第36話 賢者、唸る!
「え? ちょっと待つクマ。お前、神器を持ってるクマか?」
カシクマは怪しげな雰囲気から一転、急にきょとんとした様子で喋り出す。
「しょ、証拠を見せろクマ! 生で見ないと信用できないクマ。お前が持っているのは『聖剣エルリーシャ』クマ? それとも、『幻鎧シュレティング』? もしかたら、『朱槌ヴァーミリア』かもしれないクマねえ」
「はい。その全部だよ」
僕は神器ーズの三人を差し出した。
「馬鹿にしてるクマ?」
「してないよ。僕のスキルで神器は人間になるんだ」
神器ーズの三人は一斉に武器の姿に切り替わる。白く輝く聖剣エルリーシャ。変幻自在の幻鎧シュレティング。朱色に染まった朱槌ヴァーミリア。三人とも
三人が姿を変えたのを見て、カシクマはボタンの目を丸くした。
「こ、これは……!? これがお前のスキル、クマか!?」
初めて見るから衝撃なんだろう。僕も最初にリーシャが人間になった時は驚いたし、自然な反応だ。
「ちょ、ちょっと待つクマ!? そもそもお前、なんで神器を三本も持ってるクマ!?」
「なんでって……拾ったからだよ」
「それがおかしいクマ!! 神器を人間にしたり三本も持ってたり、どういうことクマか!?」
カシクマがうるさいので、僕はリーシャに出会ったところから、これまでの話を説明することにした。
カシクマは時々あいづちを打ちながら、僕の話を聞いた。
「……で、この空間にやってきた、と」
「うん。納得した?」
「するわけねえクマ!! そんな上手い話があってたまるかクマ!!」
説明したのに、何故かキレられる。僕、何か悪いことしただろうか。
「ルカさんは嘘なんかついてないですよ! ミラクルが積み重なって、ここまで来たんです!」
「……ああ、わかってるクマ。ちょっと動揺しただけクマ」
カシクマは少し
「いや、考えてみれば当たり前クマね。神器を持つ人間は、その神器と『
「ルカさん! 私たち、縁で結ばれてるらしいですよ!」
「リーシャお主、話聞いてたのか? ルカの場合はスキルでわらわたちを人間にして、縁を作り出しているだけなのじゃ」
「でも、ルカと私たちが縁でつながれているという気はするわね。そうでなければこんな興味ある展開にはなっていないはずよ」
「いちゃつくんじゃねえクマアアアアアアアアアアアア!!!」
カシクマは机の上から
「……もういいクマ。ルカ・ルミエール。お前が神器の所有者なのは認めるクマ」
なんかよくわからないけど、認めてもらえるらしい。やったー?
「で? 改めて聞くけど、カシクマの目的って何なの?」
「ボクの目的は、神器を持つ資格を持つ人間に試練を与えることクマ」
「試練? なんでカシクマがそんなことするの?」
「鈍いクマねえ。さっき言ったように、ボクは勇者パーティの賢者の子孫。神器を管理するのは、賢者の役割クマ」
なるほど、カシクマの仕事は神器の管理なんだ。つまり、僕たちの味方……ということになるのかな。いや、でも試練とか言ってるしな……?
「神器を三本も持っているなら、もう試練の必要もないような気がするクマが……一応やることにするクマ」
「そもそも、その試練っていうのは何のためにするのさ?」
「神器を手に入れることができても、弱い人間や悪しき人間にそれが回ったら、神器の力が正しく発揮できないどころか、害になりうるクマ。だから、それを
力の使い方を間違えてはいけない、というのはエルドレインが言っていたことだ。
「……ついてくるクマ。試練を始めるクマ」
カシクマはぴょこっとジャンプで机から降り、部屋の奥の扉の前まで行くと、立ち止まった。
「ここを開けるクマ」
僕は彼の後についていき、言われた通りにドアを引いて開ける。
「えっ!?」
扉のその先は外につながっていた。一見すると、外とつながっている扉を開けただけのようだが――違う。外は森だったはずなのに、僕の目の前には巨大な城があった。
「城!?」
「この空間はボクが作り出したものだクマ。だから扉の先が別世界になっていてもなんらおかしくないクマ」
言っている意味はわからないが……目の前の城は本物だ。高さは200メートルを超えていて、白いレンガ造り。とんでもない圧迫感で立ちはだかっている。
「この城の最上階に、神器の『嵐弓ツイスタリア』があるクマ。それを回収するのが、試練のクリア条件クマ」
「えっ、神器あるの!?」
「あるクマ。実力がある人間に神器が渡るのを目的にした試練クマ、手に入れることができるなら文句はないクマ」
この試練をクリアしたら、神器が手に入るのか……。なんだかモチベーションが湧いてきたぞ!
「ま、それもこれも、クリア出来たらの話クマ。さ、さっさと行くクマ」
「わかった! 行くよ、みんな!」
「ちょっと待て!!!」
そのとき、僕たちの背後から怒鳴り声がした。
「クマ……? どうやらお前たちのほかに、迷い込んできたやつがいるみたいクマね」
声がした方に振り返ると、赤髪の青年が家の玄関の扉を開けて、こっちを睨みつけていた。
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