大剣使い
玄関から僕たちを睨みつけているのは、僕と同じくらいの年齢に見える、赤髪の男性だ。黒い
「やれやれ……説明するのが
カシクマが部屋の方へ引き返すと、さっきまで外につながっていた扉の向こう側が、ただの部屋へと変化した。
「あ、あれ!? 城が消えた!?」
「ボクの能力だクマ。いちいち騒ぐなクマ」
僕は黙って扉を閉じ、カシクマの後をついていく。
「さ、お前の名前を教えるクマ。悪いようにはしな――」
カシクマが玄関の少年に向かって言ったその時、ジャキン! と大きな音が鳴る。
男性が剣を引き抜き、その切っ先をカシクマに向けたのだ。
「な、なにするクマ!?」
「お前か、この空間の主は?」
「そ、そうクマよ。なんで剣をボクに向けてるクマ!?」
「いきなりこんなところに迷いこまされて、警戒しない方がおかしいだろ。質問の
まるで
「おいルカ・ルミエール! 助けろクマ!」
「お、落ち着いて! いきなり剣なんか振り回したら危ない!」
「お前もこのぬいぐるみの仲間か!?」
近づいた瞬間、今度は僕の方に男性が剣を向けてきた。大きい剣だから圧迫感がすごい。
「違うよ! 僕もこの空間に迷い込んできたから、君と同じなんだ。だから落ち着いて!」
「仲間じゃないんだったら黙って見てろ!! 俺はこのクマを叩き斬る!!」
「ヒッ!! どうやらとんでもなく
焦るカシクマ、怒る男性。両者が相対するなか、緊迫した空気が流れる。
「ちょっとあなた! 待ちなさい!」
その時、なぜかリーシャがしゃしゃり出てくる!?
「なんだお前は。お前も敵か!」
「違いますよ! なんなんですかさっきから敵とか味方とか! ここは私たちの家になるんですから、暴れないでくださいよ!!」
「ならねえクマ!!! ここはボクの家クマ!!」
男性は方向を変え、リーシャのことを睨みつける。彼女も負けじと怖い顔で
「いきなりこんなところに来て、敵も味方もあるか! お前も俺が叩き斬ってやろうか!?」
「嫌です! 叩き斬らないでもらいたいですね! それよりうちのルカさんを見てくださいよ! あなたと違って、この空間に来た時もそんな風にビビって暴れず、
「なに、そこの男が……?」
男性にぎろりと睨まれる。こわっ。目つきが鋭くて迫力に押しつぶされそうだ。
「そもそも、私たちはあなたのせいで試練が後回しになっているんですよ! 時間返してください!! 5分かける人数分!!」
「試練だと?」
「そうです! 神器が手に入る試練です!」
「神器が手に入るだと!?」
神器という単語に、男が反応した。
「それはどこにある!? 俺にも扱えるのか!?」
「この空間に入ってきたってことは、その資格はあるクマが……ボクの話を聞かないと、試練は受けられないクマ」
カシクマが説明すると、男はチッと舌打ちをし、部屋のソファに座り込んだ。
「……気が変わった。話だけでも聞いてやる。とっとと説明しろ」
「めちゃくちゃなやつだクマ……」
ようやく剣で脅されることもなくなったので、カシクマはほっと一息。疲れたような様子で、床から椅子へ、椅子からテーブルへと飛び乗った。
「それじゃ、説明する前に……お前の名前を教えるクマ」
「俺はアルベール。アルベール・ロマーノだ」
「わかったクマ。じゃ、説明を始めるクマ」
そのあとにカシクマがした説明は、僕に対してされたものと大差なかった。
意外なことに、さっきまで大暴れしていたアルベールは、説明を途中で止めることなく、真剣に聞いていた。どういう風の吹き回しなんだろう?
「……というわけクマ。質問はあるクマか?」
「つまり、ここは現実の世界と
「そういうことクマね。でも、ここにいるのは嫌そうだし、試練の参加は自由だから、帰らせてやるクマ」
「いや、その必要はない。俺は試練を受ける」
さっきまでカシクマや僕たちのことを警戒していた姿勢から一変、アルベールは試練を受ける気になったようだ。
「俺は力が欲しいんだ。そのためには手段を選ぶつもりはない」
「なーんか訳ありみたいだけど……わかったクマ。参加を認めるクマ」
「ええっ!? じゃあルカさんの試練はどうなるんですかにゃ!?」
慌ててメイカが口を挟む。
「今回は特別に、二人でよーいドンで城を攻略してもらうクマ。ま、ぶっちゃけ資質があって力が強いやつにさえ神器が渡れば、ボクはどっちでもいいクマよ」
「そんなー! ルカさん、負けないでくださいにゃ!」
ライバル出現ということらしい。僕としては、自分より適格な人に神器が回ればそれでいいけど……さっきの行動を見ていたら、少し不安だ。それに、できれば神器ーズに仲間を増やしてあげたい。
よーし、負けないぞ!
「さっさと試練とやらを開始しろ」
「焦るなクマ。準備ができているなら、すぐ始めるクマよ」
カシクマはさっきと同じように机から床に飛び降りて、部屋の奥の扉へと歩き出す。
扉の先は、城の景色から普通の部屋に戻ってたはずだよね……? そう思いながらドアノブに手をかけ、おそるおそる開けてみると。
扉の先は外になっていて、目の前には城が立ちはだかっていた。
「……どうなってるんだろうね。これ」
「ごちゃごちゃ言ってるんじゃないクマ。ま、試練が終わってもその減らず口が叩けたら大したものクマね!」
僕とアルベールは扉を潜り抜け、外の世界に足を踏み出した。
「ルカさん! メイカは邪魔になりそうなので、ここで待ってますにゃ! 応援してますにゃ!」
「うん! 頑張ってくるよ!」
よし、とにかく僕は頑張って試練を達成しなくては。
「じゃ、頑張るクマー」
扉が向こう側から閉じられて、外の世界にいるのは神器ーズを装備した僕と、アルベールだけである。
「よ、よろしく……」
なんだか気まずかったので、一応あいさつをしておく。アルベールは僕のことをぎろりと睨みつけると。
「……食らえ!!」
いきなり剣を抜き、僕に攻撃をしてきた!?
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